【創作ss】 _を見た。



そこは見渡す限り、澄んだ海のようで

底の存在すら感じられない、ふかいふかい海の色。



私は眠っていたのだろうか。

上を向いた状態のまま目が開く。

先ほどまでどこで何をしていたのかなどは思い出せなかった。


私は眠っているのだろうか。

生まれた当時のままの身体を見る。

自らの足の先は少し霞んでいて、輪郭はぼやけていた。


私は夢を見ていたのだろうか。

どこからか迷い込んできた白黒の蝶が、見えない輪郭の先に留まる。

少しこそばゆいような、ちくりと痛いような感覚がした。


私は夢を見ているのだろうか。

蝶はすぐにどこかへ飛んでいった。

見送るように、その姿を目で追っていく。



未だ見えない輪郭の代わりに、そこには白い点が残されている。

みるみるうちに点は大きくなり、黄金のさなぎになっていく。

憂苦が滲みながらもどこか妖艶に感じるその光景を、私はただ見つめることしかできないままでいる。



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