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ジョン・アーヴィング『神秘大通り(上・下)』(小竹由美子訳・新潮社

2017年9月の読書記録より。

ジョン・アーヴィングの新刊『神秘大通り』(上・下、小竹由美子訳、新潮社)読了。
大学時代に既にわたしの文学的ヒーローだった作家の新作が今も読める幸せ。
『ガープの世界』を読み、映画を見る(キネカ大森まで行ったのを覚えている)。作中作「ペンション・グリルパルツァー」が大好きだった。『ホテル・ニューハンプシャー』を読み、映画を見る(渋谷のシネマライズだった)。ジョディ・フォスターの美しさったら! 『熊を放つ』は、村上春樹訳だったから、いそいそと読んだ。和田誠の装丁もすてきだった。『サイダー・ハウス・ルール』は子育て中に、文庫本になったのを読んだ。あとは何を読んだっけ? 全部は読んでないのだが、いつでも気になる作家。
ディケンズを愛し、小説はその長さ自体が一つの主張である、という考え。だからアーヴィングの小説はどれもとても長い。
繰り返し語るのは、人工妊娠中絶の是非、そしてHIV(初期の作品にはない...当時はまだ存在が認められていなかったから)。そこに宗教が絡んでくる。
メキシコ系アメリカ人作家フアン・ディエゴの人生。ずっと熱望していたフィリピン旅行というリアルタイムと、心臓病の薬の服薬を中断したことっで見られた夢の中で辿る過去。フアン・ディエゴの超能力的な力を持つ妹ルぺ(一番魅力的な登場人物だった)との会話。セーフティネットのないサーカス、ルぺの死に方は上巻の最後で、登場人物によりネタバレされるが、それでもそのシーンに来たら涙。メキシコの聖人、グアダルーペのマリア。マリア・モンスターの鼻。色々な仕掛けが、二つの時系列の中で粛々と展開される。謎の母子ミリアムとドロシーは誰だったのか。コーヒー缶の中の灰と奇跡。フアン・ディエゴを敬愛する作家クラーク・フレンチのうざさ、その親族との年越し、カルメンおばさん。グッド・グリンゴとの約束。すみません、読んだ人にしかわからないキーワードたち。大きな物語を読む幸せ。
ということで、旧作も遡って読まなくては。
と、書いても誰かに何かを勧めている文章ではないね。ただの備忘ですみません。


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