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死ななかったあなたへ

どうも山ぱんだくんです。昨日「メガネかけてるとオシャレな人みたい」って言われたんですけど、じゃあメガネをかけていないと私はなんなんだい?

さてさて山ぱんだくんと月曜の理屈
第20回は「死ななかったあなたへ」

第二十回 死ななかったあなたへ

夏休みの終わり。10代の子たちに、学校に行きたくない子達に、何か書こうと思うのに言葉が出てきては消えてゆく。

学校に無理に行かなくてもいい、とか
自分は今結構楽しい、とか
いつか必ず最高の友達が出来る、とか

どんな言葉でも20代になってしまった私から10代の子に言ったら、陳腐に響くような気がしてしまうから。大人の言葉って驚くほど届かなかったなあと自分の過去を思い出す。

だから今の10代の子たちじゃなくって、10代の時の私に向けて手紙を書こうと思う。
10代、と言っても私の人生の山場はティーンエイジャーになる前にやってくる。

死ななかったあなたへ

小学校5年生だったかな4年生だったかな。あなたはいつも部屋で窓の外を見ながら「ここから落ちれば死ねるかな」なんてことをぼんやり考えていました。今思えば、多分あのくらいの高さじゃ死ねないと思います。(骨折程度で済んだでしょうね。)電車に飛び込めば肉片が散るし電車が止まった分だけ賠償金がかかる。首を吊れば排泄物が出て部屋を汚すし見目麗しくないことをあなたは知っていました。死ぬってなかなか難しい。あなたは死ぬにはいささかクレバー過ぎました。

そして、それ故に友達がいなかった。

クレバーなあなたはそれから気付いてしまいました。友達がいないのはいじめでもなんでもない。彼らにだって友達を選ぶ権利がある。人には合う合わないがあるし、そこを無視するとお互いにいいことはないのだと。悲しいことにそのことをあなたは若干10歳かそこらでよく理解してしまいました。(彼らと一緒に遊んだとしても楽しくないことにも薄々気付いていたね)

結局あなたは死にませんでした。死ぬことができませんでした。一人が上手になって、受験して入った中学で少し友達ができて、なんとか生き続けて、22歳になりました。残念ながらあなたは相変わらず普通が下手で、一人が上手。周りとうまくやれず、息苦しいことが多いです。

心は強くなれないまま守らなきゃいけないものばかりが増えました。
もう立ち上がれないと駅のベンチで静かに涙を流す日が増えました。
眠れない夜が増えました。
決断するのが前より怖くなりました。
人から裏切られることが増えました。
どうしてもこの人とは相容れないのだと思い知ることが増えました。

それでも

それでも、守ることが出来なくても離れずそばにいようと決めました。
それでも、たとえ遅れをとっても自分のやり方で立ち上がれるようになりました。
それでも、寝不足の目に染みる朝日に、微笑むことが出来るようになりました。
それでも、えいやっと飛び込む勇気が出来ました。
それでも、私は決して裏切らないと決めた大切な人たちが出来ました。

上手に生きられない日々だけど、それでもその中には確かに心震わせる瞬間があって、心が愛おしさでいっぱいになる瞬間があって、ああ、この瞬間のために生きていたのか、と思います。

死ななかったあなたへ
ごめんなさい、相変わらず未来になっても大きくなっても全然楽にはなりませんでした。
だけど死なないでくれてありがとう。
生き続けてくれてありがとう。
諦めないでくれてありがとう。

とっても大切なことなのに、ついつい忘れてしまうから。お手紙を書きました。

また、手紙書きます。