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マリー・ローランサン-時代をうつす眼(アーティゾン美術館)

子どもの頃からローランサンが好き。松谷みよ子の短編にローランサンへの言及があったのを読んだときから、憧れ、見られる機会があれば見に行き、マリー・ローランサン美術館は、蓼科にあった頃にも何回か行き、ホテルニューオータニ内にあったときも行った。今も、マリー・ローランサン美術館収蔵の作品が結構あるので、またどこかにハードが出来ることを心から願っている。
アーティゾン美術館で開催中の「マリー・ローランサン-時代をうつす眼」展(2023/13/9-2024/3/3)に行った。昨年の2-4月に、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催された「マリー・ローランサンとモード」展に続いてのローランサン展。嬉しい。作品に被りが少なく、違ったアプローチからローランサンの画業を辿れた充実感。
序章 マリー・ローランサンと出会う
自画像4点。
第1章 マリー・ローランサンとキュビズム ローランサンはキュビズムにも首は突っ込んだが、それほどバリバリのキュビズム画家ではないよね、というアプローチ。メッツァンジェ、グレーズ、ブラック、ピカソなどの、館収蔵作品との取り合わせで紹介。
第2章 マリー・ローランサンと文学 アポリネールとか、堀口大學とか。今回初めて見てよかったのは、マリー・ローランサン美術館収蔵だけど今まで見たことなかった「椿姫」の、小説挿画の水彩画12点。

第3章 マリー・ローランサンと人物画
「マリー・ローランサンとモード」展の時のようにモデルの名前が明記された作品はなく、幾つもの印象的な肖像画、そして、同時代の他の画家の作品も色々。わたし的にはあまり見たことのなかった東郷青児が印象的だった。藤田嗣治も数点。
第4章 マリー・ローランサンと舞台芸術
これは、「マリー・ローランサンとモード」展の方が充実していた。ローランサンの年譜を辿る上で触れておかないわけにはいかないから、という感じの扱い。
第5章 マリー・ローランサンと静物画 数は少なかったが、花束の絵もよかったし、椅子の背に花の絵を描いた作品もよかった。

終章 マリー・ローランサンと芸術
大作を数点。それに途中の部屋で展示していたブラックやピカソもこの章に含まれるらしい。静謐な終わり方、という印象。

五人の奏者。左端から花、ギター、何もなし、トランペット、フルート、とのことだが、奏者5人じゃないじゃん。そして、フルートでなくオーボエかクラリネットに見える。
三人の若い女
プリンセスたち

ローランサン、国内で見られる作品はかなり見ていた気でいたが、今回は初めて見る作品がかなりあって面白かった。生涯にわたる画業を網羅している感じもよく、これまでローランサンの作品を見てない人にも、入門的にもいい展覧会だと思った。
ローランサンの描く女性たち(今回見た油絵作品で女性像でなかったのは、ピカソの肖像一点だけだったよ)、服の境目が分からないよね、と今更ながらに思う。どこからが服で、どこからがヌード? 上半身は服着ているのに、脚は付け根から生足っぽかったり。不思議だけれど、それでいいの。

6階がローランサン展で、5-4階が石橋財団コレクション展。こちらもかなり力の入った展示なので、ローランサンに興味のない人も損しないと思う。
新収蔵のクレー2点と、荒川修作もよかったが、それ以外の作品も充実。尾形光琳「孔雀立葵図屏風」、酒井抱一「芥子藪柑子図」だけでも展覧会代の価値があるよ。

クレー「小さな港」
クレー「双子」


荒川修作「クールベのカンヴァスNo.2」


酒井抱一
光琳
光琳

特集として野見山暁治(1920-2023)を取り上げていて、野見山の作品自体は、そんなに好きではなかったのだが、何しろ画業が長いので、野見山の生涯に絡めて色んな画家の作品を紹介しているのが、やや牽強付会、でも、まぁそんなに無理もしてないよね、という印象。

今回もアーティゾン美術館の底力にやられました。ローランサンの次はブランクーシらしい。


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