2023年8月に観た映画の感想
あらすじ程度のネタバレがあります。特にオススメの映画にはタイトルのうしろに🌟つけてます。みた順で書いています。以下のマガジンに過去の感想noteをまとめてあります。
S・S・ラージャマウリ『RRR』🌟
劇場にて吹き替え版を鑑賞。字幕版と併せて3回目。
ビーム役の杉田智和がすきなので観にいきましたが、かなり杉田智和でした。
この映画はその設定上、言語の違いによるディスコミュニケーションが物語に(多少)活きてくるのですが、今回は吹き替え版だったことでビームが「あまり人の話を聞いておらずなんか毎回曖昧に返事をしている人」になっていたのがちょっと面白かったです。あともちろんすごく画面の力が強い作品でもあるので、実際字幕がないとやはり話も頭に入りやすかった気がします。個人的な話ですが、ちょうどこの頃「話の組み立て方」みたいな本を読んでいたこともあり(そして観たのが3回目だったのもありますが)、自分の中で感じていたもやもやがプロットとともに整理できたので満足感はありました。
この物語、「武器のない革命の素晴らしさ」が登場人物達の目の前に転がっていて、しかもそれを一度は肯定的に認知しているのにもかかわらず結局は武器による蜂起に進んでいくのですが、その様をみてやるせない気持ちにならざるを得ませんでした。でもマジで何回みても面白い。疲れるけど。字幕苦手な人はぜひこの吹き替え版でご鑑賞ください。みないのはもったいないです。
デイミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』🌟
アマプラで字幕版を鑑賞。やっとみました。
私自身ミュージカル映画がかなり好きなので今までみていなかったのは不思議ですが、たぶん上映時間が長かったから遠ざけていたのでしょう。
ハリウッドの夢追い人たち(自分のジャズバーを持ちたいピアニストの男と俳優志望の女)の恋愛と、成功と、挫折と、ほろ苦いハッピーエンドを描いた作品です。夢追い人カップルの片割れが先に成功しちゃってちょっとすれ違いが……みたいな感じですね。デイミアン・チャゼルといえば激心労映画『セッション』の監督ですが、あのハゲも(もちろん別人役で)登場しており、いろんな意味でドキドキする映画でもありました。
ほんとうに観てるうちから、「ハリウッド人にウケそうな映画だ!!!」みたいな感想が湧き出てくるような映画で、ハリウッドの人間が内側からそのお仲間に向けて自分たちの素晴らしさを唄う映画って感じでした。監督がミュージカル映画好きなのがよくわかる作品で、そういう部分のアツさみたいなものには好感が持てましたが、いかんせんくどい。ミュージカルのロマンチックがあまりにも濃くて面食らいました。でもあの濃さこそがこの映画の切なさでもあるんですよね。そう思うと結構好きです。
アカデミー賞獲ったのは納得感あるんですが、これ普段あんまり映画見ない人がみたらくどくてつまらんのじゃない?などと邪推したりしましたが、なんでもみなさんご存じのオープニングは本当に映画史に残るだろうなという感じの素晴らしさで、あれをみるだけでも一定の価値があります。だから🌟つけましたし、音楽が本当に素晴らしいです。あとライアン・ゴズリングがほんとうにかっこよかった……
ジーン・ケリー『雨に唄えば』🌟
アマプラで字幕版を鑑賞。
ちょっとあまりにも名作で驚いてしまった。『巴里のアメリカ人』みて寝てしまった過去があったので心配していましたが、そんな心配無用でした。面白すぎる!
無声映画からトーキーにうつりかわる時期のハリウッドの(無声映画で名を挙げている)俳優達を描いた作品です。ジーン・ケリー最高すぎ。
その美貌で無声映画では超人気だったがじつは声があんまり美しくなく、その上話し方も洗練されていないのでトーキーではとても生き残れそうにない女優と、その相手役で映画に出ていた主人公と仲間たちを描いています。能力主義社会を批判する際に「ある能力や努力や成果が評価されるのは、その能力や努力が評価される世の中だからだ」という話がよくでますが、まさにそういう話で世知辛いなあという部分もありつつ、主人公のドンは結構なんでもできすぎていつの時代でもそんなに困らんだろという感じでその対比も切なくおかしいお話でした。
もちろん音楽は最高、ジーン・ケリーも最高、話も面白いしみて損はないです。歌あり笑いありダンスあり涙ありで最高です。「仕事でひょうきんなことしてる人がそれに誇りや威厳を持っている」という話が好きすぎるのもありますが、はじめは自分への皮肉として言っていた「威厳」を本当に引き受けていく様がさらにかっこよかったです。名作。
グレタ・ガーウィグ『バービー』🌟
劇場で字幕版を鑑賞。日本ではとあるネットミームのせいでみにいった人が減ってしまったのではないかというちょっと可哀想な作品ですが、名作でした。
「夢の国」であるバービーランドに変化が生じ(踵が地面に着いちゃうとか朝起きたら口が臭いとか、太ももにセルライトができたとか、鬱々とした気持ちになって死について考えちゃう……とか)、その問題を解決して理想の国を取り戻すために、バービーたちが現実世界へ入り込むというお話です。
(この月に2回みたので、今回はこの映画のフェミニズムについて感想言おうと思います。2回目の方ではルッキズムやアイデンティティについて感想言うので、その辺気になる方はそっちも読んでください。)
観る前から「フェミニズム映画です!!」というテンションの前評判をよくみかけたので、アンチフェミニストたちがわらわら湧き出してくるタイプの映画かと思い身構えていましたが、予想外に(と言ってはアレですが)フェミニズムにあんまり馴染みのない人が思う「フェミニズム」とは少し違った着地になっていました。特に好感を持ったのは、男社会(家父長制)における男の生きにくさみたいな部分もしっかり描いていたところです。フェミニズムは女だけのためのものではなく、全ての人に向けられるものである必要があると感じているので、「女社会」とか「男社会」が一概に善いとか悪いとかいう話ではなく、そういう不平等や圧力差を生み出す階層構造こそがよくないんだ、という方向性だった(気がする)のがとても素敵でした。そういう意味で言えば、フェミニストの人には少し物足りないかもですね。この映画のフェミニズム的な描写ってなんか子供向けというか「とっても入門編です!」って感じがあり、人によってはそこを問題に感じるかも。
こんな真面目な話をしてるにもかかわらず、みたあとに残るのは(マジで)「笑って泣いてハッピー!」なのもすごかったです。バービーランドの美術が超最高だったしライアン・ゴズリングも最高だったし、マーゴット・ロビーは本当に可愛かった。おすすめです。話し足りない。みないのもったいない。
石原立也『響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』
アマプラで鑑賞。このクソガキ〜〜〜!!!
アニメシリーズ2クールが終わったあと、いよいよ部長になった久美子とそれを取り巻くトラブルのお話です。久美子、立派になりやがって……
引用した画像の右側にいる久石奏というボブの女の子がいますが、初期の久美子と限界の時のあすか先輩を足して邪悪にしたみたいなキャラで、正直みててしんどかったです。まあついこの間まで中学生だったのでしょうがないですね。最後は「めんどくさいけど可愛げのある後輩」ルートへの光が見えたので多分次回作以降はこんなにイライラさせられないと思いますが、名前覚える気にならないほど嫌〜なガキでした。とりあえず、この間まで中学生だった正論だいすき賢いワタシ大好きなガキが、ピンチに陥るとクリティカルなド正論パンチを繰り出してくるあすかパイセンと渡り合って勝った久美子とかいう人間に勝てるわけないだろ!って感じでした。
その対比もあってか2,3年生のキャラクターたちがみんな大人になっていてそこはとっても素敵でしたね。久美子なんて部長としてマジでしっかりし過ぎてるくらいだし、みどりちゃんとかいうド聖人をどんどん好きになりましたし、コンバス組の輝きが愛おしい……。不思議なんですが、あんなに沢山の人格者を有しているのに北宇治高校吹奏楽部はどうして揉めるんですかね。塚本秀一やみどりちゃんや葉月やなつきパイセンや久美子をなぎ倒す勢いの嵐みてーなやつが定期的に入ってくる団体、こわい。優しくていい人があまりにも多いこの組織ですが、そういられるのがどれだけすごいことか考えさせられました。
リドリー・スコット『ブレードランナー ファイナル・カット』🌟
アマプラで字幕版を鑑賞。かっこよかった〜〜!
ハリソン・フォードといえば『インディ・ジョーンズ』のイメージしかない状態で(かつ最近見たリドリー・スコット作品が『ハウス・オブ・グッチ』な状態で)鑑賞したんですが、初っ端から映像がかっこよすぎて頭抱えてしまいました。なんて映画だよ……
アンドロイト的な、人間に限りなく近いけど人間ではない存在「レプリカント」は月での労働などに従事しているのですが、そのうち感情が芽生えた個体が地球に逃亡し人間の中に紛れ込みます。その違法なレプリカントたちを抹殺するのが、「ブレードランナー」たる主人公のデッカードです。
あまりにも有名な作品だったのでみるのを後回しにしていたのですが、圧倒的な映像美にぶん殴られました。個人的にはハウスオブグッチは微妙だったのですがこの映画は本当に凄かったので、いったいこの凄みがいつ頃まで健在だったのか(どの作品で健在なのか)を探す旅に出たいと思います。偉大すぎて擦られすぎているのか、たとえばゲーム『デトロイト:ビカムヒューマン』で似たような場面みたぞ!とか「この描写ってさ…!」みたいなことが多々起き、素敵な気持ちになりました。SF映画、面白すぎる。話結構違うみたいですが、原作であるディックの『電気羊』もまだ読んでいないのでそちらも読みたいと思います。もちろん続編もみたいです。ライアン・ゴズリングだし。
グレタ・ガーウィグ『バービー』
劇場で字幕版を鑑賞。2回目。面白かった。
1回目の感想ではこの映画のフェミニズム描写について触れましたが、今回はアイデンティティに関する描写について触れたいと思います。
この映画、全体的に「辛い現実を生きる上で夢に逃避しつつも、自分のアイデンティティには自分でケリをつけろ」「そのためには、自分の外側のものに自分のアイデンティティの全てを委ねるな」という話であるように思われました。
主人公カップルのバービー&ケン(マーゴット・ロビー&ライアン・ゴズリング)にはそれが顕著だったと思います。バービーはそのルックス、ケンはバービーという恋人「だけ」がアイデンティティでした。2人とも映画中でそのアイデンティティを失いかけ、実存の危機に直面します。
個人的にズンときたのはケンのアイデンティティクライシスで、彼は「バービーという恋人」のまなざし、もっといえばバービーを自分の代理としてロールプレイしている女の子(もちろん男の子でもいいですが)のまなざしがなければ存在すらさせてもらえないんですよね。ケンはおもちゃとして発売された経緯からこうなっているわけですが、実際マジでこれぐらい極端に恋人に依存している人も世の中にたくさんいるんじゃないでしょうか。その相手と別れたり相手が死んだりしたとき、あなたのアイデンティティにケリをつけられるのはあなただけです。彼らは(そして私たちは)この映画の中で性別やルッキズムや他者依存からの解放の兆しを見ましたが、その先にはまだ能力主義が残されていそうでした。解放されるべきかどうか現時点で断言するのは難しいですけど。
石原立也『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』
劇場にて鑑賞。
きたる3期にむけたウォーミングアップです!今回は久美子の管理職(部長)としての自己と、いち演奏者としての自己の間のバランスを描くお話でした。部員の前で話す久美子のうしろに麗奈と秀一が立っている様子、あまりにもよかった。
今回は存分に麗奈と久美子のいちゃいちゃもみせてもらえまして、一人で観にいってよかったなと思いました。嫉妬まで直接口に出して伝えることができる関係性、あまりにもすばらしい。そして今回もまたみどりちゃんMVPでした。「部長は簡単に謝るな」と言ってくれる部員はあまりにも頼りがいがあります。一生ついていきます。3期たのしみ!!!
ベン・アフレック『AIR/エア』
アマプラで字幕版を鑑賞。実話をもとにした映画です。
一応エア・ジョーダン誕生秘話なのですが、あんなに奇跡みたいなお話なのに映画としては面白くなかったです。実話の方はすごい面白い話なのに映画にすると急につまんなくなる作品たまにありますよね、脚本の問題なのかな……
マット・デイモン演じる主人公ソニーのアツい演説はとてもよかったのですが、それ以外は正直微妙でした。あとベン・アフレックは自分の監督作で良い役もっていくイメージありますが、個人的になんか今回の役みたいなのには合わないんじゃないかな?と感じました。あんまりぱっとしない男みたいな方が似合いそう。
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