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2024年3月に観た映画の感想

あらすじ程度のネタバレがあります。特にオススメの映画にはタイトルのうしろに🌟つけてます。みた順で書いています。
以下のマガジンに他の月のぶんもあります。

デヴィッド・フィンチャー『ファイト・クラブ』🌟

© 1999 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

U-NEXTで字幕版をみました。
資本主義的に成功をおさめているもののどこかうだつの上がらないセールスマンである主人公が、ブラピ演じるカリスマ性をもつ男・タイラーと出会い、「ただ殴り合う」ファイト・クラブを設立する。クラブに関する一切のことは他言無用、かつごく限られた人間しか入会できないクラブだったがなぜか徐々に規模が大きくなってゆき、事態は思わぬ方向へ……というお話です。
フィンチャーの冷たい画面作りとパラニュークのもつ皮肉な厨二病みたいな雰囲気、めちゃくちゃ相性がよかった……。ブラピはもちろんのことなのですが、主演のエドワード・ノートンがド級によかったです。こういう役似合いすぎる。
「全部自分でやっているのに、なぜか自分の手を離れて進んでいってる感じで過ごしている主人公が破滅していく」というお話、私が唯一読んだことのあるパラニューク作品である『サバイバー』もまさにそんな感じだったのでとても好きでした。
映画として(お話として)好きかと言われればあんまりなのですが(なにに怒りを感じているかに関して共感した部分はもちろんあります)、未だに厨二病なので主人公の設定は刺さりました。ラストのシーン、爆発はエキサイティングでしたが、あんな愛の告白はちょっとキモすぎて爆笑しました。

エドガー・ライト『ショーン・オブ・ザ・デッド』

© 2004 WT Venture LLC.. All Rights Reserved.

U-NEXTで字幕版をみました。
こちらはファイト・クラブの主人公とは違い、マジで冴えなくてうだつの上がらないセールスマンの主人公・ショーン(画像中央の赤いネクタイをした男性)がある日目覚めると周囲の人間がゾンビ化しているというお話です。パニック映画というよりガッツリコメディでした。
非現実の滑稽さを活かすという意味でホラーとコメディはもともと相性がいいと思うのですが、それにしてもホラーコメディってやっぱ面白いな〜と改めて思いました。現実を皮肉るという芸当が中心に据えられがちな部分も近く、すごく親和性の高い2ジャンルなのではないでしょうか。
アラサー?アラフォー?になっても学生時代の友達とばっか遊んでおり彼女のことはほったらかし、やる気があるのかないのかよく分からないがとりあえず善良で優しい男ではあるショーン、意外と憎めない。やる時はやるしょーもない人間、かっこいいんだよな……
ショーンは友達や家族を大切にする人間ですごく好感を持った反面、彼の親友は毒親ならぬ毒友とも言うべき存在で、ショーンのことを思うと一刻も早く付き合いを絶ってほしい。でもそういう大事な決断ばかりが先延ばしにされ、グダグダやってるうちに時が過ぎて死んでいく。ゾンビウイルスなんてなくても、我々はすでにほとんどゾンビのような存在である。

ジャック・ショルダー『ヒドゥン』

©1987 New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

U-NEXTで字幕版をみました。
殺人事件が特定の地域で多発する。犯人はそれぞれ全くの別人で一見無関係に見える事件たちだったが、捜査に加わったFBI捜査官はこの一連の事件を「連続殺人」として調査する。バディを組んだベテランの刑事は捜査官をいぶかしみながらも、2人は協力?して謎を解き明かしていく、というお話です。
カイル・マクラクラン(画像手前)、マジでハマり役ですね。美しい人外男なんてみんな好きに決まってる。
キモいクリーチャーをみれますし、全てを説明し尽くさずに終わってしまうところも私的にはとても好みでした。たしかドラマ『ツイン・ピークス』の準備?としてみました。いまアマプラで絶賛配信中のドラマ『フォールアウト』にもカイル・マクラクランが出演してますので、見比べて「若い時こんなんだったんだな〜」という感慨に浸れるのでオススメです。

アルフレッド・ヒッチコック『めまい』

© 1996 LELAND H. FAUST, PATRICIA HITCHCOCK O'CONNELL AND KATHLEEN O'CONNELL FIALA, TRUSTEES UNDER THE ALFRED J. HITCHCOCK TRUST. ALL RIGHTS RESERVED

U-NEXTで字幕版をみました。
高所恐怖症をもつ元刑事の男性は、妻の精神的錯乱を疑う旧友から「妻をつけてくれ」と依頼される。友人の妻と交流を重ねるうち、主人公は彼女に惹かれていくが……というお話です。ジャンルとしてはサスペンスホラーかな?わかりやすくファム・ファタールと破滅の映画です。
パク・チャヌク『別れる決心』きっかけでみましたが、ヒッチコックの不安さに訴えかけるホラーはやっぱり不快で素敵ですね。結構終盤まで「よくある話だな〜」と思って見てたのですが、最後の30分のキモさの畳みかけでけっこう殴られました。別れる決心なんかより余裕でキモい。最高。
終始ホラーともサスペンスともつかない感じがとてもよいし、「他人の違う顔」を我々が感じる時に根底に流れているこちら側、我々自身の身勝手さみたいなものを『別れる決心』とは違う形で突きつけられた感じがしてよかったです。演出も奇抜?で素敵でした。

黒沢清『CURE キュア』🌟

😭
©1997KADOKAWA

U-NEXTでみました。
ヤバすぎる。気が狂う。ありがとう黒沢清!役所広司最高すぎる!
連続殺人をそそのかす謎の男(画像右)、公私の自分像のあいだの相違に苦しめられる刑事の男(画像左)、ふたりが邂逅した時何が起こるのか…というお話です。ちょっとこの映画の萩原聖人すごすぎてあんまり集中できなかった……
基本的に明るい不穏さを楽しむ映画だったと思うのですが、今となっては陳腐化してしまっているように思えるその路線も黒沢清の手にかかれば?めちゃくちゃかっこよくて素敵でした。むしろ陳腐化の原因なのかもしれないですが。
そしてすみません白状すると間宮がメロすぎるなーと思ってたら映画終わってました。心を鬼にしてもう一度観返します。役所広司が凄まじくて最高でした。

ロマン・ポランスキー『ローズマリーの赤ちゃん』

ローズマリーと赤ちゃん
© 1968 Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.

U-NEXTで字幕版をみました。
なんで観ようと思ったのか覚えてないです。たぶんポランスキー作品を観たい時期だったんだと思います。
夫婦で引っ越した先のアパートの隣人たち、なにかがおかしい!旦那もなんかおかしい!悪魔崇拝者かも…?というお話。カルトは善良な隣人の顔をしてそこにいる。
自分の夫ですら悪魔崇拝者のひとりかもしれず、自分だけがただ1人正気である(もしくは自分だけ狂っているのか?)という孤独と、妊娠という絶対的な孤独の交差を描いた作品。じっとりとしんどい映画でした。キショかったし。
妊婦が憔悴してヒステリックになるのも、デリケートな時期ではよくあることであるとも思うのでほんとうに色んなところで起きていそうだし、周りに誰も味方がいないというのはほんとうにつらい。「いままさに自分の腹の中に子供がいる」という状態はその妊婦しか経験できないことだと思うので、彼女らはいつでも孤独なんだな……と思いしんどくなりました。
主演の女優さんが古い方の『華麗なるギャツビー』のデイジー役の方らしいので、そちらもチェックしたいです。

パク・チャヌク『親切なクムジャさん』🌟

©2005 CJ Entertainment Inc & Moho Film. All rights reserved.

U-NEXTでみました。
やっぱりパク・チャヌクが好きだ!
チャヌク作品の「復讐三部作」のうちの一作。特に話が繋がってるとかそういうものではないみたいですが。
児童誘拐殺人の罪での服役を終えたクムジャさん(画像の女性)が、自分を苦しめたものに同じく苦しめられた人たちとともに復讐をするという作品です。
途中までは同監督作『お嬢さん』の方が好きかな〜とか思ってみてたんですが、後半にあるとある場面からのアクセルの踏み込みが凄まじく、結構食らいました。すごい。パク・チャヌクはいつも「私が求めているのはこれかも」を見せてくれる……
この人の映画は心臓を直接鷲掴みにしてくるような不快さをいつも持っていて、なぜ心臓を掴まれるかというとその映画と私の間には同じ怒りへの共感が流れているからで、そのことに救いを覚えます。そこが好き。
パク・チャヌク作品でたびたび登場する「愛する(はずの)相手と母語を異にする」というモチーフは、「他者のことをわかる」ということ、つまり個々人の間に横たわる不連続性を飛び越えるというほとんど不可能に近い行為が、愛のもつ奇妙さによって可能になる瞬間があるのかもしれないという希望を描くのにすごく適しているなあと今回の作品でも思いました。このことについてはまた別記事で話すかも。
直接的な描写(グロというか胸糞というか)も多くみているのが厳しい場面も多々ありましたが、そのへんクリアできそうな方にはぜひみてほしいです。

石黒昇,河森正治『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』🌟

劇中屈指のベタベタ三角関係。(誰よその女!)
©1984 ビックウエスト

新宿にあるでっかい高い映画館でみました。
アニメシリーズ『超時空要塞マクロス』の総集編的な感じです。マクロスシリーズはじめて触れました。
とにかく演出がかっこよくて、物語的にもメタ的にも歌(文化)のパワーを思い知らされる映画でした。良い音の映画館で観ることができたのも良かったのかもしれないです。
この物語は「男/女の共存」を軸にしているので、前半にヤバい男女論を繰り広げる人間がたくさんでてきて辟易しました。あと主人公(画像の男)めちゃくちゃ嫌いです。
和平のために歌を届けるミンメイ(画像左の女性)はアイドルとしての覚悟が決まっていてプロフェッショナルとして本当にかっこよくて素敵な人だなあと思い、そのせいでより主人公のクソさが際立っていました。ガキすぎるし、(これは主人公に限らずミンメイを含めた全ての人がそうですが)ミンメイを和平のための道具としてしかみていなくて最悪。
地球で食器を並べるシーンと、終盤に主人公が階段を駆け上がるシーンが好きです。

クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』🌟

個人的に劇中一番しんどかったシーン。最悪すぎた
© Universal Pictures. All Rights Reserved.

映画館でみました。良い映画だけどキツかった……。
「原爆の父」と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマーの伝記映画です。
かなり誠実な作りの映画だったと思うけど、えてしてそういう頭は置いてけぼりになります。被爆国の人間としてみるには重すぎる。そもそも長くてしんどい。あと会話劇が基本なので字幕で観るのにも向かないです。画面と字幕両方を目で追うだけで結構忙しかったです。
良心の呵責の芽生えを問われるシーンも、反対署名を集めている人がいるシーンも、投下のあとのお祝いの席も、いざ目の前にすると(もう80年も前のことなのに)祈るしかない、という稀有な経験をしました。
オッピーという一人の人間、ロスアラモスの所長としてのオッペンハイマーという人間はそれぞれに存在していて、影響を及ぼしあい、矛盾しながら同時に噛み合っていく。人々のこういう二面性(そう呼ぶべきかはちょっと謎ですが)を我々はどう受け止めるべきか。取るに足りない人間ならまだしも、莫大な数の人間を殺す兵器の発明のトップにいた人間なら我々はそれをどう受け止めるべきだろうか?という話が主軸にあるように見受けられました。
オッピーは個人的な罪悪感すら取り上げられて奪われてしまいましたが、こういう場合に誰がなにをどう償うべきなのか(そもそも償うべきなのか)という話は皆さん好きなんじゃないですかね。
映画全編通してずっと耳の後ろが緊張してるあの嫌な感じがしていてやはり結構負荷が高い映画だったので、原爆にたいしてトラウマに近いものを抱えている人は観る必要ないなと思いました。誠実な作品ではあったと思うけど、わざわざ嫌な思いする必要はないです。

黒沢清『地獄の警備員』🌟

😄
©株式会社 ディ・モールト ベネ

U-NEXTでみました。キモくてよかった!!!
黒澤清作品は『CURE』に続き2本目です。CUREに比べると直接的に暴力。主演の松重豊さんが不気味すぎて超素敵でした。
殺しの手数も多いしそれなりにバイオレンスですが、黒沢清らしさみたいなものが節々から感じられて素敵でした。ロッカーのくだりがお気に入りです。マジで最悪すぎる。
なにも考えずサクッとみれるので、「今日は軽く怖い映画みたいな〜」という日におすすめです。

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