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不思議の国のアリス症候群

「どうしてそんなに上から目線なの?」よくそう言われる。その原因の一端は、この症状にあると思う。というわけで、本日はちょっと不思議な病気のお話。

ちなみに。

今回まとめるにあたって改めて調べて知ったのだけれど、この症状を知らずに、症候群の症状(に近い症状)が表れた子供の言葉を、頭ごなしに否定してしまう親御さんもいるのだとか。

ちょっとした豆知識として頭の片隅に置いておくと、未然にトラブルを防げるかもしれない。

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不思議の国のアリス症候群、という病気がある。不思議の国のアリスが好きで好きでたまらない!という病気ではない。知らない世界に行きたくて仕方がない!なんて憧れを抱く病気でもない。

ルイスキャロルもこの症状に苛まれていたのでは、なんてまことしやかに囁かれている病気のことだ。

不思議の国のアリス症候群(ふしぎのくにのアリスしょうこうぐん、Alice in Wonderland syndrome、AIWS、アリス症候群)とは、知覚された外界のものの大きさや自分の体の大きさが通常とは異なって感じられることを主症状とし、様々な主観的なイメージの変容を引き起こす症候群である。(引用:Wikipedia)

まとめると、「五感のうちいくつかがおかしくなる」病気だ。

この現象に症候群として名称があることを知ったのは、二十歳を過ぎた頃。とあるフリーゲームがきっかけだ。その名前が気になって調べた、のだったと思う。

それまでずっとそれらが、空腹感とか眠気とか尿意とか、そういう生理的に当たり前の感覚なのだと思っていた。誰でも経験があるのだと。よくよく調べてみると確かに、子供の頃に似たような幻視や幻覚を体験した人は少なくないらしい。

明確な原因はわからないけれど、しかし大抵は一過性のもので、大人になっても症状が現れる人は多くないようだ。また大人になって症状が現れる人でも、さらに年齢を重ねると症状がおさまるらしい。信憑性のほどはわからないけれど。

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私が日常的に体験するのは、主に「視界の縮小」。物が大きくなったり小さくなったり、というよりは、自分と物の距離が急に遠のく感覚。手の届く範囲にある物が、なぜか3m先にある、みたいな感じだ。

例えば、夜スマホをいじっていると、手元の画面がめちゃくちゃ小さく、遠くにあるように見える。思いっきり手を伸ばしてスマホをいじってる、みたいな。でも文字ははっきり見えるのだ。実際に見えているものが変わっているわけではなく、見え方が異なるだけ。

加えて、子供の頃は時間感覚の変化もあったのだけれど、こちらは大人になってからはなくなった。鼓動が異常に早く感じたときは、このまま死んでしまうのではないかと本当に焦ったことを覚えている。当時、小学2年生くらいだったと思う。

視界の変化は、少なくとも週に数回、多ければ日に数回は起こる。症状が続く時間はまちまちで、数分で治まることもあれば、数時間続くこともある。

おおまかな傾向として、何かに集中すると現れることが多い。特に顕著なのが、仕事・プライベート問わず、文章に目を通しているときだ。文章を読んでいると、その文字が遠くなる。「またか」と思いつつ、別段支障も無いのでそのまま読み続けていると、気がついた頃には症状が治まっている。

車の運転中に症状が現れたこともあるけれど、やっぱり問題は無かった。ただ急に来ると少しびっくりするのでお手柔らかにお願いしたい。

しかし個人的にはこの症状を割りと楽しんでいるので、年齢を重ねて症状が現れなくなったらと思うと、少し寂しい気持ちになる。

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さて冒頭の通り、私はよく「上から目線」とか「素直じゃない」とか「生意気」とか「偉そう」とか「馬鹿にしてる」とか言われるわけだが、実際そうなのかもしれない。

念のため前置くなら、「上から目線で他人を見ている」わけではなく、「自分も含めて上からの視点を意識している」だけだ。それが他人の目に前述の通りに映ったとして、特に違和感もない。

自分の見ているものが正しくない、という感覚を強制的に味わう体験は、それなりにインパクトがある。脳の機嫌ひとつで人間の感覚なんていくらでも変わるのだから、今感じている世界に確かなものなんてない――そんな考えを醸成させるには十分だった。

哲学をかじったことのある人ならば割とポピュラーな考えかもしれないけれど、知っているのと体験するのとでは、やはり受ける印象が異なる。


今回のアリス症候群は「ぜひ試してほしい」といって試せるものではないけれど、「この体験って人とは違う体験かも」とか、逆に「こんなの当たり前だよね」っていうものを再確認してみると、意外とそれが自分の個性を形作るくらい独特なものだったりする。

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