それって本当に効果ある?『絶対にフラれない男、西くん』に異論を唱える
6月の文学サークル「お茶代」の課題は「脱輪さんのnoteを読んで感想を書くこと」ということで、『絶対にフラれない男、西くん』を読んだ。
めちゃくちゃ面白いのでぜひ脱輪さんのnoteを読んでもらえたらと思うが、この西くんは彼女に「ひとつも好きじゃない!」と言われても「じゃあ別の角度で考えてみよう」と伝えることで、フラれることを回避し続けている。
西くんはこう言う。
正直人間関係に関しては、別の角度から考えたところで総体としてマイナスになっていればアウトなので、角度を変えるだけでそれまでと同じ名前の関係性を続けるのは難しい気がする。
たとえば、顔がめちゃくちゃ好きで付き合って、それは変わらないけど性格は無理だから別れたいと思ったとしよう。この場合、性格という角度からは嫌いだけど、顔という角度からは好きということになる。
でも結局性格の嫌いさが-2000で顔の良さが+2300で、そうするとあなたはトータル300で、わたしにとっては付き合う上で必要な点数が500以上だから無理です、みたいな話なので、違う側面から見たところで無理ではないか?と思ってしまった。
実際顔良〜〜〜!と思っていた人と内面が原因で別れたことがあるけど、別れる前でも顔好きだな〜と思っていたし今も顔は好きだ。でもまた付き合いたいとかは一ミリも思わないので、そういうことだと思う。
一方で、性格や内面といっても、その人の内面は自分が見ているものだけでないこともある。
ほとんどの人間(正確にはわたしが観測してきた範囲の人間なので、日本人だけかもしれない)は、職場、家庭、友人などに対して、違う顔を持っているように思う。
違う顔を見ることで新たな面を知り、より愛情が深まったとか尊敬の念が生まれたとかはたしかに聞いたことがある。しかしこれはあくまで関係が一定うまくいっている場合に効くサプリメントだろう。
生活習慣やばくて体重100キロ超えで血圧高くて今にも脳か心臓の血管破れそうな人に健康サプリ与えても意味がないのと同じで、関係性がうまくいってないのに違う顔を見たところでどうにかなるようにも思えない。
しかも、もしこれでたとえばバイト先での西くんを見て「この人バイトしてるとなんかいいじゃん」と思ったとしても、彼女が接するのはバイト先の従業員の西くんではなく、恋人としての西くんだ。
恋人としての西くんが好きでない以上、別の角度から見たバイト先の従業員としての西くんが好きでも、恋人としてはやっていけないだろう。
あくまで関係性を問わず人間関係を続けたいと思った場合は、たとえば恋人でいるのをやめて同じバイト先で働き、好きになれそうなバイト先の西くんとだけ接するという手段もあるが、これでは関係性が変わってしまう。
恋人としては嫌だけど家族といる時の西くんはいい気がすると思った場合は、家族になる、つまり今の日本の法律的に一番やりやすいところでいうと結婚するという方法もある。でもそもそも恋人として嫌な人と結婚する人もあまりいないだろうし、結婚という一見うまくいってそうな選択肢だが、結局恋人という関係性ではなくなることに変わりはない。
ここまで書いたところで、西くんの突飛な理屈に対して、「別の角度で考えたところで無理だろ」と誰もがわかってそうなところをネチネチ考えてるわたしはなんなんだろうと思えてきたので、そろそろ筆を置こうと思う。
でもこれはわたしが考えた別角度の検討なので、まだまだ視野が狭いところもあると思う。「こんな別の角度があるよ!」というご意見があればぜひください。
にしても、こうして別の角度で考えることは効果がなさそうだと述べることはできても、西くんは振られたと論証することがとても難しい。「今は別の角度で考えている時間」という鉄壁の防御があるために、西くんを振られた男にすることはできない。すごい。西くんを振られた男にする方法を考えたい。こっちも思いつく人いたら教えてください。
そして、つらつらと「別角度って無理じゃない?」と言ってきたけど、自分が最初に持った視点で考え続けるのではなく、物事を別の角度で見ることはとても大切だと思っている。某アニメでは「真実はいつもひとつ!」と言っているが、現実世界では、事実はひとつであるが、真実は時と場合によっては、角度に応じて変わりうるものだからだ。
これからは心にイマジナリー西くんを住ませて、何かを考えるたびにこう囁いてもらおうと思う。
「別の角度で考えてみよう」。
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