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【翻訳メモ】INSIGHTS FOR THE JOURNEY

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■全体目次 https://note.com/enflow/n/n51b86f9d3e39 ■「ティール組織」の著者であるFrederic Laloux によるINSIGHTS… もっと読む
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【8.3】トップ・リーダーを説得すること(Convincing top leaders)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/83.html ■翻訳メモ 「まったく新しい管理システムであるティールに向かって飛躍を遂げるためには、そして、それが今までのシステムよりも生産性が上がって、かつ、利益貢献と市場拡大に向けてどのような良い面があるのか、研究結果も踏まえて、説明してもらえますか?」と、担当している企業のCEOから聞かれたらどう答えますか?私はこの種の質問に出くわすたびに、ビデオ7.1にある(CEOが邪魔しない進め方の)内容についてかいつまんで話すようにしています。ティールの管理方法云々といった世界観を持った人に、筋道をたてて説得することは、まったくもって無駄なことです。私もそれはよく分かっています。今、私が言っているのは、CEOから求められた、情報提示のことだけを指しているのではありません。その情報についての説明だけなら、きっと聞いた人からは、「それなら大丈夫」とか、「私が行こうとしている方向に新しい可能性があると思います」などと、ある程度技術的なことに終始することになるでしょう。しかし、これからやろうとしていることは、ある人の視点が、現在の世界観から、別の世界観へと成長していく過程を作ることです。そして多くのリーダーにとっては、「痛み」が待ち構えているものです。ある人にとっては、インナーチャイルドとの決別であったり、鬱やバーンアウトの症状との戦いであったりといった、それらを経験することになります。そして、そこから回復した後は、何らかの理由で、物事の見かたが変わります。彼らは、今までとは異なった視点で経営ができるようになっているのです。 私は彼らを説得しようとしたことはありません。それがうまくいくとは思えないからです。だから、説得するなどという考えは最初から持たないでください。説得しようとして、それが上手くいった話など聞いたことがありません。しかし、その代わりに、そういうリーダーに提案するのは、現在のシステムの中の「痛み」について話し合いませんか、ということです。今のシステムが彼らにあっているのかどうか、私にとっても知る必要があるからです。そして、その答えは、多くの場合、彼らにとって、うまく機能はしていません。今のシステムによって、彼らは本当に「痛み」を抱えてしまっています。そして多くの場合、彼らはその「痛み」への対処法さえ持ちあわせていないのです。それを一人で抱え込み、ひたすら耐え抜くという方法しか知りません。新しいシステムでは、機能していないことがあると、それを話せる場があります。一歩引いた客観的な観点からだけではなく、「他の人はどうか」、「きちんとシステムは機能しているのか」、「もしシステムが機能していないのなら、そのシステムの中で孤立している人はいないか」などと話し合うことができるのです。リーダーが「痛み」について話すことのできるスペースを作るとき、その瞬間は、美しいつながりの瞬間になります。おもいやりの瞬間ともいってよいでしょう。そして、これらの会話は、当初私が求められた説明の内容とは比較できないほど、はるかに意義深く、前向きで、意味のあるものになります。いずれにせよ、これらの会話が出発点になります。彼らにしてみれば、好奇心をそそられて、そして、今までとは違い、「何か」に導かれてスタートを切ることになります。そして、古い世界に対する疑問がふつふつと湧いてきて、徐々にこの新しい世界が肯定的に見えてくるようになるのです。 ただし、その行為自体は、私にとってのゴールではありません。説得して導くことを、私は目的とはしていないのです。たしかに、私は、彼らを導く方向に連れ出しはしますが、彼らとの会話は、彼らの可能性を開くためのもので、ほんの後押しにしかすぎません。だから私がこういう話をすると、多くのリーダーは、何もしてくれないのかとがっかりするかもしれないと思っています。ゆえに、私は、そのことはいつも念頭においています。 私はあなたがシニア・リーダーを納得させることができるとは思いません。そもそも、そうすべきだとも思いません。その代わりに、彼ら個人の人生について、分け入った会話ができるよう、そして彼らの組織においても、何が機能していて、何が機能していないのか、そこから出た「痛み」について話せるスペースを作ることを提案すればよいと思います。なぜ、シニア・リーダーと会話とを結び付けたかというと、現在のシステムにおけるシニア・リーダーの立場にある人は、企業の中で、非人道的な扱いを受けることが多いからです。もし、会話の場に腰を落ち着けて、そこでなんの「痛み」も感じないシニア・リーダーがいたら、そんなリーダーは「魔術師」に違いありません。あなたの持っていき方が適切なら、彼らは心から喜んでくれるはずです。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【8.2 】ティールに向かうクライアントを見つけ出すには(How to find clients willing to reinvent themselves)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/82.html ■翻訳メモ 今回はこの分野で活躍したいと思っているコーチ、コンサルタント、ファシリテーターに向けてお話したいと思います。では、まず、その人たちからよく受ける質問を共有したいと思います。彼らは皆、新しいマネジメントの形式に飛躍することを、真剣に、そして大胆に望んでいる組織をサポートしたいと考えています。そして、そのために、どうすればそういうクライアントと出会えるのか、聞いてきます。なにしろ、彼らのクライアントは伝統的形態の組織ばかりということで、彼らとしても、もうそういうクライアントは担当したくないと言うのです。もし私が彼らに共感できるとしたら、それは、彼らの欲求不満を掻き立てているティールへの「あこがれ」という部分に対してだけでしょう。いい意味で、その視線を持ち続けている限り、そこへ向かうための可能性は必ず開けてくるからです。現在、彼らがプレーしているリーグは、彼らがプレーしたいリーグではないということですが、実は、彼らの言葉のその裏側に、価値に転嫁できる考えやアイデアが潜んでいるのです。 希望するクライアントに巡り合うためには、自分なら何が提供できるか、その特定領域を極めることが重要です-それは、私の本を読んだだけではできませんよ。専門分野を持とうと思ったら、私が今から言うことをしっかりと理解しなければなりません。 まず、企業経営のすべての領域において、広く浅く知識を有する必要はありません。しかし、その分、専門分野については誰よりも詳しくなる必要があります。そのためには、自分を駆り立てる「何か」の存在に気付くことが重要です。その領域を選んだ「熱源」が何なのか知る必要があるということです。そして、それが分かるまで、人に聞いてもらったり、紙に書き出したりしていきます。ティールに興味をもったきっかけや、自分の情熱を刺激するもの、本当にやりたいこと、何が自らを奮い立たせているのかなどを、人に話したり、書き出したりしていきます。表面は威張っていても裏では不安にさいなまれている、古い組織の典型的なCEOを頭に浮かべながら、話したり、書いたり、というのもいいと思います。それによって、組織のトップに対する「おもいやり」が醸成されていくというものです。組織を支援するのに「おもいやり」など必要ないという人もいます。しかし、きっぱり、私はその意見を否定します。人類すべてでなくても、少なくとも自分の周りにいる人だけでも、仮にあらゆる困難を経たとしても、その人の人生が良くなっていくよう願うのは人として当然のことです。 ヘルスケア業界の場合、一般的には、医師と看護師との間は厳密な階層によって隔てられています。また、この業界における専門職は、自殺率が高いことでも知られています。あくまで可能性としてですが、自分の情熱などを書き出す習慣がもっと広まれば、救える命もあるのかもしれません。あるいは、教える人たちの側に、なにか大きな欠陥があるのかもしれません。もし、教える側が、書き出したり、話したりなどして、自分の情熱の湧き上がってくる場所を特定できていたら、たいへんな思いをしている人へ、身の置き場を示してあげたりできるかもしれません。あるいは、彼らの心の傷をいやしてあげることもできるかもしれません。そして、その傷に寄り添い、話を聞いてあげるなど・・・、私は、まさに、コーチ、コンサルタント、ファシリテーターは、そういう風になってもらいたいと思っているのです。きっと傷んでいる人も、そういう人となら一緒に働きたいと思ってくれるはずです。私の個人的な見解をもってしても、まさしくこれこそが、ティールを広めるための最良の方法だと思うのです。 あなたにとって何が重要かという会話は、実際にクライアントとやってみないことには何も始まりません。しかし、クライアントによっては、詳細をしゃべってしまうことにリスクを感じてしまう人もいるのです。多くのコーチ、コンサルタント、ファシリテーターにとっても同じで、やはりリスクは避けようとします。彼らも生活が懸かっている以上、毎月、月末に振り込みをしてくれるクライアントを大事にしたい気持ちはいたしかたないものです。おかしな状況を作って、そこで契約終了というのは避けようとする心情が働きます。彼らにとっての、このような痛ましい状況は、常にクライアントとの間で起こっているのです。私が「オレンジ・プラス」と呼んでいる状況がこの状況です。コーチ、コンサルタント、ファシリテーターは、基本的に、自らは望んでいないことであっても、クライアントのニーズに合わせてしまう傾向があります。しかし、クライアントが往々にして持っている、「とにかく結果さえ手に入ればなんでもいい」という考え方は、まさに、「オレンジ」のパースペクティブなのです。とは言っても、人材育成に着手し、対話を通して従業員のパフォーマンスを高めようとしたり、彼らの視座を上げようとしたりするだけ、ただの「オレンジ」にくらべて、多少はましという意味で、「オレンジ・プラス」と呼んでいます。 ここからは、実際のアドバイスです。 クライアントを獲得するためのwebサイトにはたくさんの情報を載せなければなりませんが、そういったボリュームが差別化の邪魔をしてくるため、特徴を伝えるのは本当に難しいものです。そのサイトには、エビデンスとなる事実をベースに書くのは当然ですが、それに加えて、自らの心を動かすものの存在についても書けるなら書いた方がよいでしょう。もしくは、それが簡易なものであってもいいので、2つのウェブサイトを持つという方法もあります。外部に対して複数の顔を発信するということです。この方法はいろんな可能性を広げてくれる方法でもあります。2つを同時に作るのに時間がない場合、あなたが情熱を注いでいる特定のプロジェクトの紹介など、具体的なものの掲載を優先します。クライアントがあなたを見つけるという行為を引き出すには、あなたの書いたものがなんらかの「共鳴」を引き起こす必要があるということです。 もう1つは、あなたの専門性や情熱について、常に誰かに話すことです。どこに行ってもそれについて話し、友人や同僚と会っても常に話し続けることです。いつでも話しているというシンプルすぎる事実は、あなたが本当に情熱を注いでいることの証明になります。周りからすると、突然あなたに後光がさし始めたのかとくらいに感じることでしょう。あなたに共感した彼らは、あなたの言葉を広めてくれます。誰か苦しんでいる人に会った時、彼らはあなたの言葉を使って話してくれます。あなたは彼らにとって、まさに模倣すべき人物になったというわけです。こういう風にして、実践しながら、周りの支持を集める方法があります。 そして最後の方法は、シンプルにあなたの専門領域の人たちと交流を持つことです。トレーニングに参加したり、その運営をサポートしたり、グループ交換会に参加したり、という風に、できるだけ積極的にかかわっていくのです。そのようにしていけば、一緒にプロジェクトを企画したり、ネットワークに参加したりという状況が生まれてきます―それだけでも、最初から比べれば大きな飛躍だと思いませんか?コーチやコンサルタントというのは、個人競技ではなく団体競技だと思った方がよいと思います。そこには新たな出会いが重要なのです。そしてその出会いは、あなたを支えてくれるはずです―もっとも、あなたの交流方法が正しければという条件は付きますが。そうすれば、あなたは適度な仕事量が分ってきて、どんなトレーニングが必要かも分かるようになってきます。そういう過程を経て、世界を変えるために支援すべきものが何なのか明確になってくるのです。この流れが軌道に乗ると、クライアントは向こうからやってくるようになります。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【8.1】組織に必要なサポートとは?(What support do organizations need?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/81.html ■翻訳メモ 今回から新しいセクションに入ります。このセクションでは、コーチ、コンサルタント、そしてファシリテーターといった組織の再発明の旅を共に続けてくれる人たちのことについて話します。そしてこのビデオシリーズは、このセクションが最後になって、すべてのシリーズが揃うことになります。 まず、良いコーチやコンサルタント、ファシリテーターになるには生涯を通した長期的な学習が必要です。とても多くのことを学ばなければならないからです。その道を究めるには、ありとあらゆる方法を試すための、測りきれないほど多くの時間が必要になってきます。そして、その技術は模倣によって獲得できるものでもありません。この後、4つか5つのビデオをご覧いただくことになりますが、どれも非常に具体的な課題を扱います。それらの課題は、知り合ったコーチやコンサルタントと何度も何度も話し合っているうちに出てきたものばかりです。それらは、多くの人にとっての関心事であるとともに、活用可能なものになっています。そして、さらに、それらの課題に対して、私自身の考えも付け加えていきます。これをご覧いただくと、ティールに向かう組織には、コーチやコンサルタントの存在がいかに重要であるかが分かってもらえると思います。合わせて、CEOのそばにいて、時には方向修転換を提案し、そして、それらの経験を自らの学びに変えていく、コーチやコンサルタントの実際を知っていただけるはずです。 最初の課題は、彼らのかかわりの対象となる組織が、どの領域で何を必要としているのだろうということです。まず、以前の1.15を参照してください。その回では、トップマネジメントを対象としたコーチ、コンサルタント、そしてファシリテーターの役割について話しています。彼らは、組織で働く人たちから見ると、同じ土俵にはいない人たちだというのはよく分かっていただけたと思います。そして、その視点があるがゆえに、新たな事柄を発見できるということもよくご理解いただけたのではないでしょうか。そのビデオで私が強調したことの1つに、この取り組みにかんする限り、大規模なコンサルティング会社に依頼するような本格的なコンサルティングは、まったく必要ないということがあります。しかし、コーチングにしても、ファシリテーションにしても、特定のゴールに的を絞った限定的な取り組みであってはいけないということも同時に言えるのです。組織とは、共に旅をしてくれる人たちがいて、はじめて価値を有するものになっていくものです。一緒に旅をしてくれる人というのは、CEOをサポートする人、チームをサポートする人、組織全体を何らかの形でサポートする人、という3つのレベルの人たちのことを指します。ということは、少なくとも、これらの3つのレベルのすべてで、新しい世界の意味を考える必要があるということです。サポートしてくれる外部の人間がいるからこそ組織にとってのリフレクション(内省)が成立します。CEOと協力し、トップチームと協力し、そして、組織全体と協力するというのは、リフレクションの機能にとって非常に有効なのです。それはティールに対して拒否反応を示している人に対しては気付きの手助けとなります。たとえば、特定の人がリーダーに指名された場合、あるいは、「セルフマネジメント」の導入に向けて組織の一部と協力するように言われた場合、組織の「感受性」と「反応」とが鮮明に表に出てきます。その組織で働くこと自体に疑問を感じている人や、特定の人のもとでは働きたくないと思っている人にはアラームランプが点灯するのです。そのような「感受性」や「反応」がどのように出現するかはとても重要なことです。一方を立てて、他方を無視するようなことをすれば、公正性が保たれません。なので、それはやってはいけません。そうは言っても、ずっと組織の中にいる人にとっては、その組織に違和感を覚えている人たちの声はなかなか届いてこないものです。彼らは、とりあえず、言われたままに、それを実行しようとします。「『セルフマネジメント』に向かってやってみます。きっとみんな協力してくれるはずです」といって始めるのですが、それではうまくいかないのは火を見るよりも明らかです。それゆえ、先ほどの、3つのレベルでの外部支援が必要になってくるのです。 さらにもうひとつの「気付き」があります。それは、最初の段階で、組織のメンバーに対して、これからどうなっていくのか、今後の可能性を示してあげることが大切だということです。最初に取り掛かると思いますが、あなたが関係を持つ人と交わす会話が特に重要です。あなたは、彼らの希望や不安を聞きながら関係性を築いていくと思います。それをしていれば、あなたが模索している選択肢のことも、彼らは理解してくれるはずです。できるのなら、組織においてそのような関係構築プロセスを行うのはCEOであるに越したことはありません。ただし、このリクエストが実現する例はほとんどないといってもよいでしょう。それほど、実現しにくいものなのです。しかし、それをすべてCEOのせいにしてはいけません。ティールへ向かう旅は、まったく新しい世界への旅だからです。それゆえに、掘り下げて探索し続ける必要があるのです。そのことについて、ある人はこう言いました。「組織には、皆と同じように振舞います、という人と、自分のやりたいようにやります、という人間がいるだけだ」、と。考えてみれば分かりますが、一言で「セルフマネジメント」といっても、そこにはさまざまな人が、さまざまな思いを持って存在しています。それを紐解くには、体系的な思考が必要になってきます。組織にとって必要なのは、実際にメンバーをサポートできる空間と時間です。それゆえ、あなたは、それがCEOならば言うことはないのですが、まず可能性を明示し、やろうとしていることを明確にします。当然、そこには、あなたがやろうとしていることのすべてが網羅されているべきです。いずれにしても、あなたの役割はとても重要であることに変わりありません。真実を話し、死角の方向に鏡を向け、そして、光を当てる、そんな特別な役割をあなたは担っているのです。 どうしても気になってしようがない、言っておかねばならないことがあります。それは、絶対に安全運転に固執してはならないということです。今回はじめて明言しますが、リスクはできるだけ取るようにして、そして、そのこともメンバーにはシェアしてください。組織のメンバーに変わることを求めているあるシニア・リーダーとの会話において、このことを発見しました。中には、変化を望まない人もいます。そういう人は、自身の中にある「正直さ」に向き合う準備がまだできていない人なのかもしれません。そういう人に対しては、その人が何をモチベーションにしてその組織で働いているかという質問をしてください。その質問を通して会話を深めていきます。それは必ずしも容易な道のりばかりではないと覚悟しておかなければなりません。一般にそういう対話は、質問する側も進んでやりたがらないものです。しかし、愛と思いやりをもってそれにあたるならば、想像をはるかに超えた結果に向かって、扉は開くものです。また、リスクに対して過度に神経質になっている人たちに対しても、オープンな対話によって、彼らとの間に大きな信頼を築ける可能性があります。関係性に懸念があってもそれを払しょくできる場合もあります。もし、その質問する人がシニア・リーダーだったとしたら、真実を語る声は、彼らのところまで届くことはほとんどないという従来の現実を知ることになるでしょう。それが分かるだけでも死角を1つ潰せたというものです。愛と思いやりに起因した行為は大きな信頼の獲得につながります。 今から述べるのは、組織にとってすごく重要なことですが、以前のビデオでは、そのことについて、まったく触れてきませんでした。それは、組織にとって、私のようなコーチ業を営んでいる人、つまり、たんなる相談相手は必要ないということです。使い古された言葉を使うと「共創(co-creation)」という表現がしっくりくると思うのですが、まず、それを導き出すには、一緒に旅を続けてくれるパートナーが必要だということです。そして、そのような伴侶と呼ぶにふさわしい、共に旅するパートナーが力を発揮できる形態は、未だかつて存在したことがありませんでした。それはパッケージングされたコーチングとは全く異なります。また、それは、常に中立的な立場から組織に接するファシリテーターとも違います。そして、プロジェクトを成功に導いてくれるコンサルタントの姿勢とも異なります。つまることころ、最後までその組織に寄り添って共に旅を続けられる人が必要だということです。それは、考えようによっては、組織にとってリスクになる場合もあります。そのパートナーは常に組織を試し続けることになります。時にはうまくいき、時に失敗することもあるかもしれません。その彼はメンバーと共に学んでいくことでしょう。しかし、ここで、ただ単に、「組織と共に」という表現を使うとしっくりきません。そのパートナーは組織の内側からではなく、常にその視点を組織の外において、そこから俯瞰してみる能力を試されることになるからです。 その彼、彼女はメンバーと共に旅を続けます。そして時折、ティールの知識をメンバーに注入します。実は、その行為自体がとても興味深いものなのです。というのも、そこにときどき誤解が入り込んでくるからです。この新しい世界では、これがティールの特徴なのですが、すべての答えはすでに組織中に存在しているのです。コンサルタントは答えを提供するのが仕事ですが、彼らはけっして答えを提供する側に回ることはありません。彼らは唯一の正解を持っているわけではありません、しかしいくつかの「答え」にはすでに至っているはずです。「セルフマネジメント」のパースペクティブに沿って話すと、多くの人は最初から成熟の域に達しているわけではありません。実際には、適切なタイミングで適切な知識を学ぶことで、成長していきます。そうは言っても、すべてをゼロから組み立てていく必要はありません。その時は、アドバイスプロセスを有効活用すればいいでしょう。そこで知恵を出し合うことは、独りよがりで無謀な開発を防ぐことにもつながります。一般的な組織は、経営者が独裁的な権力を持つことで争いが起こらない仕組みを作りあげようとします。ティールでは、適切なタイミングに適切な専門性を身に付けていきます。そうすると、あとは、その専門性が周知されることで、誰がもっともふさわしい人物か、自ずとシステムが見つけ出してくれるものなのです。その機能を知るためには、このビデオシリーズをしっかり見て欲しいと思うのです。 組織にとって必要なことは、インテグラルの4つの象限を使って表せるということを最後にお伝えしたいと思います。まず、その4つの象限については、ビデオ2.2を参照してください。ここではその繰り返しになりますが、もし、その4つの象限に分けられたものが、何も語りかけてこない時は、行動を止め、すべてを一時停止状態にする必要があります。私の言っていることの意味が分からなかったら、ビデオ2.2に戻ってください。もし、あなたが、真剣にメンバーの成長を支援したいのであれば、この理論に精通する必要があります。どんな人にも特定の象限を優先的に考えてしまう傾向というものがあります。あなた自身、盲点はほとんどないと思っていたとしても、優先して取り上げてしまう象限は必ず持っているものなのです。つまりその傾向そのものが盲点となります。もし、あなたの場合の優先しがちな象限が「内側の世界」だったとしたら、あらためてトップリーダーたちの間で起こっていることに働きかける必要があった際、あなたにはさらに内面に潜り込んだ会話を求めてしまう傾向があるということです。実際に、そこで必要とされるべきなのは、内面に潜った会話ではなく、外側からの視点であって、つまり、それは「優れた意思決定プロセス」がそれにあたるといった具合です。つまり、原因は、自分の思った象限とは別の象限に存在していることが往々にしてあるということです。逆に、「システムと実践」を重視してしまう傾向があるなら、今度はその内側にある「組織のカルチャー」に着目してみる必要があるかもしれません。「組織のカルチャー」について話し合ってみて、そこで発見した阻害要因を取り除けば、それがベストプラクティスとなる可能性が高いからです。それが「組織のカルチャー」に着目してみると言った理由です。そして、重要なのは、必ずしも4つの領域すべてで介入行為を起こす必要はないということです。あなたは、まず、それらに精通さえしていればよいのです。それによって、もっと精通した人物を連れてくることが可能になります。きっと精通した人物に任せた方が、「システムと実践」のみに委ねるよりも結果は早くでるでしょう。あなたのすることは、まず4象限を使って組織の状態を分析し、その後で、専門知識を持っている人物を連れてくることです。その意味では、組織にとっては、4つの領域それぞれで専門家が必要ということがいえます。少なくともあなたには、その4象限について理解ができて、どこにどのような介入が必要か見つけ出す力が必要になってきます。そして、必要に応じて、あなたを助けてくれる誰かを外から連れて来ます。あなたの組織が抜本的な変化を起こすサポートを行う人物を選んで連れてくるのですから、あなたの行動は非常に重要です。それを行っていくには、あなた本人が熟達していく以外に方法はありません。組織の成功の要因には、本当に良いコーチか、本当に良いファシリテーターが必要です。例えば、「組織のカルチャー」に熟達している人、「システム」が本当に得意な人たちなど、専門分野に秀でた人たちがいます。しかし、そういう人たちの中には、それ以外のことはまったくできないという人たちも数多く潜んでいます。そういったことで困らないためにも、少なからず、あなたは、これらのすべての領域に精通しておく必要があるのです。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【7.8】「存在目的」に対するアイデア(Some ideas: evolutionary purpose)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/78.html ■翻訳メモ 今回は、組織全体ではなく、組織の一部であるチームに対しての、そのチームの「存在目的」に耳を傾ける時の注意点を話そうと思います。組織の残りの部分は、従来のまま、つまり、計画に対する進捗管理モードを継続しているというのが前提です。ただ、そうであっても、チームの「存在目的」に耳を傾け、自身の感覚と、その「存在目的」から引き出された反応に従って、あなたが動こうとしている場合を想定しています。もしあなたのチームが、組織の中でも、比較的独立性の高い性質を有しているのなら、きっと遠くまで行ける、つまり、高いレベルでティールに近づくことができるはずです。もちろん、あなたのチームは他の部署ともかかわりを持っているはずですから、たとえば、古い体質を保持した営業本部から、売上計画や予算計画の提出を求められることがあると思います。その時は、獣に餌をやるように、それらのものを彼らにくれてやってください。それでも、ティールとあなたの結びつきは何も変わりませんから。工事などで相見積もりを取るのが組織の慣習なら、あなたもそれに従ってください。とにかく、あなたが企んで計画していることは、今までに誰もなしえたことのないようなものです。それを片時も忘れることなく、みんながすることと同じことを淡々とこなしていってください。それらの処理のために使う、無駄とも思える時間を、彼らに習って、彼らと同じように費やしてください。あなたと彼らとの違いは、あなたは外の世界に働きかける計画を持っているというところです。あなたはひたすら、「響き合うもの」を求めながら、しかも日々の業務をこなしていけばいいのです。 もし、あなたのチームが、組織の内部に深く組み込まれてしまっている場合、そして、あなた自身も、戦略的計画や中間計画、盛りつけがされた予算や指標の類、そしてKPIなどといった予測制御のパラダイムから抜け出せそうにない場合、それはあなたのチームにとってかなりハードな状況で、打破するのに相当なエネルギーが必要な状況だといえます。あなたが、古いシステムの信望者という仮の姿に身をやつし、その中でメンバーの反応を感知し続けることはとても大変だと思います。私がアドバイスできるとしたら、2つのパラダイムが完全に同時進行したパラレルワールドの住人に、あなたがなりきること以外、考えられません。その状況で、計画や予測制御の世界と完全に決別することは不可能だと思います。しかし、それでも、あなたは依然として、ティールを保持し続けているはずです。あなたは常にシステムのフィードバックを感じとろうとしているはずです。何が正しい判断なのか、自らの心の声を聞こうとしつづけているはずです。たとえ、今、あなたが見ている世界が、過去に教えられてきた世界とはまったく違ったとしても、今、あなたが何をすべきかは、感知した世界が教えてくれることでしょう。そして、そこで聞いた声は、あなたが過去に作り上げてきた何かを、超える時に力を貸してくれるはずです。ただし、計画やKPI、進捗管理といった異なった方向に進ませようとする声にでくわすこともあるかもしれません。その時は、一歩下がって、心の声に耳を澄ませてしてください。感覚を大切にして、あなたにとっての「正しさ」を感じとってください。そして、その感覚に従い、あなたが「正しい」と思うことを実行してください。誰にも何も、断りを入れる必要はありません。そして、結果が出て、誰も文句を言う人がいなくなってから、組織に承認を求めるようにしてください。 その時は、こう言います。 「組織で働く人間として、先に承認を取るべきでした。たとえ、ばかげていると感じていたとしても、きちんと計画を立てるべきでした。また、そうでなくても、もっと別のやり方もあったであろうと思います。これからは組織の慣習に敬意を払って、きちんと計画を立ててから実施したいと思います」と。 毎回、この弁明が必要かどうか、それはあなたにしか分からないことですが。 問題は、これをあなた一人で行うのか、あなたのチームの何人かのメンバーと一緒に行うのか、それともあなたのチーム全員で行うのかということです。しかし、どうやるのが一番良いのかというデータはまだ揃っていません。しかし、これだけは言えるのは、言われたことを言われたとおりにやるタイプや、物事は自己犠牲の上に成り立つと信じているタイプの人は間違いなく苦労するはずです。つまり、先にやって後で許しを求めることができない人たちということです。私は、人を選ぶという行為はできるだけしたくないタイプです。しかし、その一方で、そのような特徴を持った人は会話に加わって欲しくないというのも本音です。メンバー構成さえうまくいけば、自然な階層の中から立ち現れてくるものに、きっと出会えるはずです。メンバーの構成には、まず、会話に積極的に参加したいという人がいると思います。そして、決定の場にいたいという人もいると思います。中には、できるだけ会話に加わりたくないという人もいて、きっと、そういう人は、誰かが決めてくれるのを待っている人なのでしょう。そういう人は他人の決めたことにもコミットできるタイプです。しかし、普通、人は、他人の決めたことに、何らかの違和感を覚えるはずです。その違和感も人によって様々です。たとえば、それらの中には、組織への忠誠心といったものがあります。計画から逸脱することを非常に怖がる人もいます。また、厄介な場所に投げ込まれてしまったと、そのことに囚われてしまう人もいます。いずれの場合も、私たちは、そういった違和感を尊重する必要があります。 そういったパラレルワールドで生きているのは誰かということをあなたに問いたいと思います。そして、計画の進捗に常に囚われているのも誰か、これも合わせて問いたいと思います。最後に、「素晴らしい冒険」を願っている私の祝福が、常にあなたの行動の横に在ることを忘れないでください。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1