初めての民事裁判(病院訴訟)

前回→https://note.com/enebisu/n/n531fe514f1e4

一般に民事裁判は原告勝訴率が70%前後と言われている(らしい)。
これは日本の裁判は原告に立証責任がある事に由来していると言われている。
つまり原告は証拠を充分に集め終えた状態で初めて訴訟を起こすので、まぁ勝ちますよねってお話らしい。
ところが、これはあくまでも【個人VS個人】でのお話。


実際は【個人VS企業/組織/店舗】といったパターンで訴訟まで発展する事の方が多い。
こうなってくると話は全く異なる。
まず個人の側が立証責任を負う原告であっても、そもそも証拠が圧倒的に集めにくい。
自分を例に挙げれば、訴訟相手は“都内N区内有数の超大型病院”なわけだが、事件に巻き込まれるなんて当然全く想定もしていない状態で通院していたわけで、普段の通院時も当該入院時も録音や録画/撮影なんて当然行っていなかったが、(そもそも院内にはプライバシーの観点から録音撮影禁止の貼り紙が至るところに貼ってある)かたや病院側は24時間防犯カメラが回っている。

撮影録音禁止


この状況下で手術前に預けていた荷物が手術後に病室で返却された際には破損状態だった→病院に話す(別にコチラから新しく買って返せと言ったわけでも修理費用を弁償しろと迫ったわけでもない。)→破損した瞬間の動画か写真を出せ、それができないなら【患者が自作自演で修理費を不法に要求したと訴えるぞ!】と凄まれるわけだ。
これを一個人側が証拠を固めて立証するのはかなり難しい。
目撃者や証人に於いても企業/組織側は幾らでも揃える事ができるが、一個人にはそれが極めて難しい。
例え決定的瞬間を第三者(客/患者等)が目撃していて撮影していたとしても一個人にはそれが誰なのかすらわからないし連絡手段もない。
が、病院側は違う。
防犯カメラ映像に目撃者が映り込んでいればカルテからすぐに名前も連絡先も判明するわけだ。
そして自分に都合の良い箇所を切り取って防犯カメラ映像も提出すればいいし、自分に都合の良い証言をしてくれる人間の発言だけを証拠として提出すればいいわけだ。
正直、被告の口裏合わせの証言や都合のいい箇所だけの切り取り等は事前に予測はできていても、それらに対しての回避や反論は本当に難しい。

そしてここで立ちはだかる“原告立証責任”と“原告虚偽申告罪”の壁。
別に虚偽申告なんてしなきゃいいじゃん?と言った話ではなく、裁判では被告側にはこれに該当する様な法が存在しないと言うこと。
世の弁護士先生達もブログ等で沢山書いていらっしゃるし、自分も今裁判で散々被告に繰り返された事だが、平たく言えば『被告側は幾らでも嘘が言える』と言う事。
裁判所側が度を越して酷いと思った時に漸く罰金がチョロっと発生する程度。
当然企業の顧問弁護士なんてコレをよく理解してるから、まぁ凄い勢いで嘘を並べ立てられ、原告にとっては激しい消耗戦になる。
(原告側は被告の明らかな虚偽主張でも証拠を提示して科学的に反論しなければならず、嘘の多さに反論を諦めると認めた事になってしまう。)

今裁判での実例を数点だけ挙げれば…

例1
被告:原告の鞄は中綿が入った素材であり、例え落下したとしても内包物が破損することはあり得ない。→中綿など入ってない写真を証拠品提出。(鞄自体の形状や素材がわかる写真は訴状と同時に提出済みであったが、その後でもこう言った主張をされてしまう。結局最終的には1年11ヶ月が経過した段階で裁判所に現物を持参で直接見て頂き漸く立証に至った。たったこれだけの事でも相手が嘘を付き続けると立証に凡そ2年掛かってしまう。そしてこの件は本裁判上で大した争点にすらなっていないのである。)

例2
被告:当日、看護師は原告の鞄の持ち手2本をしっかりと肩に掛け運搬していたので鞄の落下はありえない。目撃した別看護師も『持ち手2本をしっかり右肩に掛けて運搬していた』と証言している。→持ち手2本の長さ(円周)は20cm弱しか無く肩関節まで通る長さはなかった事実を鞄写真と肩まで通らない写真を証拠として提出。(鞄自体の形状や素材がわかる写真は訴状と同時に提出済み、上記同様のその後の展開。)

例3
被告:原告の鞄はマチが11cmある鞄であるため容易に安定自立するものであり鞄がテーブル上で倒れたりテーブルから落下したりはしない。→マチなど存在しない鞄である事とマチがない鞄を無理矢理自立させた時の不安定さを写真にて証明。(鞄自体の形状や素材がわかる写真は訴状と同時に提出済み、以下同文。)

例4
被告:当日鞄内にはカメラも同包されていたが、プラスチック製のカメラには外傷が無く時計だけが破損する事は不可解であり得ない。→カメラもレンズも総金属製外装である事実を写真とメーカー公式サイトの写しで証明済。更にカメラにも外傷があった事実を写真にて証明。(カメラ自体の写真や型番等は訴状と同時に提出済み、そもそも被告は事件当日にカメラを見て触って素材も確認済みでもある。結局此れらも上記の鞄同様に裁判所に現物持参で漸く立証)

例5
被告:原告の時計は型番から60年前の物であるが古い物なので経年劣化で元々破損状態にあった。→訴状や既に提出済みの証拠品に記載の型番とは全く異なる型番で、外観も全く異なるアンティーク機種を提示されてもお話にならないし一般修理業者及びメーカー公式修理部門の2社の見積書には“衝撃による破損”と記載されている。(証拠資料は訴状時に既に提出済み。上記同様裁判所に持参で…以下同文。)

などなどである。
随時この調子が続くと言うか繰り返されるわけで、正直疲弊します。

上記例はあくまでも反論できた例であり、実際は『言った言わない』になる所謂『水掛け論』の範疇になると(要は防カメも回ってなければ周囲に目撃者もいない状況など)もっと凄い勢いで嘘をついてくるし、防犯カメラが回っていても被告側には立証責任が無いので平気で嘘を主張し防カメ映像は提出しないという荒業を使ってもくる。(因みに今裁判で被告は一度も防犯カメラ映像は提出していない。)

コチラも嘘で対抗すればいいと思うかもしれないがコチラには“原告虚偽申告罪”が立ちはだかるので相手に反論され、嘘がバレた時のリスクを天秤に掛けると到底そんな危険な橋は渡れない。
被告側のみがコレをできるのは事実上ペナルティーが無いに等しいからである。

思いがけず長くなってしまったが、書いておきたいのは『個人VS企業/組織』の民事訴訟は想像してる何倍もしんどいという事。
正直勝率は低い。
しかし被害に遭った上に冤罪までふっかけられた以上争わないわけにはいかない。
正直しんどい。

次回、長くなるが訴状と証拠品を開示しようと思う。

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