子どもたちが職員会議で企画提案をするまで~目的思考の練習~
”任せる”は、不安との闘い。その不安は、未知がゆえの不安。
大丈夫、環境と方向性の修正さえできれば、失敗はない。
人の成長は、人の想像を超えるから。
さて、今回より題名を少しアレンジしました。
「指導の引き出し」よりも、もう少しわかりやすく。
そもそも「マガジン」化しているので、ならば…です。
以前の内容もぜひご覧ください。少しでも参考になればです。
とある通信制高校の学習センター長だったときの話。
高校3年生は、人によっては既に進路決定をしている12月ごろから今回の話は始まります。
「enya先生、ちょっと話を聞いてほしいんですけど!」
職員室の前で男子生徒が2人。2人とも総合選抜型入試で大学進学が決まった生徒。たいてい雑談の可能性が高いので、「また今度は何の話だ?」と思いながらも、個別の面談室に連れていく。
「卒業の想い出として、何かイベントをやりたいです!」
お、予想外の展開。
こういう展開になると、私も身を乗り出して話を聞きたくなります。
その想いは”自分のため”ではなく”他者のため”
そこで詳しく話を聞いていきます。
これ、笑うしかないですよね。見事な交渉術でした。
(後日談で、即、私にまず話をしようという結論になったとのこと(笑))
方向性は問題なし。
ですので、せっかくなので私が今まで子どもたちに経験させてないところまで挑戦をしてもらう機会にすることにしました。それがこちら。
ではイベントの運営・実施に向けて、動き始めてOK!
ただし、改めてその目的や、実施方法、スケジュールなども含めて、他の先生たちにも協力を仰げるように
①企画書を作成しよう
②それを職員会議で、時間をあげるから提案してみよう(プレゼンする)
子どもたちの目が輝きました。それと同時に緊張も走りました。
企画書…?作ったことないですよ…?
え、職員会議に生徒が入っていいんですか?
こんな成長できる場面はありません。
『企画書の作り方は、フォローするから、まずは仮案を調べながら作ってごらん。そして、職員会議に関しては、会議の最初の30分間あげるから、そこで発表して、先生たちの意見も確認してみよう。』
『ただし!これだけは絶対にズレないようにしよう。
それは、今回のイベントは”何のためにやるのか?という目的を明確に。「高校生活の想い出になる、全員参加できるイベント」これは忘れずに』
さて、ここから彼らの闘いが始まりました。
何度も陥る袋小路。なぜそこに陥るのか。
企画書を作るということは、イベントのほぼ全容を想定しつつ、内容を固めていく企画会議が必要になっていきます。
素晴らしいのは、私が招集するまでもなく自分たちでイベントの委員会のように人数を集めて、打ち合わせを開始したこと。
やはり子どもたちは自ら動ける。
信じて、任せてみる。上手くいかなければ、修正のサポートをすればいい。
ところがやはり人数が集まれば、集まるほど、意見の相違は起こるもの。
ある程度の段階で、ヘルプの声が上がってきました。
『一度、企画会議の方に入ってもらえませんか?まとまらなくて…』
『OK!オブザーブとして入るけど、基本的に意見は言わないよ?』
さて当日…実際に集まっているのは、8人程の精鋭たち。
いつのまに書記やら、資料作成担当やらが決まっていたんだ。
素晴らしい。
そしてイベントの中身についての話し合いが始まります。
「…これを対戦形式にしたら、盛り上がるんじゃない?」
「先生たちも参加できるように、種目を増やそう!」
「保護者の人たちにも見えやすいように会場の設定を…」
おお、闊達な議論が展開されている!…でも、確実に…陥るな。とすぐに感じました。ある程度、話し合いが進んで、袋小路に陥りかけたときに、一言だけアドバイスをしました。
「一回、整理のためにホワイトボードに、イベントの”目的”を書いて」
そして「それが、全員の共通認識になっているか、確認しよう」
『改めて、この言葉の一つ一つをすり合わせてみようか
じゃあ、まずは…「全員参加」って誰でしょう?どこまで?』
全員、ハッとした顔になります。そうかここを忘れてた!
更に
『「全員参加”する”」じゃなくて、「全員参加”できる”」ということはどういうことだろう?』
『あとは…「高校生活の想い出になるイベント」って、どういうイメージを共有出来ているかな?』
私からの問いかけは以上でした。
大事なのは、結果ではなく「プロセス評価」
限られた時間の中で、先ほどの問いかけに答えられるような企画案の構築は難しかったことと思います。
しかしここで一番考えてほしかったのは、
「イベントをやること」が目的にならないようにすること。
あくまでもイベントの実施は、『手段』であって、本当の『目的』はなんだったか、私に伝えてきた当初の”あの想い”は何だったかを見失わないでほしいということでした。
その後、議論は方向性を取り戻し、具体的な内容を固めて、企画案の作成にこぎつけることが出来ました。
※ここの企画案作成から職員会議での発表にもエピソードがあるので、また次の時にお伝えします。いわゆる『プレゼンの作法』です。
最終的にイベントは無事に実行され、普段顔を出さない生徒も、呼ぶことができ、ある程度の人数を集めたイベントとして成功を収めました。ただ、勿論、課題も多く残りました。
数名の生徒からは、
…もう少しよくできたのではないか?
…こうすればよかったのではないか?
反省とも後悔ともとれる、振り返りがありました。
その中で、
全員が本気で考えたこと、それを実行しようとしたことが、まず実は「高校生活の想い出」なのではないか?
という振り返りをした生徒がいました。
もう彼らは「免許皆伝」です。
プロセスの振り返りも出来ている。
『…でもenya先生のあの問いかけは、正直あのタイミングで言われて、一番しんどかったし、若干ムカついた(笑)』
うん、やはり「免許皆伝」は取り消しです(笑)
ただ”目的思考”ということを忘れずに、ズレそうになれば修正をしてあげる。このプロセスを踏むことで、子どもたちは自ら、そのプロセスを評価することが出来るし、本気で考え抜くことが出来る。
改めて、人を動かす、成長を促進させるには
「問いの立て方」が大事
ということを学んだ話でした。
このプロセスを踏んだ彼らは、その経験を他の場面でも活かすことが出来るでしょうし、立ち止まることも経験として積むことが出来たことと思います。
さて、この子たちが緊張の中で、職員会議で企画プレゼンをする話は、また次の引き出しにてお話をしたいと思います。
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