コンパッション3つの流れについて
セルフ・コンパッションのお話の2回目です。
今回のテーマは『コンパッション3つの流れについて』です。
記事と同様の内容をstand.fmを使った音声でもお届けしています。
音声の方がよい方はこちらでどうぞ。
コンパッション3つの流れについて
前回の#1のテーマは、「セルフ・コンパッションってなんだろう?」でした。
セルフ・コンパッションとは、「自分へのやさしさ」や「自分への思いやり」のことで、セルフ・エスティーム(自尊感情/自己肯定感)やセルフ・ピティ(自己憐憫)とは異なるものです。
自身の感情のすり替えに気付き、本当の自分の気持ちをありのまま受け止め、そこに優しさを向けることです。良いことも悪いこともありのまま受け止めることで、一歩踏み出すモチベーションが生まれるのです。
さて、イギリスのポール・ギルバート博士によると、コンパッションには3つの流れがあります。
①自分から他者へ(self-to-other)
②他者から自分へ( other-to-self)
③自分から自分へのセルフ・コンパッション( self-to-self)
日本人は、セルフ・コンパッションの低い人が多いと言われています。確かに私も、決して完璧主義ではないものの、自己批判は恐らく強い方ですし、失敗を恐れる気持ちや、恥の感情も強いということが、最近わかってきました。セルフ・コンパッションのエクササイズでも、心の中で思いやりの言葉を、自分自身に語りかけることが、当初はまったくできなかったのです。
さらに、他者からのコンパッションを受けることも、セルフ・コンパッションほどではないにしろ、苦手でした。
自分にはコンパッションを受ける価値はないと思ってしまいますし、真に受けて調子に乗らないようにしようと、つい警戒心を抱いてしまいます。
正直、結構拗らせてますよね(苦笑)
一方他者に対してコンパッションを向けることは、すんなりできます。「自分を思いやれない人間に、他者を思いやる事はできない」という人もいると思いますが、私は必ずしもそうとは言えないと思います。実際、自尊感情も、セルフ・コンパッションも低かった私でも、こうして他者へのコンパッションは向けることができるのですから。
なぜできたのかというと、それは子どもの頃からの教育なのではないかと思っています。
平成7年といささか古いのですが、総務庁の『子供と家族に関する国際比較調査の概要』によると、日本における子供に望む性格特性として、「他人のことを思いやる心」(61.9%)が最も多く、以下「規則を守り、人に迷惑をかけない公共心」(44.8%)、「責任感」(39.5%)などの順であるという結果でした。
ちなみにアメリカは、「責任感」(49.8%)「公正さや正義感」(32.0%) 「落ち着きや情緒の安定」(29.4%)の順に、韓国は「礼儀正しさ」(60.5%)「 責任感」(57.9%)「 規則を守り、人に迷惑をかけない公共心」(31.7%)の順となっています。
このように、日本では、小さいうちから、「他人のことを思いやる心」、他人の気持ちを察して、行動することの大切さを教えられて育つので、仮にセルフ・コンパッションが低い場合でも、他者へのコンパッションを向けることはできるのではないでしょうか。
最新の脳科学研究では、共感に関連して活性化する脳の部位があり、「自己」と「他者」の区別を、脳はあまりしていないと言われています。
つまり、他者へ向けた思いやりも、自分へ向けた思いやりも、脳は同じように反応していると考えられるのです。
コンパッション3つの流れである、①自分から他者へ、②他者から自分へ、③自分から自分へのセルフ・コンパッションの中で、もし苦手だなと思うものがあったとしたら、自分ができそうなところから始めみてください。
たとえそうしたとしても、「自己」と「他者」の区別を、脳はあまりしていないとすると、ひとつのコンパッションを高めることで、他の2つのコンパッションも高めることができる可能性が十分あるからです。
「オキシトシン」とコンパッション
2020年、私たちは予想もしていなかった出来事の中にいます。人と会うことが容易でなくなり、ひとりで考える時間が増えたという方、そしてその時間が、ネガティブな自動思考を、ぐるぐる巡らせてしまう時間になってしまい、多くのストレスを抱えてしまっている方も、いらっしゃるかもしれません。
誰かと心を共有することに、幸せを感じるのが人間であり、それがこれまで通りではなくなってしまったことは、誰にとっても、多かれ少なかれ、ストレスのある状況だと思います。
ストレスと言えば、「オキシトシン」がその軽減に有効であることをご存知の方も多いと思います。オキシトシンは、別名「愛情ホルモン」または「幸せホルモン」と呼ばれるもので、人やペットと触れ合ったり、入浴したりなど、なにか心地よさを感じることで、脳の視床下部で生成され、下垂体から分泌されます。
このオキシトシン、実は誰かに感謝や思いやりを向けることでも、その分泌が増えることがわかっています。
セルフ・コンパッションを高め、オキシトシンの分泌を促し、ストレスに強い心を育てていきましょう。
次回以降、感情制御の三つのサークル・モデルについてや、簡単なエクササイズのご紹介などを行っていきたいと思います。
もしよろしければまた、遊びに来てください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?