「ウインドパーク笠取」騒音問題 真相と背景

 三重の青山高原でシーテックが有する風力発電所の一つ「ウインドパーク笠取」では、稼働して間もない頃に一部の周辺住民から騒音の苦情があった。その苦情に対し、シーテックが二重窓やエアコンの設置、電気代を負担をすることで住民側は納得し、問題は解決済。しかし、今日どこかで新たな風力発電事業計画が持ち上がるたびに、当時の話を蒸し返して反対する声が必ず上がる。

 例えば、経産省「風力部会」にある「(仮称)秋田県能代市・三種町・男鹿市沖における洋上風力発電事業 環境影響評価方法書についての意見の概要と事業者の見解」にも「貴社の運営しているウィンドパ ーク笠取(三重県)の2,000kW機から1.3~1.5km の伊賀市で2010年に、住民の睡眠障害、頭痛、目眩、しんどさ、つらさなどの健康被害を起こしており、その実態は、当時の新聞記者、TV局のディレクターなど、伊賀市の職員、県の担当職員により明らかにされ、記録も残されております」という意見が掲載されている。

 その意見にはシーテックは「ウインドパーク笠取は、三重県の県条例に基づいて環境影響評価を実施したうえで、事業を進め、2010 年頃に運転開始しました。運転開始の間もない時期に騒音に対する問い合わせがあったのは事実ですが、 調査を行い、環境基準を超過していないことを住民に説明し、最終的にはご理解をいただいています」と回答しているが、残されている記録なら「伊賀市大山田財産区管理会」の過去の議事録もある。ネット上で公開されているので、誰でも確認出来る。

 まずは「平成23年度 第4回2011年12月21日」の抜粋:

事務局 それでは上阿波区と(株)シーテックのこれまでの経過を説明させていただきます。この騒音の問題については平成22年5月に上阿波区の住民の方から被害の訴えがありました。これは平成22年6月3日の新聞記事にも取り上げられました。その時の伊賀市の6月定例会においても2名の議員の方から、その騒音問題についての一般質問がありました。伊賀市としましても問題解決のため、(株)シーテックと協議調整を重ねてきました。騒音の原因を特定し地元説明会をこれまで3回(平成22年7月29日、 12月9日、平成23年4月15日)行ってきました。音が発生するナセル部分の改良もしましたが被害は無くなりませんでした。調査の結果、騒音被害が大きいのは東南からの風の時であり、(株)シーテック側から、22時から6時の間で東南の風、風速 10m/秒以上の時には停止するという提案がなされました。平成23年7月から現在もこの条件で停止しております。しかしながら、騒音の被害は無くならない状況です。 住民の方からは、問題の風力発電施設の完全停止か撤去の要望を(株)シーテックにしましたが、(株)シーテックとしてはこの要望は受け入れられないとの事でした。その後、 平成23年10月4日に(株)シーテックからの代替の対策案としまして被害を受けている住民宅へ防音ガラスを設置し、夏はガラス戸を閉めたままでは暑いのでエアコンを設置し、風力発電施設の耐用年数が、あと17年ありますが、その期間、夏季の3ヶ月分の電気代を補償する事が上阿波区長さんに示されました。

その代替案を上阿波区の役員と被害の4軒の住民の方で協議されてきました。問題の早期解決のために、上阿波区と(株)シーテックの間に市も入り、11月末に協議を行いました。防音ガラスの設置に関しても4軒で状況も異なってきますが、12月9日に上阿波区と(株)シーテックとの間で、代替案での了承に至りました。防音設備設置の見積もりは中電不動産(株)が行うこととなり話がまとまりました。本日、中電不動産(株)から報告があり、4軒の見積もりをし、被害者の方と覚書を交わす事になるとのことです。設置工事も(株)シーテックの指定会社で行うことで合意されていると聞いております。

管理人 今、事務局から説明していたように今日の午前中に(株)シーテックと施行業者の方が来ました。防音ガラス、エアコンの設置の見積もりは60万円くらいとなりました。上阿波区と(株)シーテックのこの問題を財産区管理会でこのように取り上げていただきまして、ありがとうございます。

 次に「平成24年度 第1回2012年2月22日」の抜粋:

事務局 上阿波と(株)シーテックの件ですが、騒音については防音サッシを設置し、夏の暑さ対策のためにエアコンを設置するということです。これに関する覚書が2月10日に交わされました。4軒の方におかれましてはこれで納得されています。設置工事については3月末までに完了する見込みです。工事完了以降は、現在の騒音の原因である風力発電施設の東~南寄りで風速10m以上の風の時、22時から6時までの一時停止の制約はなくなります。覚書にもそう謳われております。これまで、この条件化での停止は 1 ヶ月に2・3回の回数であったと報告を受けております。 布引自治協とAWFの環境保全協定についてですが、伊賀市が立会人として間に入っておりますが、騒音・水質汚濁の防止等の内容となっております。締結日は 2 月 17 日となっております。以上で今まで管理会で懸案事項としておりました 2 点の経過を説明させていただきました。

会長 上阿波区の防音工事はまだという事ですが、4 軒とも覚書は交わされたということで、 納得はされたと思われます。停止条件についても納得していますか。

事務局 それについても覚書に記されているので納得していると思います。 また、財産区管理会に対するAWFの確約書についてですが、昨年の 10 月でしたが、 地権者としての財産区の同意書を早く得たいという事でしたが、その時、上阿波区の騒音被害の問題等もあり、管理会としましては早期解決を求めるため、新規の風力発電施設の増設計画には保留をしておりました。そこでAWFは大山田財産区管理会には 迷惑はかけないということで確約書を作成する申し出がありました。しかし、上阿波区の問題が解決し懸案事項はなくなったということで、即ち確約書の必要性はなくなったという解釈がAWFからございました。しかし、それでは今までの管理会で審議し提案してきた内容とは異なるので、やはり確約書は提出してもらうべきものであるとAWFへつたえましたところ、昨日、確約書の提出がありました。当初の内容は布引地域に限ったものですが、管理会が大山田全域のこととして捉えるべきであると提案したので、阿波地域・山田地域を含むようになっております。

会長 事務局の説明で何か質問等はありますか。

委員 阿波の覚書は4 軒個々に交わしたのか、それとも1つにまとめてしたのですか。

事務局 補償の防音サッシとエアコンの設置は、各戸により居宅の形状等が異なることもあり、 個々にしております。

委員 上阿波区は立会人として間に入っていますか。

事務局 入っておりません。また、覚書は個人情報となりますので、開示はできません。

 以上のように、少なくとも地元の管理団体も問題の経緯を把握している。そして、今日までシーテックやAWFの風力発電施設との共生で得た、過疎地の山林の維持管理等の経験や知識も持ち合わせている。共有すべきは、ありえない不安や恐怖ではなく、再エネのメリットを最大に活かし、気候危機や生態系危機を生き抜く知恵。地味に見えるかもしれないが、その土台となる仕組みに多くの人が気づくかどうか。事業者とのコミュニケーションは、いつまでも疑似科学にすがる反対派からは学べない。


参考:

(仮称)秋田県能代市・三種町・男鹿市沖における洋上風力発電事業
環境影響評価方法書についての意見の概要と事業者の見解
https://www.meti.go.jp/shingikai/safety_security/kankyo_shinsa/furyoku/pdf/2022_014_02_01_03.pdf

伊賀市大山田財産区管理会 会議録(概要)
平成23年度 第4回2011年12月21日
https://www.city.iga.lg.jp/cmsfiles/contents/0000002/2153/gijiroku_1.pdf

伊賀市大山田財産区管理会 会議録(概要)
平成24年度 第1回2012年2月22日
https://www.city.iga.lg.jp/cmsfiles/contents/0000002/2509/gijiroku_1.pdf

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