保険の根管治療 vs 自費の根管治療(精密根管治療)
日本の医療保険制度について
すべての国民が、何らかの公的医療保険に加入し(国民皆保険制度)、医療行為(現物)が先に行われ、費用は保険者から医療機関へ事後に支払われる(現物給付)。また、患者は自らの意思により、自由に医療機関を選ぶことができる(フリーアクセス)ことが、日本の医療保険制度の特徴といえます。
この「健康保険制度」の基本的理念は、医療保険の運営の効率化、給付の内容および費用負担の適正化ならびに国民が受ける医療の質の向上を総合的に図りつつ、実施されなければならないとあります。
この保険診療のルールの中に「使用医薬品および歯科材料」について、
①保険診療では厚生労働大臣の定める医薬品以外は用いてはならない
(療担第19条1)
②保険診療では厚生労働大臣の定める歯科材料以外の歯科材料を歯冠修復及び欠損
補綴において使用してはならない(療担第19条2)
とあり、承認された医薬品の用法・用量、効能・効果、医療機器の使用目的等を遵守することが、有効性・安全性の前提となっています。
このようなことから、保険診療で国が定めた医薬品や歯科材料以外の使用は「歯科医師の裁量」と「患者さんの同意」を得ておこなう、保険外(自費)診療となるわけです。
保険の根管治療の治療成績
保険診療でおこなう「根管治療」の治療成績はどうなのか?
政府統計の総合窓口(e-Stat)で公表された2009年の1年間に行われた永久歯の「抜髄(初回の根管治療)」と「再根管治療」症例の総数は1,350万例以上にのぼります。この内訳は、抜髄(約600万例)と再根管治療(約750万例)となっています。これは何を意味しているのか?
初回の根管治療(抜髄)の成功率が90%程度といわれているのも関わらず、予後不良症例をかなり惹起しているようにも見えます。これは、根管治療時のラバーダム防湿などの「無菌的処置の原則」を遵守していないことが原因の一つだと思います。さらに、懸念されるのは「再根管治療」の「無菌的処置の原則」を遵守した時の成功率が80%前後と報告されていることから、実際は根管治療後の経過不良症例が想像以上に多く存在していることです。
日本で「歯内療法専門医」をうたっている先生方が数多く所属する「日本歯内療法学会」の会員へのラバーダム防湿(無菌的処置の原則)の使用頻度をアンケート調査した結果では、「必ずラバーダム防湿をおこなう:25.4%」であり非常に驚く結果でした(「根管処置におけるラバーダム使用の現状」日歯内療誌 24(3):83~86 2003)。
おすすめ 「精密根管治療」
★歯内療法専門医のこだわり★
①ラバーダム防湿
ラバーダム防湿は根管治療をおこなうにあたってなくてはならないものです。アメリカでは犬の歯の治療でもラバーダム防湿が用いられます(笑)。今はうれしいことに患者さんから「ラバーダムをしてもらえますか?」と聞いてくる時代になりました。残念なことに日本ではラバーダム防湿をしない理由が「コストがかかる」、「手間がかかる」、「面倒」です。精密根管治療では「無菌的処置の原則」の遵守は絶対です!さらにラバーダム防湿をおこなうことで、 唾液および血液で汚染されたエアロゾルまたは飛沫の発生を最小限に抑える効果もあります。
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