風力発電 「乱開発」から陰謀論まで立ち向かう
GPIが福井と滋賀にかけて計画している風力発電事業でも、山間部であるがゆえに土砂崩れを懸念する声が少なくない。実際、同地域では長年放置されたままのスキー場跡地が周辺に影響を及ぼしているため、開発に厳しい目が向けられている。
とはいえ、聞こえてくるのは、そういった問題を挙げる地元の声ばかりではなく、全国で盛んな反対運動からのもある。中でも、関東の造園業者による「意見書」はまた目を引く疑似科学というか陰謀論で、風車を建てると地層や水脈まで損なわれて「山が乾燥する」らしい。そのコピペが、案の定、ここで投書に使われている。
「(仮称)余呉南越前第一・第二ウィンドファーム発電事業 環境影響評価準備書についての意見の概要と当社の見解」32-33ページ、「意見の概要 No.70」一部抜粋:
物理的に考えるまでもなく、自然要因を無視して何でも風車に結びつけること自体が全く理屈になっていないということを、まずは本人が気づくべきだろう。また、「津軽ウィンドファーム開発後、その周辺に広がるペンセ湿原の広大な泥炭層に影響し、世界的にも大変貴重な出来島最終氷期埋没林が腐敗、崩壊した事実が示していることは周知のこと」とは、初耳。なので、「津軽ウィンドファーム」ではなくて「ウィンドファームつがる」を指しているのだろうと察し、検索すると「出来島最終氷期埋没林」の解説や写真は見つかるものの、風車の稼働によって「腐敗、崩壊した事実が示している」というのは見当たらない。先の造園業者による、他の地域の事業計画に当てた「意見書」以外は。
その意見に対する「事業者の見解」は、以下のとおり:
「局所的であり、その周囲から雨水は 山林に浸透していくため、山全体が乾燥するというようなことは考え難い」というのは当然で、同事業者には各地で長年の運営実績があり、現場を知っている。山が乾燥するという発想は、風車を「巨大な扇風機」とでも捉えない限りは、なかなか出てこないはず。一つ言えるのは、ありきたりな妄想では風車は止められないということ。風車を動かすのは自然の風で、その仕組みは科学で、前代未聞の危機に立ち向かう最善の手段だから。
参考:
(仮称)余呉南越前第一・第二ウィンドファーム発電事業 環境影響評価準備書に係る公聴会 議事概要
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5373120.pdf
(仮称)余呉南越前第一・第二ウィンドファーム発電事業 環境影響評価準備書についての意見の概要と当社の見解
令和4年11月 株式会社グリーンパワーインベストメント
https://www.meti.go.jp/shingikai/safety_security/kankyo_shinsa/furyoku/pdf/2023_002_02_01_03.pdf
宮城加美風力発電事業建設計画への意見書 特定非営利活動法人 地球守 代表理事 高田宏臣
https://jimdo-storage.global.ssl.fastly.net/file/cfaa3a10-c75c-4c95-afb1-5772e4fd75fe/%E5%AE%AE%E5%9F%8E%E7%9C%8C%E3%83%BB%E5%8A%A0%E7%BE%8E%E7%94%BA%E9%A2%A8%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%84%8F%E8%A6%8B%E6%9B%B8_%E7%92%B0%E5%A2%83%E5%9C%9F%E6%9C%A8%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%E3%83%BBNPO%E6%B3%95%E4%BA%BA%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%AE%88%E9%AB%98%E7%94%B0%E5%AE%8F%E8%87%A3.pdf
東北森林管理局 津軽森林管理署金木支署の見所 名称「出来島の最終氷期埋没林」
https://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/introduction/gaiyou_kyoku/annai/midokoro/midokoro_saishuuhyokimaiboturin.html
日本最大の風力発電所「ウィンドファームつがる」の完工・商業運転開始について 2020年4月1日
https://greenpower.co.jp/2020/04/01/tsugaru_syougyouunntenkaisi/
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