必ず知っておくべきクラシック音楽のレコードレーベル一覧
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※2024/8/20 更新:細かいところを修正しました。また、eloquenceシリーズの公式サイトのリンクを追加しました。
※2024/8/18 更新:生産が中止されていたMembranレーベルですが、Fermataレーベルから再販を開始しているようなので反映しました。
※2024/2/16 更新:ハイペリオンがユニバーサル系列になってサブスク解禁してたので、反映しました。
この記事について
クラシック音楽を聴いたことがある皆さんは、一度は思ったことはないだろうか。
「クラシック音楽のレーベル多すぎだろ!」
と。
また、見知らぬレーベルのCDを買って、以下のように感じたことはないだろうか。
「とにかく音質激悪。金払って損した。」
あるいは特定のレーベルの音源をストリーミングサービスで聴こうとして、
「このレーベル、サブスク登録していないのかよ!くそったれ!」
等と思ったことはないだろうか。
この記事は、以上のことを思ったことがある方々、そしてクラシック音楽のCD購入やストリーミング視聴を検討しているすべての方々のために、是非知っておくべきレーベルと、個人的おすすめレーベルをざっくりまとめた記事である。
※この記事では主に2022年9月時点での情報をもとにまとめております。一部は確認次第更新していますが、情報が古くなっている場合がございます。ご了承ください。
また、誤っている情報や誤字脱字、追加してほしいレーベルなどございましたら是非コメントでお願いします。
絶対知っておくべきメジャークラシック音楽レーベル
クラシック音楽を取り扱うレーベルのうち特に大手のもの。どれも質が良く、値段もリーズナブルなため、クラシック音楽を聴くときに迷ったらこのレーベル!という認識で構わない。
ユニバーサル ミュージック系列 (Universal Music)
ポップ、ロック、ジャズなど、全ジャンルで圧倒的シェアを誇る超大手レーベル。クラシック音楽においてはその傾向は顕著で、おそらくクラシック音楽レーベル最大手ではなかろうか。もちろんストリーミング配信はしている。
ドイツ・グラモフォン (Deutche Grammophon)
本拠地はドイツ。言わずと知れたクラシック音楽レーベルの中では最古級の歴史を誇る、黄色いジャケットが特徴的なレーベル。指揮者の帝王カラヤンが残した圧倒的レパートリーを始め、幅広いクラシック音楽を扱っている。今でもショパン・コンクールのCDを取り扱うなど、その実力は健在。CDの価格は普通。
アルヒーフ・プロダクション (Archiv Produktion)
ドイツ・グラモフォンの古楽部門として設立されたレーベル。カール・リヒター、ガーディナー、ピノックをはじめとした古楽演奏家の名録音が揃う。古典派以降のピリオド・アプローチ演奏にも積極的に録音を残している。
デッカ (Decca)
本拠地はイギリス。高音質と低価格で知られる超有名レーベル。1980年にドイツ・グラモフォン(以下DG)の親会社であったシーメンスと、フィリップス(Philips, 医療器具で知られるあの会社)が合弁で設立したポリグラムの傘下になることで、フィリップスレーベルがデッカに吸収され、さらに実力を伸ばすこととなった。
ショルティ指揮ワーグナー『ニーベルングの指輪』、ガーディナー指揮ヘンデル『メサイア』など、不滅の名盤にも定評がある。
このレーベルが中心に、DGの音源も併せて制作された廉価版CDシリーズ「eloquence(エロクァンス)」シリーズが、かなり安いうえに音質もよくて個人的にはお勧めだったのだが、最近は廃盤が多く、そのためか値上がりが進んでおり個人的には残念である。ただ、たまにiTunesなどで安くで配信していることもあるので、気になる方はぜひ探してみよう。
eloqueceレーベル公式サイト
ハイペリオン・レコーズ (Hyperion Records)
https://www.hyperion-records.co.uk/
イギリスに拠点を置く元独立系レーベルの一つ。レパートリーは広い。ここの看板演奏家といえば超絶技巧ピアニストで知られるアムランであり、また、レスリー・ハワードによるリストのピアノ曲全集という輝かしい遺産を抱えている。CDの値段はまずまず。
以前は会社の方針でサブスクは一切していなかったが、なんと2023年にユニバーサル ミュージックグループに入ったため、ストリーミング配信を行うようになった。
ソニー・ミュージック・エンターテインメント系列 (Sony Music Entertainment)
言わずと知れた日本が誇る電機・ゲーム・音楽において圧倒的実力を誇る世界企業ソニーの子会社。クラシック音楽レーベルとしても老舗であり、コロムビア・レコードに端を発するソニー・クラシカルと、旧BMG系列のRCAレコード、ドイツ・ハルモニア・ムンディが知られる。
なお、このソニー・ミュージック・エンターテインメント (以下SME)はアメリカに拠点を置いているほうの企業であり、日本のソニー・ミュージック・エンターテインメントとは同じソニー系列でありながら別の企業である。(アメリカでは前者をSME、後者をSME JapanもしくはSMEJと明確に呼び分ける。)
ストリーミング配信はしているが、無料会員には視聴できないようになっていることがある(YouTube Musicで確認)ので注意。
ソニー・クラシカル
本拠地はアメリカ。ワルター、オーマンディ、バーンスタイン、グールドなど錚々たるメンツが揃うレーベル。音質はとてもよく、昔は高価であったが今はむしろCDの値段も安め。
このレーベルの目玉は何といっても下記のRCA、ドイツ・ハルモニア・ムンディ音源と合わせて販売されているCDバジェットボックス「MASTER BOX」であろう。10枚組3000円といった安価で伝説の録音を高音質で聴くことができる。
RCA
本拠地はアメリカ。クラシックレーベルにおいてかなりの古参となるレーベルであったが、BMG傘下となり、その後ソニー傘下となる。カルーソー、ラフマニノフ、クライスラー、トスカニーニなど往年のレジェンド音源が多く存在する。
ドイツ・ハルモニア・ムンディ
本拠地はドイツで、古楽を中心に扱うレーベル。後述するハルモニア・ムンディ社とは別の会社なので注意。(設立時はハルモニア・ムンディ社と創業者同士同じ志を持っていたため、あえて同じ社名にしたのだとか)
何といってもレオンハルト、ビルスマの音源があることで有名。
BMG傘下となりソニー傘下となることで、ソニーの古楽レーベルとなった。
ワーナー・クラシックス (Warner Classics)
映画やカートゥーンで有名なワーナーブラザーズの音楽部門、ワーナーミュージックのクラシック音楽レーベル。メジャーレーベルでは参入が遅かったためか、ライバルのユニバーサルやソニー、EMIの後塵を拝していたが、テルデック、エラートを吸収することで着実に成長し、EMI倒産に伴いEMI音源を手に入れることができたことにより一気にメジャー大手に名乗りを上げることとなった。
現在はこれらの音源を基にCDの全集BOX、バジェットBOXを販売しているが、これがめちゃくちゃ安く良音質なのでおススメ。この記事を書いてるときに1990年代~2000年代録音のベートーヴェンのピアノソナタ全集が新品2000円弱でAmazonで販売していた。
そして、2016年に配信限定のレーベル「X5 Music Group」を吸収しさらにパワーアップした。クラシック音楽界で今一番勢いに乗っているレーベルではなかろうか。
言うまでもなくストリーミング配信はしている。
旧EMI
イギリスを本拠地にしていたクラシック音楽の老舗超大手レーベルの一つ。カザルス、フルトヴェングラー、若き日のカラヤンなど、レジェンドofレジェンドを擁していた。
21世紀まで活躍していたがあえなく倒産、ユニバーサルが買収した。しかしEU競争法(日本でいう独占禁止法)に抵触するため、EMI音源、そしてその傘下にあったヴァージン・レコードのクラシック部門であるヴァージン・クラシックスの音源がワーナー・ミュージックに流れることになった。
EMI時代の音質はよくなかったが、ワーナーに買われて以降はリマスタリング技術向上により音質が良く改善しているように思える。
旧テルデック (Teldec)
ドイツのウルトラフォンに端を発す老舗レーベル。古くからメンゲルベルク、エーリヒ・クライバー、カイルベルトなどの巨匠の録音を残しており、戦後はアーノンクール、レオンハルトなど古楽演奏者とも契約していた。
エラート (Erato) (旧ヴァージン・クラシックス (Virgin Classics)を含む)
フランスで設立されたレーベル。古楽に力を入れており、パイヤール、コルボ、マリー=クレール・アランなどバロックを得意とするフランスの演奏家の音源を多く残している。
なおEMIの音源をワーナーが買ったときに、ヴァージン・クラシックスおよびEMIフランスのレーベルはこちらのエラートに吸収されている。
X5 Music Group
スウェーデンに本拠地を置く、クラシック音楽のデジタル配信を行っているレーベル。個人的にこの記事を書いた理由その1といえるほど紹介したいおすすめレーベル。
ここの「Rise of the Masters」、「The 99 Most Essential」シリーズは100(99)曲1000円台という安価な値段で有名な作曲家やジャンルの曲を聴くことができるので超おススメである。また、作曲家の名曲を集めた「Masterwork」シリーズも必聴である。もちろん音楽配信アプリでのストリーミング視聴もできる。また、ゲーム音楽にも力を入れているのが個人的におススメ。
ナクソス系列 (Naxos)
上記したユニバーサル、ソニー、ワーナーの3大メジャーレーベルと違ってクラシック音楽を聴かない方は一生お世話になることが無いレーベルであるが、しかしクラシック音楽を聴く方は絶対知っておかなければならないレベルで超有力レーベル。着実に実力を伸ばしており、数々の有名レーベルを買収し、今やクラシック音楽において3大メジャーレーベルに匹敵する実力となった。
ナクソス・レコーズ (Naxos Records), マルコポーロ (Marco Polo)
香港に拠点を置くナクソス社のメインレーベル。1982年、87年にドイツのクラウス・ハイマンと日本の西崎崇子が共同設立したこの2レーベルは、「有名でないが実力のある演奏家を起用した良演奏」、「クラシックのレア曲演奏」を2大基軸に、非常に安価で非常に高音質、そして非常に幅広いレパートリーの録音を販売している。
また、戦前~終戦直後の歴史的録音のリマスタリングCDを「ナクソス・アーカイヴス」シリーズとして販売していたりするが、正直録音年代もあってこちらはあまり音質が良くない。
何よりすごいのはYouTubeでの無料配信や、音楽配信サービスでストリーミング視聴できるのはもちろん、自身でクラシック音楽試聴のサブスクサービス「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」を提供している点である。ここまでくるともう脱帽というほかない。
さらにクラシックになじみのない初心者向けの入門コンピレーションも多く配信している。
個人的には「TOP50!」シリーズと「あにくら!1990s-2010s」のコンピレーションは名作だと思っている。
オルフェオ (Orfeo)
ドイツに本拠地を置くレーベルだが、ここは数々の伝説的放送音源を多数所有しているのが強みである。カルロス・クライバー、クーベリック、フルトヴェングラーなどのレジェンドが演奏した伝説的演奏を多数販売している。CDの値段はまずまず。
SWR Klassik
東西ドイツ放送のレーベルで、ギーレン、シューリヒト、ノリントンなどの録音を残している。
カプリッチョ (Capriccio)
エームス・クラシックス (Oehms Classics)
共にドイツの有力独立レーベルだが、ナクソス傘下に入った。
オンディーヌ (Ondine)
フィンランドに本拠地を置くレーベルで、やはりシベリウスをはじめとするフィンランドの作曲家、演奏家に強い。ベートーヴェンやバッハなど、有名どころも押さえている。ここもナクソス傘下に入った。
ダイナミック (Dynamic)
オーパス・アルテ (Opus Arte)
それぞれイタリアとイギリスのクラシック映像会社。両方ともオペラの映像に定評があり、有名オペラからマイナー演目、またバイロイト音楽祭などの名録画も残している。
日本の有名レーベル
クラシック音楽においては日本はアウェイだが、レーベルにおいては一線級で活躍しているレーベルも多く、日本でクラシック音楽を買うならぜひ知っておくべきなので特に代表的なものを紹介する。
日本コロムビア
J-POP業界を古くから牽引してきた会社であるが、クラシック音楽でも実力は十分。
デノン (DENON)
日本コロムビアのクラシック音楽におけるメインレーベル。ここの何よりの特徴は、インバルやスウィトナー、有田正広といった実力陣の名演奏が格安で買えてしまう点である。CD一枚のコスパの良さは正直こことナクソスが最強だと思う。ストリーミング配信ももちろんしている。
また意外なところでいうと、大河ドラマ『黒田官兵衛』など数々のドラマや『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズなど数々のアニメの劇伴を担当している菅野祐悟作曲の交響曲録音もこのレーベルから販売されている。
キングレコード
声優が毎回変わる某クソアニメ、アニソン、演歌、ジャズに定評のある日本大手の音楽会社であるが、クラシック音楽でも実力のある会社である。
ここでは米良美一、西本智実、山田和樹など日本の有力演奏家のプロデュースに力を注いでいる。
キングインターナショナル
キングレコードの関連会社で、主に海外のCDの卸売りをしている。クラシック音楽の海外マイナーレーベルの日本販売の多くはここが取り扱っており、それだけでこの会社がいかにすごいかがわかるが、このキングインターナショナル自身もCDや映像を販売している。個人的には最晩年のクレンペラーによるベートーヴェン交響曲全集録音が凄く気になる。
エイベックス・クラシックス
J-POPの大御所であるエイベックスだが、2011年に当レーベルを設立して以降はクラシックにも力を入れている。このレーベルはクラシック音楽の聴取者層を増やすのに尽力している節があり、具体的には辻井伸行や佐渡裕などクラシック音楽に詳しくない方でも知っている演奏家の録音を積極的に取り上げたり、大河ドラマや映画ドラえもんのサントラアルバムを作成したりなどの行動をとっている。
ただ、なにより自分がお勧めしたいのはここが販売している「100曲クラシック」「100曲ピアノ」「100曲モーツァルト」の3アルバムであり、この3つはクラシック音楽入門に最初にぜひ聴くべきものであると断言できる。このアルバムはこの手の入門用コンピレーションにありがちなカットもなく、しかもどの曲も良演奏、良音質である。これを聴かない手はなかろう。
オクタヴィア・レコード
エクストン、トリトン、クリストン
もともとポニーキャニオンでCD制作に関わっていた江崎友淑氏が立ち上げたレーベル。朝比奈隆、小林研一郎、飯森範親、井上道義など日本の演奏家による演奏を取り上げている。なんとジブリ音楽で有名な作曲家、久石譲が指揮したベートーヴェン交響曲全集なんかもある。ただここ、CDの値段は結構高め。ストリーミング配信の種類次第では一部の曲が聞けなかったりする。
カメラータ・トウキョウ
フィリップス・レコードでレコード制作にあたっていた井坂紘氏が立ち上げたレーベル。オーストリアのアーティストを多く揃えている。
このレーベルの特徴といえば、ルドルフ大公のクラリネット曲集やチェルニーの『48の前奏曲とフーガ』など、一風変わった世界初録音が多い点であろう。音質もよい。CDの値段は独立系レーベルの割にはそれほど高くない。ストリーミング配信対応。
アルトゥス
主に日本での来日公演を扱うレーベル。ムラヴィンスキー、マタチッチなどの貴重な演奏が聴ける。ただCDが高いうえに、こちらのレーベルはストリーミング配信対応ではない。
絶対知っておきたい廉価版レーベル
ここではクラシック音楽を格安で、かつ良音質で提供するレーベルを紹介する。正直この記事を書く目的の半分ぐらいここであるというほどぜひ知っておいてほしい。やはり特にこだわらない場合においてコスパは最も重要。
エーデル系列 (Edel)
ドイツに本拠地を構える独立系レーベル。最強の廉価レーベルであるブリリアント・クラシックスと旧東ドイツの音源を多く抱えるベルリン・クラシックスを配下に持つ。
ブリリアント・クラシックス (Brilliant Classics)
https://www.brilliantclassics.com/
オランダを本拠地とする廉価版レーベル。ここは何といっても良音質の音楽集を破格の値段で売るバジェット・ボックスの販売に長けており、特に各作曲家の全集シリーズのコスパの良さは最強で、バッハやモーツァルト、ベートーヴェンの全集が1~2万円台で手に入る(CD1枚当たり100~200円台)のである。演奏家も一流の演奏家ぞろいで、正直全集を買いたいならまずここから当たれと言っても過言ではない。ストリーミング配信も積極的。
最近は名作曲家の「100 best」シリーズも発信しており、この手のシリーズでは珍しくカット無しで、iTunesでも1000円ちょいで買える。ヤバい。
また、YouTubeの配信も積極的で、高音質の音楽を無料で垂れ流ししているという「公式が病気」「振り込めない詐欺」っぷりを存分に発揮している。いいぞもっとやれ
ベルリン・クラシックス (Berlin Classics)
旧東ドイツ唯一の国営音楽レーベル「ドイツ・シャルプラッテン」のクラシック部門「エテルナ (Eterna)」の跡を継ぐレーベルであり、ケーゲル、マズア、スウィトナー、ブロムシュテットなど旧東ドイツの指揮者の名演を多く残す。また新録音も取り上げており、ケント・ナガノらがこのレーベルに録音を残している。新録音の価格はそこそこでストリーミング配信対応。ここが出しているバジェット・ボックスも結構安くおススメ。
個人的にはここが出しているマズア指揮のメンデルスゾーン『最初のワルプルギスの夜』は超かっこいいのでクラシック音楽に興味ない人もぜひ聞いてほしいと思っている。
ヘンスラー/プロフィル (Hänssler/Profil)
ドイツを本拠地とする独立系レーベル。一度プロフィルがヘンスラー(教会音楽のレコード会社)から独立して、その後ヘンスラーの音源の一部をプロフィルが買い戻したため、プロフィルのロゴがあるCDとヘンスラーのロゴがあるCDの両方があるがそこは気にしない。
リリングのバッハ全集やギーレンのベートーヴェン交響曲全集、変わったところではC.P.E.バッハ全集など、全集に力を注いでいる。また日本の輸入代理店の要望を取り入れており、日本のファン向けの録音にも注力している。CDの価格が安く、音質もこだわっている。南西ドイツ放送交響楽団(SWR)の録音もここが取り扱っている。
アルト (alto)
アメリカに拠点を置くミュージカル・コンセプツ社によるクラシック音楽・ジャズの廉価版レーベル。クラシック音楽ではリヒテルやグールド、ロストロポーヴィチなどの隠れた名盤を取り上げている。廉価版レーベルだけあってCDの価格はかなり安い。ストリーミング配信も対応している。
カウントダウン・メディア (Countdown Media)
メヌエット・クラシックス (Menuetto Classics)
ドイツに本拠地を置くベルテルスマンは、2008年にその音源のほとんどをソニーに引き渡したが、そこから新たにベルテルスマンはBMG Rights Managementという音楽部門を再度設立した。そこの子会社であるカウントダウン・メディアの1レーベル、メヌエット・クラシックスがこの会社のクラシック音楽部門なのだが、ここが提供する「Essential Works」「111 Masterpieces」シリーズが、「有名作曲家の名曲」を「良音質」「カット無し」でまとめ挙げられており、クラシック音楽入門において最高のシリーズなのである。レパートリーも、ベートーヴェンやモーツァルト、ショパンなどの王道から、モンテヴェルディ、ストラヴィンスキー、ヴォーン・ウィリアムズなどの重要だがマニア向けの作曲家についてもこのシリーズで取り上げており、「新たな作曲家を知るにはまずここから」といってもよいであろう。この記事を書いた目的の70%以上がこのレーベルである。計算が合わないとか言わないで
フェルマータ (Fermata)(旧 Membran)
かつてドイツを拠点とする廉価レーベルであったメンブラン(Membran)から販売されていたCDボックスを再販しているチェコの会社。
クラシック・ジャズ・ポップスに関わらず古い音源のバジェット・ボックスを格安で販売する。
メンブランからの販売が終了しており、しばらく入手が困難であったが、2024年にフェルマータから復刻再販されてきている。
クラシックではグルダ、ホロヴィッツ、ヴァルヒャなどの名演がボックス販売されている。ダウンロード販売は対応しているがストリーミング配信には非対応。
ちなみに話はずれるがジャズにおいては、大手のEMI音源(ブルーノートがEMI傘下)がユニバーサルに残ったことで多くの音源がユニバーサルミュージックにあることからCDバジェットを出版しているところが非常に少ない。なので伝説のジャズアーティストのCDボックスを販売しているこの会社は、ジャズ愛好家にとっては非常に貴重な存在である。
ハリドン・ミュージック (HALIDON MUSIC)
イタリアに本拠地を構える廉価版レーベル。ここの特色は何といってもYouTubeで無料のコンピレーションアルバムを配信しまくっていることである。再生数も多い動画だと1億回を超える化け物っぷりを示している。
なお、デジタル・アルバムを自身のサイトで販売しているが、こちらも結構安くて良音質。
実力ある独立系レーベルたち
ここからは一定の評価を得ている独立系レーベルについて取り上げる。
アウトヒア・ミュージック系列 (Outhere Music)
ベルギーに本拠地を構えるクラシック・ジャズ音楽のレーベル。
アルファ (Alpha)
チャンネル・クラシックス (Channel Classics)
リン・レコード (Linn Records)
それぞれフランス、オランダ、スコットランドに拠点を持つが、共通して高音質であることが挙げられる。しかもストリーミング配信に完全対応しており、iTunesやSpotifyの有料会員に登録していたら聞き放題なのもすごい。他の会社も見習うべき音楽に熱心な会社である。
BIS
スウェーデンを拠点とするレーベル。ここは何といっても日本が誇る古楽器指揮者、鈴木雅明と手兵バッハ・コレギウム・ジャパンの録音が目玉である。CDは値が少し張るが、鈴木氏とともにより躍進してもらいたいレーベルである。ストリーミング配信で視聴可。
シャンドス・レコーズ (Chandos Records)
イギリスを拠点とする、独立系レーベルでは古い歴史を持つレーベル。ここはやはりエストニアの指揮者ネーメ・ヤルヴィの膨大なレパートリーを抱えているレーベルとして有名である。その他も多くの演奏家を抱えており、レパートリーはかなり広い。ストリーミング配信も〇。
セントール・レコーズ (Centaur Records)
アメリカ最大の独立系レーベル。アメリカの数多くの演奏家を抱え、中世から現代音楽まで非常に幅広いレパートリーを誇る。音質もよく、また変わった曲も取り上げている。ストリーミング配信もしている。
ハルモニア・ムンディ (Harmonia Mundi)
本拠地はフランス。ドイツ・ハルモニア・ムンディとは別会社だがもともとは志を同じくしていた。やはりここは何といっても古楽で圧倒的評価を得ており、名盤メーカーのイザベル・ファウストをはじめパブロ=エラス・カサド、ロト、ヤーコプスなど圧倒的実力派が勢ぞろいである。CDの値段はかなり高いが、ストリーミング配信をしており、Spotifyなどで聴取可能。
CPO
ドイツを本拠地とする音楽小売業者jpcが持つ独立系レーベル。古楽から現代までのマイナー作曲家、マイナー曲の発掘に定評があり、E.T.A.ホフマンの『愛と嫉妬』やレイハの『36のフーガ』など、歴史的価値のある世界初録音が多い。音質もGood。CDの価格は少し値が張る。ストリーミング配信もしている。
クラーヴェス・レコーズ (Claves Records)
スイスを本拠地とする独立系レーベル。古楽から現代まで、スタンダードなレパートリーから、ハープ音楽集などの一風変わったレパートリーまで幅広くカバーしている。音質もなかなかこだわっており、YouTubeで視聴できるうえにストリーミング配信もしている。
個人的にはこれすき
ナイーヴ (naïve)
フランスを拠点とする、古楽を重点的に取り上げているレーベル。ここの特徴といえば、何よりヴィヴァルディ全集を完結させようと録音を頑張っている点である。CDの価格はそこそこ。ストリーミング配信に対応。
ペンタトーン (Pentatone)
フィリップスの技術者によって設立された、オランダを本拠地とする独立系レーベル。音質に非常にこだわっていることで知られる。このレーベルの名演といえば何といってもヤノフスキ指揮のワーグナー・オペラ全集である。
高音質+名演の超名盤が、iTunesでなんと計4200円弱で購入できるのは破格である。ヤバすぎ。
スプラフォン (SUPRAPHONE)
チェコのレーベルで、もともと社会主義時代のチェコスロバキアの国営レーベルだった。やはりスメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェクなどのチェコの作曲家やノイマン、スークといったチェコの演奏家に定評がある。録音技術も定評があり、私営化後もダウンロード販売やストリーミング配信に積極的である。CDの価格はまずまず。
オーケストラ・ライブ系レーベル
ここではオーケストラが自費出版しているレーベルを紹介する。
ベルリン・フィル・レコーディングス (Berliner Philharmoniker Recordings)
いうまでもなく世界最高峰のオーケストラであるベルリンフィルのレーベル。当然録音している音楽も名演ぞろいで音質もすごい。ライトユーザーに対しては音楽配信サービスで音源を聴くことができるようにし、ハイエンドユーザーに対してはブルーレイ&ハイレゾ音源のセットを1組1万円以上の価格で販売するという幅広い層の需要に応えており、販売戦略についても超一流である。さらに有料サブスクサービスで自オーケストラの高音質・高画質映像を視聴することができ、まさに至れり尽くせりが過ぎるスーパーレーベルである。YouTubeでさわりの部分だけ視聴可能。
ベーエル・クラシック (BR Klassik)
ドイツのバイエルン放送が提供するレーベル。クーベリックやヤンソンスなど一流指揮者によって育成された世界トップクラスのオーケストラであるバイエルン放送交響楽団(BRSO)を筆頭に、バイエルン放送合唱団、ミュンヘン放送管弦楽団が演奏した録音を残す。CDの値段もそれほど張らず、ストリーミング配信で色々聴ける。当然ながら演奏は高水準でしかも高音質。
LSO live
イギリスを代表するロンドン交響楽団が提供するレーベル。様々な客演指揮者の名演を高音質で残しており、ファン垂涎の出来である。元ベルリンフィルの首席指揮者であるラトルが音楽監督に就き、その後にオペラや交響曲に力を注ぐパッパーノが首席指揮者に就任したことでますますレパートリーは充実したものになりそう。CDの値段はそこそこ。ストリーミング配信〇。YouTube進出にも積極的。
RCO live
世界トップクラスのオランダの看板オーケストラであるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)が世に放つレーベル。首席指揮者であるヤンソンスやハイティンクの名演を中心に、幅広くレパートリーを残す。CDの値段はやや高め。ストリーミング配信〇。こちらもYouTube配信に積極的。君明らかにLSO意識してるよね・・・
Soli Deo Gloria
https://shop.monteverdi.co.uk/shop/
イギリスが誇る古楽器演奏のパイオニア指揮者でありプッチ神父の推しであるジョン・エリオット・ガーディナーによる独立系レーベル。名盤メーカーであるガーディナー氏だけあって名盤ぞろいであり、バロック以前の古楽のみならず古典派・ロマン派もピリオド・アプローチで幅広く録音している。CDの値段はやや高め。ストリーミング配信もしている。
オランダ・バッハ協会 (Netherlands Bach Society)
オランダに設立された、大バッハの音楽を古楽器で演奏することを目的とした団体。佐藤俊介など、日本人演奏家を積極的に起用している。YouTubeに録音を無料公開しており、誰でもバッハの曲に触れることができる。
不滅の名演保存系レーベル
ここでは過去の巨匠の名演を高音質でリマスタリングして販売するレーベルを紹介する。
テスタメント (Testament)
イギリスを本拠地とする独立系レーベルで、クレンペラー、トスカニーニ、バルビローリ、デュ・プレなど往年の巨匠演奏家による歴史的名演のリマスタリングを売りにしている。CDの価格はかなり高く、また最近は廃盤も増えてきている。ストリーミング配信に対応していないのが痛い。
アウディーテ (audite)
ドイツを本拠地とし、クーベリックやフルトヴェングラーといった巨匠の名演のリマスタリングを売りにしているレーベル。また新規録音も積極的に取り上げており、音質もこだわっている。CDの値段はまずまずで、ストリーミング配信対応なのがアツい。
ウラニア・レコーズ (Urania Records)
イタリアに拠点を置く独立系レーベルで、カラヤンやトスカニーニといった巨匠の秘蔵名演のリマスタリングと新録音の両方で売り出している。CD価格はそこまで高くなく、ストリーミング配信に積極的。
個人的には以前ベルリンフィルから自費出版されていたが長らく絶盤となっていた、ベルリン・フィルハーモニーこけら落としでカラヤンが指揮したベートーヴェンの交響曲第9番 (「フィルハーモニーの第九」とでもいおうか)がここからリマスタリングされて販売されたのが衝撃的であった。この演奏、カラヤン指揮の第九において問題となりがちな合唱パートが最高クラスに整っており、オケの方にも演奏に力が入っており、カラヤンの第九の決定盤といっていい出来なので、是非聞いてほしい。
クラシック音楽の映像レーベル
ここではクラシック音楽の映像制作に尽力しているレーベルを取り上げる。
アルトハウス・ムジーク (Arthaus Musik)
ドイツに本拠地を置く映像レーベル。オーケストラ演奏、オペラ、バレエ、、音楽ドキュメンタリー、ジャズと幅広く取り上げているのが特徴。
シー・メイジャー (C Major)
https://www.cmajor-entertainment.com/
ドイツに本拠地を置く映像レーベル。オペラ映像に力を注いでおり、ヴェルディのオペラ全集『Tutto Verdi』などで知られる。コンサート、バレエの映像も充実している。
ユーロアーツ (Euro Arts)
ベルリンに本拠地を構える映像レーベルの老舗。コンサート映像を活動の中心としており、過去の巨匠による名演の映像を数多く残す。なんとYouTubeでいくらかを無料公開している。すげえ。
ドイチェ・ヴェレ (Deutsche Welle)
ドイツの公共放送で、YouTubeにてクラシック音楽の演奏を無料公開している。
最後に
ざっくりまとめるつもりであったが、1万字以上の記事となってしまった。しかしながらまだまだ紹介したいレーベルが存在し、今回取り上げたのはその中のほんの一部に過ぎない。またクラシック音楽のレーベルは自主レーベルが多い分、数えられないくらい非常に多く存在する。このことはクラシック音楽が好きな人々、後世に残したい人々が一定数いることの何よりの証拠であると感じた。
ちなみに読んだ方で気づいた人もいるかもしれないが、この記事を書くにあたって音楽之友社から出版された『クラシック・レーベルの歩き方』を非常に参考にさせていただいた。ここで取り上げられていないレーベルも数多く取り上げているので、この記事を読んでクラシック音楽のレーベルに興味を持った方は是非お勧めする本である。
最後に、この記事を読んでよいと思った方はいいねと読者登録、マガジンの登録をお願いしたい。めったに更新しないけど、こんな感じの記事をまた書く、かも・・・(確証はできないですごめんなさい)