「コンソメ」への不信感

めっっちゃくちゃに自炊をする。
居酒屋でバイトしてた時期が長かったことが影響していることは確かだ。

ヤマキさんの「だしの素」を死ぬほど愛用している。
びっくりするくらい何にでもドバドバいれる。出汁ジャンキーがここにいる。

舌の好みは、きっと育ちが影響する。
4人兄弟(全員男)で育った僕の食卓は毎日が茶色かった。

白米とおかずを奪い合う。テレビに目をやった瞬間に肉は奪われる。
毎食が戦いだった。茶色い肉と多分玉ねぎ、炒めたやつ。

母ちゃんが洋食作ったとこを、一回も見たことない。
いつだって食卓は、基本的に出汁の味がしてた。そしてそれが大好きだった。

自分で料理をするようになっても、好みは変わらないままだった。
たまには洋食っぽいのも作ろうと、ディグったレシピサイトで目に入る「コンソメ」
いつも見なかったフリをしてやり過ごしてきた。代わりに「だしの素」2パックをぶち込んで今日までやってきた。

もちろん買ったことも使ったこともある。さすがに何度かトライはした。
やけに角がきれいな四角い固体。アイツの味の本質が今になってもわからない。
「何味」って形容できないキューブ状の何か。

僕はアレが怖い。ほんわかした味の割に家庭では大層な支持を得てるアイツが怖い。
少なくともウチの母ちゃんはコンソメ使った何かを繰り出してきたことは一回もなかった、と思う。

先日、寒くなってきたし、たまにはポトフでも作ろうってスーパーに出かけた時、
僕は陳列されたコンソメの前で2分ほど迷って、やっぱり買わなかった。

家に帰って、野菜を切って煮る。コンソメの代わりに「だしの素」をぶち込む。
当初の意図から大きく逸れてしまった謎の野菜煮込みは、初めて食べる料理の味がした。
なんなら味噌入れて最終的には味噌汁になった。

自分探しの旅という名目で闇雲に東南アジアへ向かった放浪息子が、数年ぶりに帰ってきた時の親の気持ちがわかった。
自分なんて探すまでもなく最初からそこにあった。そうだよな。
僕は味噌汁との再会を噛み締めて、抱きしめ合った。おいしかった。

だけど、僕はコンソメと歩み寄ってわかりあいたい。
「だしの素」と通じ合えているように、コンソメともっと深いところで繋がり合いたい。

歳を重ねていくにつれて、冒険する勇気はどんどん小さくなっていく。
きっとコンソメとわかり合えるタイミングは、今年しかない。

決意のポトフを今週中に作ろうと思う。
今度こそ、コンソメと死ぬ気で殴り合う。
お互いボコボコになって、殴り疲れて、河原で寝そべって、「ヘヘッ・・・」ってお互い鼻の下掻きながら和解する。

学ラン買ってこなきゃな。もう何書いてんのわからなくなってきたので、おやすみ。

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