その遺伝子はどこへ

どうも山ぱんだくんです。三時まで飲んでも七時半には起きられるというのが唯一人に誇れる特技です。いえす。

さてさて山ぱんだくんと月曜の理屈
第五十六回は「その遺伝子はどこへ」
まじでどこいった

第五十六回 その遺伝子はどこへ


母はなかなかチャーミングな人である。

「はいお土産」と渡された旅行の土産はよく近所のコンビニで買うカレーせんべいだった。
これいかに?と疑問に思っていると「これ、あっちの方の工場で作ってるのね~」という。いや、工場がむこうにあったとて。あったとて近所のコンビニで買えるものを土産で買うのか。

そんなチャーミングさあいまって、母はよくモテたらしい。若い頃の写真を見ると、なるほど美少女である。残念ながら沖縄出身ばりのぱっちりした目は兄に持っていかれた。僕に残されたのは父ゆずりの塩顔と誰に似たか分からん鋭利さである。

会社時代はあっちに飲み会があれば駆け付け、こっちに飲み会と聞けば駆け付け、ととにかく社内でも有名な女だったらしい。そんな会社に数年遅れで入った叔父さんは「〇〇さんの弟」とばかり言われるのが滅茶苦茶に嫌だったという。(別に家の会社というわけではない。)ご愁傷様である。

そういやこんなエピソードもあった。「バーであちらのお客様からですって、ドラマの中でしかないよねえ」と何気なく言ったら、母にあっさりと「え?あるよ?」と言われたのだ。…つまりはそういう人だ。

今は子育てがひと段落してから図書館で子供たちと一緒に本を探したりイベントを企画したりとよく働いては愛しの人(小田和正)を追って全国を駆け回る。毎日忙しいながらもなかなか楽しそうで何よりだ。

残念ながらその魅力的な遺伝子も、パワフルな遺伝子も、まったく伝わってこなかったけれど(どちらかというと兄にその気がある)、そうやって生きている母を見るのが好きだし、羨ましくもある。

「昔は大人になって、歳をとっていくのが嫌だったけど…」
母が唐突にぼそっと言ったことがある。
「今が一番、楽しいわ。」

僕もそんな大人になりたい。