【ぼくのあお4 朝型世界の午前二時】
仕事を辞めてから何もする気が起きなくて、日がなボーっと起きたり寝たりを繰り返して過ごしていた。何もしたくはなかったけれど、なんでだか本は作っていて、性懲りもなくまた自分で印刷して、縫って、綴じている。
過去に何度か、本を読む体力も漫画を読む気力も映画を見るエネルギーもなくなってしまった時期がある。就活中とか、仕事辞める前とか。
その頃は毎日眠りすぎて眠れず、ただ起きていることも辛くて、ずっとはてなブログを読んでいた。はてなブログの、誰でもない誰かがずっと昔に残した日記をひたすら。何年分も。
独り言、までは内省的じゃないけれど、人に見せることをそこまで考えていないゆるい文章がちょうど良くて、知らない誰かの日常を時間も距離も飛び越えてただぼんやりと眺めている時間がなんだか一番心が安らかだった。
『ぼくのあお』は自分の日記を本としてまとめたシリーズで、『求職者の福音』に収録されたものから数えて第四弾になる(今回の一年日記に前回の第三弾の内容が内包されているので四と言っていいか分からないが)が、独立した形でちゃんとした本になるのは今回が初めてになる。
(前略)この本は、2020年4月から2021年4月までの世界と、僕の記録です。
この一年、初めての緊急事態宣言に戸惑ったり、どこかで見えるかもしれない花火を見上げたり、大切な人がいなくなったことに悲しんだりしました。
そしてそんな世界の片隅で一人のひ弱な学生が就職したり、書いた小説が世に出たり、ダメになって逃げ出したりしました。
そんなにいろんなことがあったのに、一年と待たず忘れてしまうほど人の記憶は脆いから。
ここにこうして残しておこうと思います。(はじめに より)
自分の日記を他の人が読んで面白いのだろうか、と思いながら中身を作っていたのだけど、今回出来上がった原稿をパラパラと読みながら、はてなブログをずっと読んでいた頃のことを思い出した。地味で些細な日々の記録が、疲れ果てて本も漫画も映画も摂取する気力のない時にダラダラと読んでいたはてなブログの日記の温度感と少し似ていた。
これはきっと、そういうものなんだな、と思った。
紙は淡いクリームにしよう。文字は青にしよう。
暗がりではてなブログを見ているよりは、ずっと目にやさしいように。
懲りもせずオール手縫い製本、表紙は紅花、中の文とイラストは全て青で印刷しています。かわいい。