ボイメ編
これは俺が高校1年生の時に巻き込まれた、メンヘラのメンヘラによるメンヘラな事件の話である。
入学して2週間が経った頃、幼馴染から軽音部の見学に誘われた俺は付き添いとして同行する事になる。
するとなんという事でしょう。
あーら、不思議🎶
当時部長のドラムの演奏に、一聴き惚れしちゃった❤
という事で、入部を即決して幼馴染と入部。 思い立ったが吉日である。
入部後、新入部員は全員で8人。
2ヶ月ほどそれぞれ先輩が付いてパート練習の基礎が始まり、もう一人のドラマーの女の子Aともすぐ仲良くなる事ができた。
それから1年生は2組に分かれてバンドを組む事になった1ヶ月後、ある日1人で練習をしているとAに声をかけられる。
聞いた話を要訳すると、
バンドを組んだ後すぐ、Aは同じバンド内のギターボーカルであるTから告白をされて付き合う事に
↓
付き合ってしばらくしてから、たまに嫉妬で暴言を吐かれるようになる。
↓
怖いから反論する事も出来ずに、どうしたらいいか分からない。
との事だった。
そこで俺は本人の意思を尊重して「別れるつもりがないのであれば、とりあえずお互いの為に一旦距離を置いた方が良いかもしれない」と助言。
Aは何かを決心した顔で頷いた。
翌日、部活に顔を出すとTがいない。
部活終わりにAがスマホを見て騒いでいたので、相談された件も聞きたかったので声を掛けてみることにした。
するとAは少しバツが悪いような顔をして「実はね…」とスマホの画面を見せてきた。
映っていたのは、Tとの個人チャット。
そこにはおびただしい量の不在着信と、
ボイスメッセージ15件。
ひえ。
Tの異常な執着心を垣間見た俺は、思わずそんな声を上げていたと思う。
事の経緯はこうだ。
相談された日の夜、LINEの個チャにて「お互いの為に距離を置きたい」と話したところ発狂
↓
恐怖を感じながらも何度着信されても無視したところ、自殺未遂をほのめかされる(虚言)
↓
それを止めつつ、着信は引き続き無視すると今度はボイスメッセージが送られてくる
↓
怖くて一人で内容を聞くこともできず、Tは学校も休んだので今の状況は分からない状態
↑
イマココ
リアルでこんなメンヘラが本当にいる事に驚きつつも、相談で距離を置くことを提案した俺に報復してこないか軽く心配になる。
そんな事を思っているとはつゆとも知らず、Aは俺にあるお願いをしてきた。
「Ichiには申し訳ないんだけど、本当に怖いから一緒にボイスメッセージ聞いてくれない…?」
鬼かお前は。
そう思ったが自分の人生の中で、ネット以外でメンヘラという珍獣に遭遇したのは初めての経験。
つまり何が言いたいかって?
危険を承知で好奇心に負けたって事だよ。
そうして一つずつ再生されていく内容は、俺たちの想像を絶するモノだった。
「ハァ…ハァ…ねぇっ、何で電話に出てくれないの!?」
「ハァ…なんで、なんで、なんで、なんでぇ!?!?」
「もうハァ…ハァ…話、きいてよ…ハァ…ハァ……どうして…」
「わからなぃ……ハァ…ハァ…痛い、いたいぃ」
「Aが無視するから…ハァ…ハァ…顔を引っ掻いて…ハァ…ハァ…傷ができた…ハァ…ハァ」
「なんでぇ…ハァ…ハァ…」
「はなし…ハァ…ハァ…きいて…」
「ハァ…ハァ…」
「………………………………………」
「…………………………」
「……………」
その場にいた全員がドン引きである。
ちなみに後日普通に登校していたTの顔に傷なんて無かったし、やはり虚言だった。
2人はその後直接話し合い、結局距離を置くことは無かった。
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