洋上風力発電 伊勢湾

 先日、名古屋のTV局が三重の鳥羽にある離島の一つ、答志島周辺での洋上風力発電の実現の可能性を報じた。今年から県が予算を組んで本格的な調査に乗り出したところだが、過去の民間の調査では、伊勢湾が長崎の五島列島や秋田の規模とまではいかなくても適地であることは示されている。

 数年前には島内で実際に計画案が持ち上がり、売電の収益を本土と結ぶ橋の建設費用に当てるという画期的なものだったが、一部の漁業者の反対によって頓挫。風車が漁場の邪魔になるという主張だったようだが、一方で橋を架ける案自体には反対していない様子。2000人にも満たない島だが、生活面での利便性や必然性を考えると、少なくとも連絡橋は島民全体の悲願なのだろう。

 漁業へのメリットとして、すでに国内外の事例から、洋上の風車周辺が魚礁になるのは分かっている。また、風車が並ぶのが沿岸から数キロ先であれば、騒音も(疑似科学の「風車病」など鵜呑みにしなければ)問題にならないはず。それに再エネ全般、全国で噂が絶えない「環境破壊」が本当に深刻なら、そもそも橋の建設すら出来るはずもない。推進した地元漁協には先見の明があった。

 他のTV局や新聞も各地の「脱炭素」化の動きをもっと前向きに取材すべきだが、限られた情報の中で、生活者の感情を左右する報道の責任は想像以上に大きい。今回のも本来は明るい話題のはずが、不自然なまでに暗さを引きずっている番組のつくりが気になってしようがない。そんな演出は不要。
 

参考:

8年後に“原発10基分”目標の風力発電…島国ニッポン『洋上風力発電』が切り札となるか 漁師たちには葛藤
https://www.youtube.com/watch?v=VZ9xAwVSMUA

三重県 知事定例会見録 令和4年3月1日
https://www.pref.mie.lg.jp/CHIJI/000179128_00154.htm

伊勢湾における洋上風力発電の可能性に関する検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwea1977/29/2/29_2_92/_pdf

関連: