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ざっくり源氏物語#6 空蝉①

今日から空蝉に入ります。帚木の最後、空蝉に鍵を閉められて入り込めなかった源氏、「欲しいのが手に入らない」最初の体験になったんだろうなあ。文字通り皇子さまだしね。小君を添い寝させる(ってなにしてんのさ!)のもいかがなものかだし、空蝉えらいぞ!な気分になる私ですが、先を読み進めましょう。
添い寝をしながら源氏は「我は、かく人に憎まれてもならはぬを、今宵なむ、初めて憂しと世を思ひ知りぬれば、恥づかしくて、ながらふまじうこそ、思ひなりぬれ」

私は人に憎まれることがほぼないんだけど、今夜は初めてこの世を憂し、と思い知ったよ。恥ずかしくって生きていけない!とおもっちゃった」と小君に言う。小君はこんな優しい?主の役に立てないのが申し訳なく、お姉さんを恥ずかしく思う。(だって、もともと付き合ってたくらいのこと言ってるからね)ここで探して大騒ぎするわけにもいかないから、ということで深夜邸から出て帰るのでした。小君に「いいか、また折を見て、隙を見て!忍び込むから手配を整えろ」と指示するもんで、小君もまだやるの?めんどうだなあと思いながらも頼まれごとはうれしいな、と思うのでした。(洗脳!)

小君は役に立ちたい一心でいろいろ考えた。そうこうしているうちに紀伊守(空蝉の夫伊予の介の前妻の子)が国に行くことになったので、邸には女君たちしかいない。機会が来た!そういうわけで、自分の車に源氏を乗せて邸に行った。源氏は子どもの口車に乗って平気かな、と思ったけれど、そうでもなければ行く機会もないので、同乗していくことにした。
こっそり源氏を下ろして自分は大声を上げて帰ってきて、あちこちの格子戸を開けて回った。(源氏のために)
そもそも暑い時で、几帳なんかもまくり上げていたため、よく、見えた。

空蝉は義理の娘(紀伊守の妹)と碁を打っていました。空蝉が見えるのは背中だけ。軒端荻と呼称される娘は向かい合っていたので、空蝉と対比する感じで描かれます。空蝉は源氏からは顔が見えません。落ち着いた衣装を着て、髪もそれほど長くなく、小柄で目立たない感じ。さらに顔を正面にいる軒端荻にも見えないようにしています。さらに、手も隠れるように萌え袖状態にしています。これは、当時いくら女性が人に顔を見せない様に過ごしている、と言ってもやりすぎ、というか「大変つつましやかで遠慮がちな女性(そして、美人ではないことを十分に知っていて、その点であれこれ言われないよう、他人に突っ込まれることのないよう、目立たないふるまいを学んだ女の人。)」であるといえましょう。一方の軒端荻は暑いからと胸をはだけていて、むっちりとした白い肌が見えています。まるまる太って背が高く、顔ははっきりしていて眉や口元に愛嬌があり「すべていとねぢけたるところなく、をかしげなる人と見えたり。」欠点のない美人さん!美人だ美人だと多くの人に言われているのでしょう。自己肯定感が強い感じですね(空蝉と違って)源氏は少々品がないな、と思いました。
当時、女性が男性に素顔を見せることもなければ、本心というのかな、自分をさらけ出すようなこともあまりなく、(というか源氏のような立場のものであればより一層そうですよね。内裏育ちの超おぼっちゃまに対してよそ行きでない対応をする人はいないので)こういう素の姿を見られるのはおもしろいな!と思いました。(このせいでコイツはあちこち「垣間見」するようになるのか…)

調子にのった源氏は小君いじりで時を稼ぎます。「お客様がいらしていて、すぐご案内できずすみません」と言われれば、「あーあ!今日も空振りかあ~せっかく来たのにな~(チラッ)」と言ってみたり、碁の会が散会したら「ほれ案内しろよ!はよはよ!」と言ってみたり「軒端の荻も「我にかいま見せさせよ」(覗き見させろ)」とか言ってみたり。ほんとなに?このいばりんぼ。(感じ悪いな)

みんなそろそろ寝ようか、という時間になったので、小君の手引きで忍び入る源氏。
そのころ、空蝉は軒端荻が一緒に寝よう、と休んでいましたが、まったく寝られないでいました。
「女は、さこそ忘れたまふをうれしきに思ひなせど」最近手紙が(源氏から)こなくてほっとしているけど
「あやしく夢のやうなることを、心に離るる折なきころにて」不思議な夢のようなあの出来事が忘れられなくて「心とけたる寝いだに寝ねられずなむ、昼はながめ、夜は寝覚めがちなれば」心やすまることなく、昼はぼうっとするし、夜は寝られず…、という様子だったとありますね。浮かれていない空蝉の様子がわかります。
そりゃあ、悩ましくもあるよね!

さて、源氏がしのんできたのを「かかるけはひの、いと香ばしくうち匂ふに」人の気配がして、そのとても良い香の香りにはっと起き上がると、こっちに入ってこようとする人影。(香りによってこれは源氏である、とわかったので)やばい、と夏の単衣をそっと一枚取って逃げ出しました。

源氏は几帳の中に入ってきたとき、一人しかいなかったので、「空蝉だ」と思いましたが、触ってみるとどうも大きさが違う。これは軒端荻じゃないか!と気が付いたけれど、途中で「あ。人間違いでした」というのもいかがなものかと思ったし、さっきみた美人だし、と思ったしで最後までいたした、と。「方違えのたびにあなたを見染めていたのだ」かいって。素直で美人の軒端荻は「そうだったのか」とわりと素直に受け取ります。でも、源氏は魅力を感じなかったそうで…。失礼なやつですね、ほんと。
最後も「いろいろあって、もう来られないかもしれない。けど、心の底ではずっと思っているからね」とか言って、「内緒ね」と言って、空蝉の寝ていたばしょにあった薄衣をさっと取って外へ出たのでした。

ピンチもあったもののどうにか自分が忍んで来た怪しい男だとバレることなく邸から逃げ出しました。

源氏は小君の牛車に乗って帰りました。源氏のおばあちゃんから受け継いだ邸、二条院で小君に幼稚な作戦だったと責め、添い寝して、恨み言をいろいろ言うので、小君はすっかり悲しくなってしまった。空蝉の小袿を自分の衣の下に入れ、小君に恨み言を言いながら横になっているうち、思いついて懐紙に手習いのように書きつけました。
「空蝉の身をかへてける木のもとに
なほ人がらのなつかしきかな」
空蝉とは蝉の抜け殻のこと。あなたの抜け殻を持って懐かしんでおりますよ、と。
朝になってこの書付をもって自宅に帰る小君。
そして、姉にマジで怒られました。「なんてことをしてくれたんだ!」と。
小君はどっちにも責められてつらい立場なのでした。それでも源氏の歌を渡しました。これが嫁入り前なら喜べたのに、と空蝉は少し思って書きつけました。
「空蝉の羽に置く露の木隠れて
忍び忍びに濡るる袖かな」
空蝉の羽に光る霜があったとしても木に隠れて見えないように、忍んで袖を濡らしております。
気持ちと立場を考えればそうもなりますよね…空蝉~!!

軒端荻はお手紙ないのはちょっとおかしいな、とも思わずに物思いにふけるのでした。かわいそうが過ぎる!


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