empublicメールマガジン「 知を生み出すソーシャライゼーション」~根津の街から(2022年11月11日発行)
10月から対面でのイベントやワークショップ、研修が増えています。
しばらくほとんどの会がオンラインの日々でしたので、電車で移動しながら「こんな感じだったな」と思ったりします。
ただ、オンラインでは打合せの時間の間が詰まっていても対応できたため、その流れが残っていて、スタッフが対面のイベントの30分後にオンライン打合せを設定し、駅にあるブースから参加することも時々あります。
テレワークが広がる中で起きた現象として指摘されるのが、仕事の経験が属人化しがちだということです。
オンラインでは業務の打合せをし、後は個別に作業することが多くなり、個々人が作業するプロセスの中で気づいたこと、実施の工夫などが個々人のものとなりがちということです。
確かに、隣で仕事をしていてお互いに見えていたこと、隙間時間の雑談で共有できていたことがテレワークでは見えにくくなってしまいます。
ただ、これは個々人の仕事の経験の共有する仕組みのないことが本質的な課題であり、それがテレワークで明確になったと考えられます。
日常業務の打合せや進捗確認では後回しにされやすい、個人の経験、直感、ひらめき、学びを「暗黙知」とし、イノベーションを起こす資源だと打ち出したのが、野中郁次郎先生らの書籍「知識創造企業」でした。
暗黙知を個人のものに止めないで、形式知にして組織で共有し、価値創造に活かすことがイノベーションを生む知識創造につながると考えたのです。
この考えを受け、日本企業でもナレッジ・マネジメントに力を入れましたが、思ったように効果が出ない場合も少なくありませんでした。
日本企業のナレッジ・マネジメントでは、暗黙知を表出(Externalization)させて形式知とし、連結(Combination)させてまとめるマニュアル化が重視されました。
ただ、野中氏らの知識創造サイクルはSECIモデルと呼ばれているように、表出(E)・連結(C)の前に「S」があります。
このSは「Socialization」であり、人と人のつながりの中で暗黙知が暗黙知として共有される中で、何が知なのかが明確になっていくプロセスです。
よく刑事ドラマではバディものと呼ばれる少し風変わりな先輩刑事と新人刑事がペアを組む物語があります。
そこでは、最初、新人刑事は風変わりな先輩を見て疑問に思うのですが、ドラマが進む中で“風変わりさ”にこそ知恵が詰まっていくことに気付いていきます。
これがSocializationです。先輩の暗黙知を現場の中で分かち合い、暗黙知の価値が明確になっていくのです。
テレワークで個別作業になり、属人化しやすいことは、改めてSocializationの大切さに気付くきっかけとなります。
近年はテレワークでなくてもパソコン業務が増えたことで仕事は個別化し、属人化しやすくなっています。
業務プロセスの中での小さな気づきを小まめにチャットツールで共有する、定期的に一緒にふりかえりの時間を取ることが、かつてなく大切になってきています。
そして、お互いの日々感じていること、嬉しさや不安、小さな気づきもお互いにしっかり聴きあう「対話」の時間がとても大切になっています。
エンパブリックでも改めて対話の大切さ、実施をサポートするプログラムを実施していきます。また、empublic Studioでも小さな気づきを話し合える場を増やしていきたいと考えています。
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