【8.3】トップ・リーダーを説得すること(Convincing top leaders)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/83.html

■翻訳メモ
「まったく新しい管理システムであるティールに向かって飛躍を遂げるためには、そして、それが今までのシステムよりも生産性が上がって、かつ、利益貢献と市場拡大に向けてどのような良い面があるのか、研究結果も踏まえて、説明してもらえますか?」と、担当している企業のCEOから聞かれたらどう答えますか?私はこの種の質問に出くわすたびに、ビデオ7.1にある(CEOが邪魔しない進め方の)内容についてかいつまんで話すようにしています。ティールの管理方法云々といった世界観を持った人に、筋道をたてて説得することは、まったくもって無駄なことです。私もそれはよく分かっています。今、私が言っているのは、CEOから求められた、情報提示のことだけを指しているのではありません。その情報についての説明だけなら、きっと聞いた人からは、「それなら大丈夫」とか、「私が行こうとしている方向に新しい可能性があると思います」などと、ある程度技術的なことに終始することになるでしょう。しかし、これからやろうとしていることは、ある人の視点が、現在の世界観から、別の世界観へと成長していく過程を作ることです。そして多くのリーダーにとっては、「痛み」が待ち構えているものです。ある人にとっては、インナーチャイルドとの決別であったり、鬱やバーンアウトの症状との戦いであったりといった、それらを経験することになります。そして、そこから回復した後は、何らかの理由で、物事の見かたが変わります。彼らは、今までとは異なった視点で経営ができるようになっているのです。

私は彼らを説得しようとしたことはありません。それがうまくいくとは思えないからです。だから、説得するなどという考えは最初から持たないでください。説得しようとして、それが上手くいった話など聞いたことがありません。しかし、その代わりに、そういうリーダーに提案するのは、現在のシステムの中の「痛み」について話し合いませんか、ということです。今のシステムが彼らにあっているのかどうか、私にとっても知る必要があるからです。そして、その答えは、多くの場合、彼らにとって、うまく機能はしていません。今のシステムによって、彼らは本当に「痛み」を抱えてしまっています。そして多くの場合、彼らはその「痛み」への対処法さえ持ちあわせていないのです。それを一人で抱え込み、ひたすら耐え抜くという方法しか知りません。新しいシステムでは、機能していないことがあると、それを話せる場があります。一歩引いた客観的な観点からだけではなく、「他の人はどうか」、「きちんとシステムは機能しているのか」、「もしシステムが機能していないのなら、そのシステムの中で孤立している人はいないか」などと話し合うことができるのです。リーダーが「痛み」について話すことのできるスペースを作るとき、その瞬間は、美しいつながりの瞬間になります。おもいやりの瞬間ともいってよいでしょう。そして、これらの会話は、当初私が求められた説明の内容とは比較できないほど、はるかに意義深く、前向きで、意味のあるものになります。いずれにせよ、これらの会話が出発点になります。彼らにしてみれば、好奇心をそそられて、そして、今までとは違い、「何か」に導かれてスタートを切ることになります。そして、古い世界に対する疑問がふつふつと湧いてきて、徐々にこの新しい世界が肯定的に見えてくるようになるのです。

ただし、その行為自体は、私にとってのゴールではありません。説得して導くことを、私は目的とはしていないのです。たしかに、私は、彼らを導く方向に連れ出しはしますが、彼らとの会話は、彼らの可能性を開くためのもので、ほんの後押しにしかすぎません。だから私がこういう話をすると、多くのリーダーは、何もしてくれないのかとがっかりするかもしれないと思っています。ゆえに、私は、そのことはいつも念頭においています。

私はあなたがシニア・リーダーを納得させることができるとは思いません。そもそも、そうすべきだとも思いません。その代わりに、彼ら個人の人生について、分け入った会話ができるよう、そして彼らの組織においても、何が機能していて、何が機能していないのか、そこから出た「痛み」について話せるスペースを作ることを提案すればよいと思います。なぜ、シニア・リーダーと会話とを結び付けたかというと、現在のシステムにおけるシニア・リーダーの立場にある人は、企業の中で、非人道的な扱いを受けることが多いからです。もし、会話の場に腰を落ち着けて、そこでなんの「痛み」も感じないシニア・リーダーがいたら、そんなリーダーは「魔術師」に違いありません。あなたの持っていき方が適切なら、彼らは心から喜んでくれるはずです。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。