【創作ss】 怖い夢だった

いつもはまだ明るい時間に帰っていたのですが、その日は珍しく仕事でトラブルが起こり、帰りが遅くなってしまいました。

疲れていたこともあり早く帰りたかった私は、近道をしようと路地裏を歩いていました。

街灯も少なく人通りも無い道を早歩きで歩いていると、綺麗な身なりの女性が、道の先からこちらに向かって歩いて来るのが見えました。
表情が見える距離になると、その女性は顔も整っておりとても美人でした。

美人さんも残業だったのかな…と、横目で追いながらすれ違うと、女性はこちらを振り向き私に近づいてきました。

その容姿の綺麗さに、心が騒ぎ身体が固まった次の瞬間、
女性は私の肩に手を回し首筋を甘噛みしてきたのです。

首筋に生温かさを感じながら、その謎に満ちた行動に私は、驚きと少しの喜びを感じていました。

女性はすぐに私を離し、同時に私を呼ぶ声がしました。
会社の同僚が私を追ってきていたようで、息を切らしながら近づいてきます。

うるさい心臓がバレないよう平然を装い、同僚に向かって声をかけました。

しかし同僚は私を素通りし、いつも私に話すように、女性に向かって話し始めました。

私は訳が分からず、背を向けている同僚の後頭部を見つめていました。

すると女性は、私を横目で見ると広角を上げて目を細めました。

私は、私という存在を、その彼女に奪われてしまったようなのです。

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