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CBDVの可能性を探る:CBDと何が違うのか?【その2:CBDVとCBDの違い】

流れ

気になるところだけでもかいつまんで読んでいただきたく、以下に流れをまとめました!!
その1では、CBDVについて調べたいと考えるに至った背景や、CBDVの定義、歴史についてまとめています。
その2では、名前が似ているCBDとCBDVの違いをまとめています。かなり複雑な内容となってくるので、簡単な図を用いて説明いたします。
その3では、ASDについての基礎的な知識をまとめ、CBDVとASDに関する論文を紹介いたします。
その4では、CBDVがアメリカでどのように扱われているかを調査し、今後の日本でどのように扱うべきかを考察いたします。
※参考文献はその4にまとめて記載しています。


3.CBDVとCBDの違い

さて、それではCBDVがバリンカンナビノイドと呼ばれるカンナビノイドの一種であることが分かりましたが、CBDとどのように違うのでしょうか?
まずは、それぞれの構造式を見ていきましょう。

初見の方でもCBDとCBDVの構造式が非常に似ていることに気づくかと思います。
類似した分子や化合物は類似した性質を持つという分子類似性(similar property principle)という概念があり、CBDとCBDVは類似した性質を持つということが示唆されます。
しかし、全く一緒というわけではもちろんなく、構造式をよく見るとあることに気づきます。

記事制作者自身がCBDとCBDVの構造式を見比べた際に、端っこに付いているジグザグの数が違うということに気づきました。このジグザグこそが、「2.CBDVとは. 2-(1) 定義」で挙げたアルキル側鎖の炭素数を表しています。このジグザグ(側鎖の炭素数)が3つのカンナビノイドをバリンカンナビノイドと呼ぶということが分かります。その他のバリンカンナビノイドである「THCVやCBGV」を「THCやCBG」と見比べると、同様に側鎖の炭素数が違うことが分かります。

CBDとCBDVは構造が似ていることから類似した性質を持つと考えられますが、側鎖の炭素数が違うことで効果が異なることが予想されます。それでは、実際にどのような違いがあるのでしょうか?
結論としては、「研究はされているが、十分な結果を得られていない」ということです。CBDやTHCといったカンナビノイドですら解明されていないことが多い中、CBDVはまだまだ研究が進んでいません。なので、現時点では「CBDVとCBDはここが違う」と言うことは難しいように感じます。本記事では、これまでのCBDVに関する研究結果をいくつか挙げ、CBDと違う可能性がある点を紹介します。

・CB1受容体やCB2受容体との親和性が低い

2014年に行われた研究[3]では、CBDVはCB1受容体とCB2受容体との親和性が低いという結果が出ました。この研究は、初めてCBDVと各受容体との親和性を調査した研究とのことです。各受容体への親和性が低いと、疾患に対する効果が低くなる可能性がありますが、高濃度で使用することで現れる副作用も抑えられる可能性があります。
当研究では、親和性の尺度であるKi値も報告されています。

値が小さいほど親和性が高いことから、CBDVのCB1受容体とCB2受容体の親和性は低いことが分かります。
一見、CB1、CB2受容体への親和性は高い方が良いように感じますが、たとえば脳に存在するCB1受容体への影響が少ないことで精神作用がより低いのであれば、とらえ方次第では優位性のある点だと考えられます。

・TRPチャネルへの影響が大きい

2011年に行われた研究[5]では、CBDVはCBDなどのカンナビノイドに比べて、TRPチャネルへの影響が大きいという結果が出ました。TRPチャネルとは、身体内の細胞や神経細胞に存在し、外部からの信号(例えば熱や酸など)を受け取って細胞内の反応を起こします。これにより、私たちの身体は環境からの情報を認識し、それに対する適切な反応をすることができます。
(TRPチャネルの詳細:理化学研究所(2013) 1つの受容体がさまざまな刺激に応答できる仕組みの一端を解明 https://www.riken.jp/press/2013/20130423_1/)

CBDVは、TRPチャネルの1つであるTRPV1チャネルにアンタゴニスト(受容体の活性化を阻害する)として作用することが示されています。これは、CBDVがTRPV1チャネルを抑制することで、炎症性疼痛や熱感受性の調節などの生理的プロセスを制御することができることを意味しています。
そして、TRPV1チャネルは、カプサイシンや温度などの外部刺激によって活性化されるチャネルであり、これらの刺激によって疼痛や熱感受性を感じることができます。したがって、CBDVがTRPV1チャネルのアンタゴニストとして作用することで、炎症性疼痛や熱感受性の緩和に役立つ可能性があります。

TRPチャネルへの影響が大きいと、治療において多くのメリットを得られる可能性があります。例えば、TRPチャネルは前述した疼痛の感知の他にも、温度調節、炎症などに関与しており、これらのチャネルがCBDVによって抑制されることが、疼痛の改善と炎症の減少につながる可能性があります。

・ DAGLαを阻害する

2010年に行われた研究[4]では、CBDVとすべての酸性カンナビノイド(CBDAやCBGA)がDAGLαという体内の脂質を管理する役割を担う分子を阻害するという結果が出ました。
DAGLαはエンドカンナビノイドである2-AGの生成酵素であることが重要なポイントです。そのため、CBDVがDAGLαを阻害することによって、2-AGの量が減少することが予想されます。2-AGは神経伝達物質として機能することが知られており、適切なバランスで存在することが重要です。2-AGの量が過剰になることも問題ですが、量が不足することも問題となります。例えば、炎症や神経疾患の場合、2-AGの量が増加することで症状が悪化することがあるため、2-AGの量が減少することが有益となる可能性があります。[6] [7]
DAGLαの阻害によって得られるメリットはまだ明らかではありませんが、過食性のマウスの食事量を抑制したという結果があります。

CBDVとCBDは似ている化学構造であることから、類似した性質を持っています。十分な結果は得られていないものの、いくつかの研究からCBDV特有の良さがあることが分かりました。

その3へ続く


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