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予定のない休日に、1歳の息子と公園へ

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。

今回のテーマは「#日記」です。


ゆっくりめの起床

7時過ぎに目を覚ます。今朝は息子がよく寝ていたようで、いつもより遅い起床だ。ふだんは早ければ5時、遅くとも6時ごろには起き出して「あー、うー」と空腹をうったえる。

まだ意味のある発語がなく、ひょっとして発達の遅れかしら、とちょっぴり気になり始めた息子は1歳7か月。(厚労省の資料によれば、1歳半までには9割の子供が何かしら単語を話すのだそう)

朝ごはんや食器の片付け、洗濯物などの家事を終えて、ひと段落着いたのが午前9時ごろ。

何をしようかとすこし迷う。

今日は、とくに予定が入っていない。息子の予防接種もなければ、妻の美容院もない。私のカウンセラー関連の研修などもない。家族のだれにも、なんの予定もない週末は、ずいぶん久しぶりな気がする。

息子が生まれ、妻が仕事に復帰し、私が産業カウンセラーの資格取得を目指し始めてから、土日は何かしら予定が入るのが常になっていた。

フリーランスで働いている身としては、こういう何もないタイミングで仕事を進めておけるとずいぶん楽になるのだが……。

すこぶる不機嫌な息子


「あ゛ー!!」

朝ごはんを食べ終えたあたりから、あいにく息子の機嫌が悪い。幼児の本気の声は、耳に響く。

息子は、土日に不機嫌になることが多い。平日は保育園で発散しているのだろうか。あるいは、単に週末は一緒にいる時間が長いから、機嫌の悪い時間が多く感じるだけかもしれない。

とにかく、こうなると仕事を進めるのは難しい。息子を妻に任せて仕事することも不可能ではないが、彼女も平日の仕事で疲弊している。無理に仕事をしても、家族にとっていい結果にならない。

早々と見切りをつけ、気持ちを切り替える。思い切って外へ連れ出そう。元気が有り余っているなら、さっさと疲れて寝てもらおうというわけだ。

決まれば早い。妻と代わるがわる息子の不機嫌をあしらいつつ、それぞれ着替えなどを済ませる。そうこうして家族そろって家を出るころには、さきほどの不機嫌が嘘のようにニコニコだ。今泣いた烏がもう笑うとはこのことか。

近所の公園へ

車で10分ほど行ったところに、すこし大きめの公園がある。そこらじゅうにベンチがあり、同じくそこらじゅうに生える木々が日差しを遮る。遊具は大きめの児童用と小さめの幼児用の2種類。お年寄りの運動不足解消グッズも各種取り揃え、端の方には野球場まである。

野球場とは反対側の端にある砂場で遊び始めると、子供の声が遠く聞こえた。一人や二人ではない。たくさんの人の声。思わず顔をしかめる程度には大きな音だ。

そういえば、駐車場で大きなバスを見かけた。そして声が聞こえてくるのは、野球場があるほうだ。なるほど、少年野球の応援の声か。人のまばらな静かな公園に、まだ声変わりしていない高い声がよく響く。理由がわかってしまえば、そんなにうるさく感じない。不思議だ。

気を取り直して、砂場でもくもくと遊ぶ息子に注意を戻す。

砂遊びをしている最中、息子はあまり笑わない。楽しくないのかと不安になるが、不機嫌そうに泣いたり叫んだりしないということは、嫌なわけではなさそうだ。集中しているのだろう。

自分に当てはめて考えてみると、わかりやすい。本を読んでいるときに終始笑っているかというと、そんなことはない。もちろん、笑っていないからといって楽しんでいないわけでもない。笑っているかどうかで機嫌を判断するのも、ずいぶん乱暴だ。しかし、言ってくれないのだから仕方がないとも思う。

早く言葉を話してくれ、と願わずにいられない。しかし、いざ話し始めたらもっとうるさくなるのかも、と思うと、もうちょっとこのままでいい気もする。まあ、話すも話さないも彼の自由だ。

そうこうしているうちに、小一時間ほど経った。公園の中心は木々が生い茂りうっそうとするほどだが、砂場のあるあたりは木々もまばらで暑い。息子も飽きてきたようだし、なにより大人が疲れたので、別のエリアへ引っ張り出すことにした。

噴水を浴びる

公園の一画に、小さな噴水がある。周囲に池があるタイプではない。直径10mほどの円形の広場があり、そこに蛇口みたいな噴出口が一列に並んでいる。子供は一人一つの噴出口を陣取って、お手軽に水遊びができるというわけだ。足場にクッション性のあるゴム質のマットと芝生が敷かれていて、安全にも配慮されている。

時間になると、プシュッ、プシュッと順繰りに水が噴き出す。「ほらもうすぐくるよー」とか、「今度は長いのくるといいねえ」とか、そこかしこで声が上がっている。

我々も仲間に混ざり、端の噴出口を一つ陣取った。水はそれなりの頻度で噴き出すので、退屈することはない。以前来たときも、息子は終始テンション高く遊んでいた。同じようにまた楽しんでくれるだろうと安易に考えていたのだが、今日はどうも静かだ。噴き出す水に興味は示しつつも、しきりに周囲を気にしている。砂遊びのときと比べると、明らかに集中できていない。

この様子は覚えがある。きっと人見知りだ。そういえば、前回来たときはここまで人が多くなかった。緊張なのか、初めて見る人や物が珍しくて観察しているだけなのか、理由はわからない。だから厳密には「人見知り」と呼ぶべきかもわからない。ただ、見知らぬ環境下でいつもと違う様子になることは確かだ。今年の4月から通い始めた保育園も、借りてきた猫みたいな状態が解けるまで一か月かかった。まあ、不機嫌そうにしているわけでもないので、じきに慣れるだろう。考えたところで、時間が解決するのを待つ他に打つ手もないのだ。

噴き出した水をかけたり、おもちゃで気をひいたりするうちに、ひと際強く長い噴出がきた。人見知り?のそこそこ解けた息子が、水の柱の足元につっこんでいく。彼のもとへ、噴き出した水が一気に降りかかる。水を受けながら、今日一番の笑顔を見せてくれた。

その後、水を全身で受け止めるのを何度かくりかえし、すっかり濡れそぼった息子を抱えて車へ戻った。着替えを持ってくるのを忘れたので、タオルで身体だけ拭き、おむつ一丁でベビーシートへ。

砂遊びと水遊びでじゅうぶん疲れただろう。よく寝てくれることを祈って、急いで車を出した。

よく寝たし、仕事もはかどった。

帰宅後、急いで風呂へ入れて、お昼ご飯を食べて寝かしつける。すると、ぐずることもなく、ぐっすり2時間半寝てくれた。おかげで仕事もはかどった。公園さまさま、噴水さまさまである。

私たち夫婦は極度の出不精なので、予定のない休日に突然公園へ出かけるだなんて、子供が生まれなければまずあり得なかったシチュエーションだ。出かけた時間はたかだか2~3時間だったけれど、息子の不機嫌だけでなく、どこか私たちの気持ちもリフレッシュできた気がする。毎日ずっと家にいたら、そりゃあ身体にも心にもよくないよな。勢いで出かけてみるのも悪くないものだ。

こんな休日を増やすために、仕事や予定を詰め込むのは控えようと思ったのだった。

執筆:市川円
編集:アカ ヨシロウ

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