見出し画像

そして怒りとうまく付き合う

私たちは誰もが怒りを感じる経験をしますが、その感情との付き合い方は人それぞれです。怒りを適切に表現できず、攻撃性につながってしまう人もいれば、怒りを押し殺して抑うつ的になってしまう人もいます。怒りと上手く付き合うことができれば、健全な対人関係を築くこともできます。

怒りと上手に付き合うには、まずその本質を理解することが大切です。怒りは、脅威に対する自然な反応として進化の過程で獲得された感情です。危険を感じると交感神経が活性化され、戦うか逃げるかの本能的な反応が引き起こされます。現代社会では物理的な脅威よりも、目標達成の妨げや人間関係のストレスなどが怒りの原因になることが多いでしょう。

怒りそのものは問題ではありませんが、それを認識せず、適切に表現できないと問題行動につながる可能性があります。例えば、あおり運転のように攻撃性を伴う行動は危険です。一方で、怒りを抑え込むと抑うつや自己主張の欠如といった別の問題が生じかねません。

では、怒りとうまく付き合うにはどうしたらよいでしょうか。ここでは、コンパッションのアプローチから学べる点をいくつかご紹介します。

CFT(コンパッション・フォーカスト・セラピー)の創始者ポール・ギルバートは、怒りをコンパッショネートに受け入れることの重要性を説きます。怒りに囚われて恥じることなく、思いやりの心で自分の感情を見つめ直すことが大切です。自分を責めるのではなく、寄り添うように怒りに向き合えば、その理由や背景にあるものが見えてくるはずです。

また怒りはエネルギーの源泉でもあり、それを適切に発散させれば行動する原動力にもなります。しかし、攻撃性につながるのではなく、アサーティブな自己主張ができるよう意識的にコントロールする必要があります。

そのためには、感情と距離を置く練習が効果的です。怒りに囚われず、第三者的に冷静に状況を見つめ直せるようになることで、適切な対処法が見えてくるのです。

人は誰しも理不尽な思いや欲求を抱えており、怒りはそこから生まれています。自分の感情を許し、包み込むように寄り添えば、怒りとの距離を取ることができます。

さらに、CFTには自分の中にあるいくつもの「セルフ」を想像し、それぞれの気持ちに思いを馳せるワークがあります。このワークを通じて怒りの根源にある痛みや恐れ、欲求などに気づくことができるのです。

このように、怒りとの健全な付き合い方を身につけることは、ストレス軽減や対人関係の改善にもつながります。怒りを排除するのではなく、受け入れつつ適切にコントロールできるようになれば、新鮮な視点で状況を捉え直すことができ、建設的な解決につながっていくはずです。

ただし、怒りの問題は個人だけの課題ではありません。特に男性には「強くあれ」と求められがちな文化的な側面があり、健全な怒りの表出を困難にしている面もあります。従来の「男らしさ」への囚われから解放され、感情を素直に表現できる存在になることが大切です。

他者への思いやりと同様に、自分自身へのコンパッションを持ち、怒りを恥じるのではなく、受け入れ、味方につける。コンパッションはそういった視点から、私たち一人ひとりが怒りと上手く付き合う方法を教えてくれます。

人生にはストレスや葛藤が付きものですが、怒りに前向きに向き合えるようになれば、新たな可能性が開けてくるはずです。コンパッショネートな心を持ち続けることで、怒りとの健全な付き合い方を見出せるでしょう。

今日もお読みいただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?