【随想録*03】ゴールデンイヤー

「GW、終わっちゃったね」
「……そうかな、僕にはそうは思えないよ」
「どうして?もうみんな大型連休が終わって働いてるよ」
「……そういう話をしているんじゃないよ、僕はね」
「じゃあ、それってどういう話?」
「……ゴールデンなのはウィークだけじゃあない、きっとイヤーだってそうさ」
「あは、黄金の耳?」
「お前は救いようがないバカだな。イヤーってのは年ってことさ」
「えっ……それって」
「そう、僕は黄金無職って事さ」

01.学生時代の夏休み、それから正月

僕がまだまだ人のカタチをしていて、将来に希望を持てていた頃の話。
夏休みにはドデカい入道雲を無邪気に追い回して、暑さにうだる山道を笑顔で駆け回り、垂れる汗にすら日差しが乱反射して、キラキラと煌めいていた頃を、今はもう断片的にしか思い出せない。

毎日が鮮烈に輝いていた。
友達と休みの計画を立てて、楽しみで心が躍り狂っていた。
虫取り、プール、子供だけの小旅行はワクワクとドキドキに包まれていて、きっとこの感情は大人になっても味わっていることだろうと思っていた。
何か大きなことを成し遂げるという確信が幼心を支配して……。
しかしまぁ、その頃の”将来の僕”という大人像は、今や蜃気楼のように霧散していたのだった。
後に残ったのは、土くれの中で蠢くバケモノだったのはお笑いだ。

かつて神童だった俺たちへ、奈落の底から羨望と憎悪を込めて。

02.終わらないウルトラスーパー大型連休

子供のころはずっと休みが続けばいいのにと思っていたものだが、今はどうだろう?
無論、今も思っているに決まっている。
さながら家にいるにもかかわらず「あー帰りてぇ」と独り言をつぶやく感覚にも似ているが、本質的な回答としてそれは間違っているだろう。

もう何年も休んでいるのにも関わらず、身を包む焦燥感と劣等感に焦がされ続けながら、精神を摩耗させ続ける姿はさながら修行僧のそれである。

ならば働けばすべて解決じゃあないか。なんて識者ぶって回答を提示されても困るのだ。
なぜならば僕は休みたいからだ。今以上に、精神的に、救済的に。
ただの怠惰な蛆虫の戯言ではないかと嗤う君にも、この病理はきっと巣食っている。
いくら休んでも休み切れない。労働を手放しても、一度壊れた人間は一日中布団の上でも満足しない。

さながらカラカラに乾いた喉に水道を突っ込んで、しかし瞬く間に喉は乾いて脳が危険信号を発生させる。
もっと飲まなければ、もっと潤いを求めなければ。
そうして、休んでいるのにも関わらず脳から快楽物質は生成されず、娯楽をしようにも、それすら精神的負荷に感じられて、息苦しく、生き苦しい。

すなわち、休み過ぎた人間とっては日常生活すらストレスに感じられるほどに精神強度が虚弱になってしまっているのである。

ふざけんな。

03.私はぷにゅりらの腎臓です

私はぷにゅりらの肺です。長らく続く喫煙のせいで肺胞はボロボロです。
私はぷにゅりらの肝臓です。長らく続く飲酒のせいで脂肪肝になっています。
私はぷにゅりらの神経です。他に比べて僕だけは頑丈です。

おわり。


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