風力発電 「文化的争い」や「軋轢」を乗り越えていくために 続き 

 先の記事と同じく三重で、今度は数年前から稼働している「度会ウィンドファーム」を昨年秋に視察した京都の「京丹後市美しいふるさとづくり審議会 」の報告から引用する。

 18ページより抜粋:

<当日の質問事項への回答、意見交換>

Q1.(審議会委員)地質や地形に関心がありまして、志摩半島といいますか海から近い箇所に山があるので、高低差が非常に目について良い感じの山だなと思ってバスの中から見てきたのですが、山頂付近の地質は、おうむ岩となっておりまして、写真で見ると白っぽい花崗岩のような感じですが、崩れやすいとか、造成しやすいとか、そのあたり少しご説明いただきたい。

A1.(事業者)アセスの中で、確か先生方にも来ていただいて、チャートだねということは聞いています。言われているとおり、この後山に行くとわかりますが、パラパラ崩れるような地表をしています。ただし、風車の基礎も 16 角形で、厚さが数メートルあり、その下に杭を打っているため、基本
的には地質上は、風車の建設に大きな問題はないということで理解しております。
(町)当町の隣に玉城町があり、そこの尾根が中央構造線になっており、玉城町に行くと赤土の柔らかい地質をしているが、こちらはチャートで、この庁舎自体も比較的固い岩盤の上に建っていまして、近隣で震度3ほどの地震が起きても、こちらでは震度1にも満たない状況です。それくらい固い岩盤なので、風車の工事も大変だったのではないかと思っています。
(事業者)補足として、風力発電機は、平成 20 年に建築基準法の適合法が改正され、超高層ビルと同じ構造基準を満たさないと(国交省の大臣認定を受けないと)建てることが認められないということで、通常は支持層までのボーリング調査というとこに対して、更に大深度のボーリング調査をしながら解析して、強度設計をしたうえで大臣認定をもらって初めて建設ができるという形になってきています。山岳地の場合は、結構べた基礎(杭を要しない)のケースはあるんですが、全てポイント調査をしたうえで設計を作って、国の審査を受けて、建設工事に入れるということになっています。

 20ページより抜粋:

Q4.(地元区長)今のお話を聞かせていただく中で、私どもの関係も地域住民は不安な部分が払拭できない中での反対の声に繋がっていると解釈されるわけですが、具体的に反対されている内容はどのようなことに対してでしょうか。例えば、自然が破壊されるだとか、水が悪くなるとか、どういう状況で反対の声があがっているのかを教えていただきたい。

A4.(事業者)当時のことで覚えているのは、「山を切って山体崩壊が起こって集落が全滅するのではないか」とか、「低周波音で死んでしまうのではないか」とか、「水が汚れて田んぼの米が美味しくなくなってしまうのではないか」といった声があったと記憶しています。
(地元区長)それらの部分で、現状として風車が設置された中で、こういった問題が逆に理解されて、当時はこのような話が出ていたけど、今になっては声が少なくなったという状況はございますか。
(事業者)現状は、全くこうした不安の声はないという認識でいます。
(町)町としても全く同じです。先ほども申しましたように、この地域では初めての風力発電事業でしたので、低周波音や獣害等を心配する声、水の問題もありましたが、結果として苦情等は一切無いということを申し上げておきます。
(事業者)初めてそうした計画が来るというのは、地域の皆さんは非常にわからないことが多々ある中で、不安というのは拭えないのは当たり前のことだと思います。だからこそ、アセス法で決めれた説明や開示に留まらず、ご心配ごと、経験のないものでもあり、巨大な構造物でもあります。尚且つ太陽光と違い回転体ですので、やはり音も出るだろうといった様々な懸念があるのは無理も無い話だと思いますので、個別にしっかりと繰り返し対話を重ねていくというのが、私どもの取組み方と共通する部分としてありますので、また、そういった声を挙げることは尊重されるべきものであり、権利でもあると思われるので、何らの遠慮はいらいないと私どもも考えております。

 「山を切って山体崩壊が起こって集落が全滅するのではないか」「低周波音で死んでしまうのではないか」「水が汚れて田んぼの米が美味しくなくなってしまうのではないか」といった根も葉も無い噂は、どこかで事業計画が持ち上がるたびにほぼ必ず出回るが、実際に風力発電施設が出来て、その地域がどうなったのかは一目瞭然。普段でも稀な山体崩壊が本当に起きたら、事業者も行政も隠しようがない。低周波音で人が亡くなることがあるなら、日常で耳にする大小様々な音に耐えられないだろう。水が汚れるというなら、降雨時に川の水が濁っても文句は言えないし、米の味の感じ方は人それぞれ。

 現在、丹後市でも計画が進んでいて、地域住民が抱く懸念や思いに広く応えようとする同審議会の姿勢は、過去の議事録からも読み取れる。不毛な争いや対立ではなく、再エネとの共生を実現するには、それぞれの地域の事例を結びつけるなど事実関係を明らかにしていく必要がある。


参考:

令和4年度 京丹後市美しいふるさとづくり審議会 風力発電所先進地視察 <実施報告書>
https://www.city.kyotango.lg.jp/material/files/group/1/040214_ufs.pdf

京丹後市美しいふるさとづくり審議会
https://www.city.kyotango.lg.jp/top/soshiki/mayoroffice/hishokoho/3/4/3/2299.html

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