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「ビキニ農法の成功と失敗」 vol.38

サイハテ村開村から5年目の2016年は、LIGでサイハテ村通信の連載などエンターテイメント性を重視して活動するフェーズとなった事で、エコビレッジ戦略的にも変化が生じた年となりました。

と言うのは、閉鎖的であった第一フェーズでは、コミュニティの核となる世界観や「ルールやリーダーがいない」「お好きにどうぞ」などの主格的な性格形成が行われ、第二フェーズでは村の基盤を作るためにクラウドファンディングを活用する事で、村づくりを村外へと開放させ経済的自立や環境改善などの土台作りが行われました。

そして、第三フェーズではエンターテイメント性を高める事で関係人口の幅を拡げサイハテ村の魅力を高めたのです。

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これは既存のエコビレッジ運営には前例のないことで、破綻するリスクも伴う選択でしたが、 2021年現在のサイハテ村のブランディング要素である、独自性、ナナメ上の発想力、ユーモア性などに繋がる大きなきっかけになりました。

ただ、いつも成功していたわけではありませんし、どちらかと言うと想定以上の反響を得た企画はほとんどなく、企画後はいつも「何がいけなかったか」「次はこんな表現を試してみよう」と反省ばかりしていました。

そんな中、成功と失敗を両方味わった珍しいケースもありました。エンターテイメント性を高めていた第三フェーズ初頭、2016年の春のことです。

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開村時から作りたいことの一つだった稲作が、麓の区⻑さんの計らいもありサイハテ村の近所で田んぼを貸していただけることになったのです。

村づくり、エコビレッジ的に〝米作り〟は自給自足の要であり王道コンテンツです。「無農薬、無化成肥料の米作り」を謳い文句に自然や身体に優しい自然派コンテンツは、万人に支持されるだろうし、サイハテ村のイメージアップにもなるでしょう。

はたまた、「機械を使わずに、手植え、手刈りの天日干しの米作り」を謳い文句に手仕事の暖かさや人間味を打ち出す、人情派コンテンツも面白いストーリーが描けそうです。

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コミュニティマネージャー的には、どんな脚色をし発信すれば米作りを通してサイハテ村に興味を持ってもらえるか、稲作文化に関心を持ってもらえるかの最適解を考えるわけです。

ですが、無農薬、無化成肥料なのか、機械を使わずの手植えで田植えストーリーなのか、当日になっても具体的な表現は決めきらないまま、田植えが始まってしまいました。

と言うのも、自然派コンテンツも人情派コンテンツも間違いようのない完成形であり、王道ストーリーですが、どこかで散々観てきたストーリーであり、今までのエコビレッジシーンと変わらないものだったからです。

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答えが出ないまま悩んだ僕は、思いきってふんどし一丁で田んぼに飛び込みました。そして、ふんどし姿で田植えをする勇姿をSNSで投稿したのです。

すると、今までにないほどの〝いいね〟やシェアが集まった のです!もしかしたらみんなも新しいストーリーが観たいのかも知れない、そう思った僕はサイハテ村の住人LINEでこう呼びかけました。

「ふんどしで田植えした投稿がバズってます!ただ、同じことを二日目にやってもインパクトに欠けると思うんです、、そうだ!誰か〝ビキニ〟を着て田植えしてくれませんか?!絶対ウケると思うんです!」

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サイハテ女性陣は「〇〇ちゃんスタイル良いじゃん!」「私はもう子ども産んで見せられるような身体じゃ。。」とか「ビキニ持ってないし〜。」とひと盛り上がりして沈黙。

言い出した手前引くにも引けず、何を間違えたかヒゲ面の僕がビキニを着ることになりました。

「きっと大丈夫。」そう自分に言い聞かせながら、生まれて初めてのビキニを装着。ムダ毛の処理もしないで身につけたビキニからは、大量のマリモのようなモノが行き場を無くしフワフワと溢れかえっていました。

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僕は必死にマリモを押し入れ平静を装いましたが、それを見ていた当時6歳の息子はドン引きして泣いていました。「ナニをやっているんだろう?」そんな言葉が何度か頭をよぎりましたが、これはサイハテ村のためだ!と自分に言い聞かせました。

今思うとなぜそこまでビキニが「村のためになる!」と思えたのか不思議でなりませんが、有機農法や自給自足の正しさ的な文脈は一切出さず、『これからの田植えは〝ふんどし&ビキニ農法〟だ!』と題した、田植え投稿は多く人にシェアされ、

「田植えってこんな楽しいんだ!」「サイハテ村に行ってみたい!」と多くの反響を得ることに成功したのです。その後しばらく「ビキニの人」と呼ばれることにはなりましたが、サイハテ住人のモチベーションも高まり、これは成功コンテンツと言っていいモノになったと感じていました。

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そうして迎えた収穫の時期、初年度ながら300kg程のお米を収穫することが出来たのです。分配方法については、沢山作業をした人からほとんど作業をしなかった人までバラバラだったため、サイハテ住人で考案した〝三等分配制度〟を採用しました。

収穫したお米の3分の1である100kgはサイハテ住人で平等に分けるコミュニズム的分配。もう100kgは、田植えや草むしり、収穫作業などにワークログを付けて記録し、働いた時間に対して分配されるキャピタリズム的分配

もう100kgは、稲作に必要な経費や備品購入などの資金を作るための販売用にし、運営費にすることにしたのです。

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となれば、ただ販売するのではなく、クラウドファンディングを使って稲作のPRも含めて販売することにしました。タイトルは「ビキニで田植え?!サイハテ村の愛情たっぷりのお米を食べてみませんか?

限定72セットのリターン品を購入(支援)して頂くことで、米作りに必要な活動資金を調達したい!というものでした。

SNSではふんどしやビキニ姿に沢山の〝いいね〟やコメントをもらっていたので、クラウドファンディングのプロジェクトページトップ画像にも僕のビキニ姿の写真を使い、満を辞して公開したものの結果は想定外の大失敗。支援総額は35,000円、8セットしか購入してもらえませんでした。

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失敗の要因はふたつ、冷静になって考えてみると「おっさんのビキニ姿」と「食品」の相性が最悪だったということ。アイドルならまだしも誰の食欲が増すと思ったのか過去の自分を問いただしたい気分です。

そう思うと、〝米〟をイメージしたロゴマークも肛門に思えてきたりして、とにかく食品としてのブランディングはツメが甘かったと言うしかありません。もう一つはクラウドファンディングという〝誰かの夢を応援する〟という性質上、おちゃらけた感じの企画は支援されにくいということ。


一つのコンテンツで成功と失敗を両方味わうことは稀ですが、どちらにしても学ぶことが多い企画だったと思いますし、いつかグラビアアイドルを呼んで質の高いのビキニ米を売り出したいと考えています。


次回は、vol.39「動く家?モバイルハウス!」です。フォロー、スキ、シェアしてくれると励みにります!^ ^


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