地中海沿岸にある街 "バレンシアと張り子人形"
その当時、わたしはスペイン東部、地中海に面したバレンシア(Valencia)の中心街周辺に住んでいた。すでに四十半ばを過ぎていたが、スペイン学生ビザ(NIE)にて語学学校でスペイン語を学び、平凡な日々を大切にしつつ暮らしていた 。
一度、日本から出て海外に住もうとスペイン行きを決意した後、リアルに自分の目で見る、生活する場所として選んだのがバレンシアだった。
視野を広げておきたかったおじさん。セニョールといえば聞こえはいい…
気候は温暖、ビーチもあり、物価もそれほど高くはない。田舎でなく、大都会でもない、わたしにとっては、とても過ごしやすい街だった。
ちなみに、バレンシアは"パエリア発祥の地"である。本場老舗レストランで食べる兎肉と鶏肉の"パエリア バレンシアーナ(paella valenciana)"は、肉の旨味を吸い込んだお米、インゲン豆、鍋の底に付いたソカラ(socarrat)と呼ばれるお焦げの香ばしさが絶妙… また、ワインが進んでしまうヤツである。(わたしだけ?)
そんな、地中海に沿った街"バレンシアの張り子人形"と"2つの言語"のお話。
(すべての画像は、過去にわたしが撮影したものです。)
スペイン語と"4つの州公用語"
後にややこしくなるので先にサクッと説明しておこう。
スペインで公用語として使われるスペイン語(castellano カステリャーノ)の他に、カタルーニャ語、バスク語、ガリシア語、バレンシア語の4つの州公用語がある。
しかし、言語学的にはバレンシア語は、カタルーニャ語の西部地域変種、所謂、方言であるという説。フランス語にもちょっと似てるとか… 知らんけど。
2つの言語があるバレンシア、公共の場ではスペイン語が使われる。コミュニティーや個人差はあるが、わたしの記憶では、バレンシア語を話す人は特にお年寄りが多い印象がある。わたしの友人は両親や祖父母と話す時に限って、バレンシア語で会話していた。
公共の建物の名称、標識などもスペイン語とバレンシア語が混在しているところも多い。
当時スペイン語だけで"あっぷあっぷしていた" わたしは、バレンシア語は見て見ぬフリをしていた… が、この後、そのバレンシア語とチビっと戦う事になる。
数百の張り子人形を燃やし、春を迎える… クレイジーだろ。
毎年3月、サン・ホセ(San José)の祝日を祝う伝統ある祭りがバレンシアにある。
日本ではサン・ホセの火祭りと紹介される"ラス・ファジャス (Las Fallas)" だ。この年、2016年にユネスコの無形文化遺産に登録されている。
3月19日最終日の夜、クレマ(La Cremà)にて約750を超える大、小、巨大な張り子人形ファジャ(falla)を燃やし尽くし、バレンシアは春を迎えるのである… (友人談)
だが、事前に行う人気投票で1位(最優秀賞)に選ばれたニノット(ninot 人形)は焼かれず、火祭り博物館(Museo Fallero)に永久保存される。
いくつかの賞(premio)があり、選ばれると賞金も出るのである。
ニノット展 -Exposición del Ninot-
現在2023年、約750を超えるニノットが2月4日から3月15日までの期間、バレンシアの芸術科学都市内にあるフェリペ王子科学博物館(El Museu de les Ciències Príncipe Felipe)で展示されている。人気投票で、誰でも自分が気に入った子供部門と大人部門、それぞれのニノットに投票できる。
燃やさせない… ニノットを救うのだ…
3月15日には、展示している全てのニノットはそれぞれを製作した"火祭りアーティスト(artistas falleros)"たちが1年かけて製作した大きな張り子人形(ファジャ)と共に、バレンシア中のあちこちの市街地でお披露目される。
少し補足しておく、火祭りの張り子人形を単体でニノット(ninot バレンシア語)と言い、その集合体、大きなオブジェをバレンシア語でファジェ(falle)、スペイン語ではファジャ(falla)と言う。
それぞれのファジャにはテーマがあり、その時世の出来事や話題の著名人、有名人、政治風刺を含んだ表現などが折り込まれている。文化を知らねば、わからないものもある… 約750以上、ものすごくある… しかも説明、バレンシア語。
ゼロからスペインのみでの語学暦たった2年、Nivel B2 如きにわかってたまるか!!
Don't think, feel… 感じろ…俺。そう、アート鑑賞している顔をすればいい…
見ているだけで十分面白く、楽しい気持ちになるから…
(わたしの個人の話で、バレンシア語を覚えたり、話す必要はありませんのでね。)
子供部門 -Ninot infantil-
さて、この後に紹介するニノットは、現在の2023年のモノではなく、わたしが過去に撮影した"2016年のニノット"である。
友人の一人が"火祭りアーティスト"であり、この日、彼らチームの製作したニノットに投票するため、ここに来たのであった。暇だったかも…
では、火祭りアーティストたちの職人魂で製作したニノットの画像を紹介しよう。
まずは、子供部門のニノットです。
大人部門 -Ninot Adulto-
ここから大きめニノットの方へ。そして、これらも大きなファジャの一部だということをお忘れなき様。 燃やしてまうけどな…
バレンシアの人たちと美しい民族衣装 -falleros, falleras-
ざっと紹介したが、それなりに楽しんで頂けただろうか…???
ニノット展はプレイベントのようなものである。現在はどんなニノットたちかな?
ラス・ファジャスは、2月の最終日曜日にクリダ(Crida)という開会宣言から始まり、約3週間ほどの間にイベント、さまざまプログラムが行われる。
3月15日から19日が本番、ラス ファジャスモードが加速する。(騒がしくなる…)
街中に設置されるファジャや伝統的なプログラムを見るために、スペインや海外の観光客などが一気に押し寄せる。(さらに騒がしくもなる…)
またその本番の事を続いて書こうか?と思っている。今は…
ちなみに、わたしが好きな3月17日,18日の"Ofrenda" オフレンダを少し。
2日間すごい数のfalleros, fallerasの献花パレード。また写真を撮りたい。↓↓↓
最後に少し…
3月に入ると語学学校の午後クラスの授業中、市庁舎前広場で連日行う爆竹花火、マスクレタ(Mascletà)の音がよく聞こえていた。
何百発ものロケット花火を約5分間ランダムに打ち上げ続ける感じである。そばで何度も見たが、鼓膜が破れるかと思うほど、ビリビリ震える。耳の痛み、あの爆音と振動は今も忘れてはいない。
日本へ帰国後、独学から始めた手縫いによる革小物製作、クオリティに拘わる作り、ハイレベルな技術と知識のアップデートに今も時間を費やしている。
スペイン語を話さない日々… 必死に覚えた言葉や言い回しも忘れて行く…
他言語学習は筋トレのようで、鍛えれば少しずつ増えて行くが、使わなければ衰え減って行く。積み重ね、継続がとても大事である。
また、チャンスがあればスペインや違う国に行きたいと思う。
ではまた、¡Hasta luego!
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