パラダイスティ3

大学の講義を全て終えて帰宅しようとすると、大学の前で同じサークルの明美に声をかけられた。サークルといっても大した活動はできてなくてほぼ休止状態である。たまにみんなで飲みに行ったりする程度になってしまっていた。明美は就職先が決まったようであとは残りの単位を取得して卒論を出せば大丈夫との事だった。夏になる前だというこの時期に就職先が決まっているのはなんとも羨ましい。

「明日香の調子はどうなの?」

「私は全然ダメ。ちゃんと就職できるかどうかも分からなくなってきた。」

「明日香ならパパっと決まっちゃうと思ってたんだけどなぁ。」

また私の勝手なイメージが明美の中で出来上がっていた。

「私は全然優秀でもなんでもないよ。」

「でも真面目に講義に出てるって聞くし卒論だってもう取り掛かってるんでしょ?」

「そりゃ後で困りたくないからちゃんとやるよ。」

「偉いじゃん。私もそろそろ始めないとなのに全然進まないよ。」

明美はそう言ってスマホを取り出して焦った顔をした。どうやらバイトがこの後入ってたそうでまたね、と言って走って私の前から去っていった。どうしてか私だけがとてつもない場所に取り残されたような感覚に陥った。

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