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33年後のなんとなく、クリスタル


2015年の読書記録。

田中康夫『33年後のなんとなく、クリスタル』(河出書房新社)を読んだ。先だって、『なんとなく、クリスタル』(新潮文庫)も読んでみた。前に読んだのは高校の図書館ででした。読むのも33年ぶりってことか。主人公の名前(由利)位しか記憶になかったよ。かなりまっさらな気持ちで読んだ。
でも、読んでおいて正解。もとクリの登場人物たちの今が、ヤスオの来し方と絡みながら描かれるのがいまクリ。
一旦は行政の長となり、国政にもうって出ていたヤスオが抱えて来たポリシーみたいなものが、作家になった頃の回顧譚から一本の道となっていることをひたすら訴える。
いまクリも、もとクリ同様、長い長い注釈が沢山挿入されており、参照しながら読み進めるのは結構大変。結局読破に1週間かかってしまった。図書館の予約順位高かったのに、なかなか順番回ってこなかったのもむべなるかな。
いまクリはヤスオのモノローグであり、由利、江美子、早苗、直美等、もとクリの登場人物たちとの交流を描いてはいるが、物語(本のストーリー)は全然面白くない。面白いのは、それぞれの登場人物が、どう生きて来たか、という部分。
クリスタルですから、食べるもの、着るもの、暮らし方等、華やかでゴージャス。一方で、震災、脱ダム、農政、森林行政等、世の中のあり方に対する批判は辛辣。ヤスオの過去の作品への言及も多く、わたし自身面白く読んだ本もあったけれど、結局、人の記憶に残るのはもとクリだけなのかな。
いまクリがもとクリのようなベストセラーになるとは思えず。
夕方の光景の中で物語は終わる。世情が黄昏ていっていることを、象徴しているのかな。


#読書 #田中康夫 #なんとなくクリスタル #もとクリ #いまクリ

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