日常の小さなAwe体験から見えた可能性
Awe(オー)とは、畏敬の念のようなものです。普段、パソコンと睨めっこして長時間デスクの前にへばりついている生活では、なかなか意識することがない感情です。
ポジティブ心理学では、長年に渡って研究した結果、多くの人が日常的に体験することができる10のポジティブ感情を挙げています。それは、Joy,Gratitude,Serenity,Interest,Hope,Pride,Amusement,Inspiration,Awe,Love です。日本語にすると逆にピンと来なくなるかもしれませんが、順に、喜び、感謝、静寂、興味、希望、誇り、楽しみ、刺激、畏敬、愛でしょうか。
これらの感情は、私たちの考え方や行動の幅を広げ、一歩一歩成長に導き、良い人生を送るのに重要な役割を担うと考えられてており、"Broaden-and-Build theory"(Frederickson,2009) と呼ばれます。
そう、この中の一つにAweがあるのです。
私が聴いているポッドキャスト「Science of Happiness」でも、最近はシリーズでScience of Aweといって、大学リサーチャーの最新の研究や活動内容、瞑想などを取り上げています。
音楽、自然、宇宙(空、星)などの人の手に拠らないものに触れた時、言葉にならない喜びとも感動とも何とも説明のつかない、でもとても有難い、不思議な感情に包まれることがありますよね。そのような畏敬の念(Awe)の体験は、脳を活性させ、心身によい影響を与えるとともに、自分の存在を小さく感じることでエゴを少なくし、人との結びつきを強くする、利他的になるといったことが明らかになってきているようです。
さて、そこで私の"小さなAwe"体験です。
今日は、日曜日だったので、前から気になっていたアートギャラリーへ行ってきました。Barbican Centerの中にあり、無料のエキシビションは短期的に入れ替わるのですが、今回は、イラン出身の女性アーティスト(Soheila Sokhanvari)のアート展でした。
会場は、タイトルの画面にあるような感じで、薄暗く一歩足を踏み入れるとアラビックなモザイク模様の陰影が現れます。空間は、床から壁一面にイスラミックな幾何学模様がハンドペイントされており、ペルシャ調の音楽で満ちています。
1つ1つのアート作品はかなり小ぶりで、古代製法を取り入れた細かなペインティングと独特なスモーキーでカラフルな色使いが特徴的。各絵画に解説はなく、入り口でQRコードをスキャンしておけば知りたいものだけスマホを覗けばよく、作品番号も壁に小さく手書きで添えられているだけ。
そして、このような世界観にしばらく身を置いていると、なんともいえぬ大きな空間に没入していく感じがしました。心は静かなのですが、頭は冴えており、集中している感じです。
Aweが何をもって検証されるのか、どのレベルならAweといえるのか、などはわかりません。マインドフルネスに近い気もしますが、個人的には、遠く離れた異国の町角にポツンと身を置いた感じがしたので、小さなAwe体験と命名しました。
そして、もう1つ気づいたことが。
ロンドンのミュージアムや一部のエキシビションは入場料無料であることが多いです。そのため、会場を出たところには、寄付ができる場が設置されています。今回も、入場はフリーで3£の寄付が設けられていました。とても素晴らしい体験だったことと、この施設の活動自体がとても気になるので、寄付したかったのですが(寄付で500円、その価値は超えています)、なにせこちらは公共施設での支払いが圧倒的にタッチレス優勢で、私は現在ICチップ付きカードをタッチレスに切り替え中なので、残念ながら寄付ができませんでした。でも、同タイミングで出てきた方は当然のようにされていました。
こうした施設の寄付というと、正直、ふだんは損得勘定してしまったりすることもあるのですが、今回の体験後はとても謙虚な清々しい気持ちになり、ちょっとした思いやりのようなものが自然と発動する感じがありました。
マインドフルネスなど、まずは個人の幸せのために、という文脈で用いられることが多いと思います。もちろん、自分が良い状態でないと外には意識が向きませんし、それ自体大切なことです。でも、自分にも良くて、それが自然と他者のためにもなる、そんなナチュラルな体験を積むことができると人生もっと楽しくなるのではないでしょうかね?
アートが研究テーマということでは決してないのですが、、、なぜか気になることが立て続けに出てきました。今回は、小さなAwe体験が社会にできること、そんなことを考えてみました。
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