思弁逃避行 20.不二家社員はカントリーマアムを温めるか?

 夏頃の話だ。阿呆の同居人が期間限定フレーバーのカントリーマアムを買ってきた。甘夏チーズケーキ味だ。普通のを買ってこいよ普通のを。こいつめ。

 私は期間限定フレーバーの商品を購入するのが苦手だ。そのため期間限定でのパッケージ変化にあまり目を凝らすことがない。しかしこの甘夏チーズケーキ味には見逃せないパッケージ変更があった。
 個包装の「カントリーマアム」の文字の頭に「冷やし」とあるのだ。

 カントリーマアムはパッケージの裏に「温めても美味しい!」と書いてあるのは皆も知っているだろう。実際に温めて食べている人は見たこともないが、そう書く程ということは不二家の社員らがしっかりと確認済みなのだろう。もっともその不二家社員らがプライベートでもカントリーマアムを温めて食べているかは定かではないが。
 そんな中、冷やして食べても美味しいと推奨してくる味は初めてみた。おそらく「ぜひ冷やして食べてね!」という願いを込めてパッケージに「『冷やし』カントリーマアム」と表記させたのだろう。
 しかし、このこの表記のせいで私は「冷やすかどうかはこちらの采配次第ではないか」とまた思弁の渦にのまれてしまった。

 例えば、「あつあつコロッケ」という商品があったとしよう。あつあつなコロッケは良い。なので私はきっとそのあつあつコロッケを買ってしまうだろう。しかし手にとってみれば、そのコロッケは冷めていて衣にはもう凛々しさは無い。どういうことかとパッケージを見てみればこうあるわけだ。

 「あつあつにすると美味しく頂けます。ぜひあつあつにして食べてね!」

 ふざけるな。
 あつあつコロッケとあるならあつあつで出してくれよ。こっちでやらないといけないのに「あつあつ」を最初から背負っているのはどうなんだよ。そうで無いのなら「あつあつ」と看板には書かないでくれ。
 つまりこのカントリーマアムは『冷やし』カントリーマアム」ではなく『冷やしても美味しい!』カントリーマアム」であるべきだったのでは無いだろうか。まだ冷やしカントリーマアムでないのに冷やしカントリーマアムを名乗ってはいけない。本当に冷やして食べていただきたい!という気持ちでマアムを送り出しているのならば、「『冷やし』カントリーマアム『にしてやってくれ』」と書いてやるべきだろう。いや、そんな訴えかけてくるパッケージ嫌すぎるか。

 そんなことを考えていると、同居人がその甘夏チーズケーキのカントリーマアムを常温のまま頬張った。

 「ココア味が一番うまいわ」

 私はこれから食うのにそんなこと言うなよ。
 せめてもの抵抗として私はこのカントリーマアムを冷蔵庫にしまった。

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