風力発電 「乱開発」から陰謀論まで立ち向かう 続き
先の記事の「山が乾燥する」にも繋がる話として、風力発電をめぐって各地の反対派は風車の建設によって「土砂崩れ」が起きるとか、事業者が施設周辺で発生した「土砂崩れ」を放置しているなどと言い広めている。しかし、これまで実際にはあったのは雨風などによる法面崩落程度で、それは事業者が対処して行政に報告もしていて、崩れた場所は復旧または経過観察の措置が取られている。
風力発電が国内で普及して30年余り経ったが、風車が「土砂崩れ」を直接引き起こしたことも無ければ、「災害」に発展したことも無い。いくら探しても、該当するような事例は一つも見つからない。強いて言えば、土地改変による植生の問題は時々出てくるものの、気温や湿度、気象や季節が大きく関係する「乾燥」が出てくることは、まずありえない。
具体的には、「(仮称)青山高原風力発電所リプレース事業に係る環境影響評価方法書 三重県環境影響評価委員会小委員会 質疑概要」に注目するといい。同資料6-7ページより抜粋:
合わせて、「令和5年4月14日 風力部会資料 (仮称)青山高原風力発電所リプレース事業に係る環境影響評価準備書補足説明資料」にも同様の報告が記されている。同資料2ページより抜粋:
頑なに「土砂崩れ」を訴える側に事業者側が説明を繰り返しても「なかなかご理解いただけない状況」というのが、この問題の本質と言える。行政もその状況を把握しているが、反対派は総じて事実を認めようとはしない。認めない理由は単純で、認めてしまうと主張がすべて覆ってしまうから。とにかく「迷惑施設」「乱開発」扱いしなければ、活動は続かない。自称「専門家」の手を借り、勉強会や講演会の参加者や賛同者を増やせば、押し切れると思うようになるのかもしれない。
この問題の根深さは、事業計画を白紙撤回に追い込む理由になりそうなものが主にネットやSNSで出回っている噂やデマ、作り話ばかりなので、そこから疑似科学や陰謀論にはまっていく図式があること。より注目されるために主張がどんどん派手になっても、自己目的化した活動に「検証」作業が備わることは無く、いつのまにか外との対話は閉じてしまい、本人たちの強い「思い込み」だけが現実に取って代わる。「エコーチャンバー」が出来上がってしまう。
それは「現実と平行する別世界」であり、早い話が「現実逃避」でしかなく、思考の「行き止まり」なので、新たな答えは導き出せない。なので、堂々巡りが続くが、日本では依然としてメディアが掘り下げないので歯止めが効かない。そのあいだにも気候や生態系など前代未聞の危機は確実に進行しているが、それもまた反対に拍車をかけてしまうことになって、抜け出せない。
昨今の再エネ嫌いの風潮には、以上のような背景や特徴がある。
参考:
2023/01/12 くまもりNews
風車設置20年、三重県青山高原土砂崩れ止まらず 室谷会長ら現地視察
https://kumamori.org/topics/kumamori-news/20230112-1.html
(仮称)青山高原風力発電所リプレース事業に係る環境影響評価方法書
三重県環境影響評価委員会小委員会 質疑概要
日時:令和 3年 3月 1日
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000941140.pdf
(仮称)青山高原風力発電所リプレース事業に係る環境影響評価準備書補足説明資料
令和5年4月
株式会社 青山高原ウインドファーム
https://www.meti.go.jp/shingikai/safety_security/kankyo_shinsa/furyoku/pdf/2023_001_02_02_02.pdf
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