見出し画像

Egon Schiele レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 @東京都美術館

いちばん好きな画家と聞かれたらシーレと答えたいと思っていたが、初めて現物をしっかり見た。

人物画の肌に散りばめられている赤い色がなんとも惹き込まれたのは高校の美術のクラスで見た図録だ。いずれも目力強め憂いがあり、自画像のみならず誰を描いているものでもなんとなくエゴン・シーレっぽくて、満ち満ちたナルシズムが若々しく、天才と儚さの塊に魅了された。
不謹慎だが亡くなり方がロックである。28歳でスペイン風邪にて、妊っていた妻の死の3日後に追いかけるように2人で世を去るのだ。愚かな高校生の私はこのエピソードにも悶絶した。脆くて愚かなところだけで親しみを抱ける呑気なところは10代からあまり変わっていないかもしれない。

さて。最も心を寄せられる画家である仮定は確信になる。私の好きな肌に織り混ぜられた「赤」はどうしようもなく優しく柔らかで、人物画は痩せ細った躯体が多いのだが、独特の熱量と湿り気を与えている。目元は実物はもっと繊細で、眼球を覆う水分まで伝わってくる。視線は射抜いているかと思いきや戸惑いも滲み出ていて、だからかな、天才にして青臭い。
最近見た、たとえばピカソみたいな貫禄はない。自分の才能、ナルシズムに振り回され、翻弄され、両手から溢れていくのを必死に堰き止める震えが伝わってきて、鋭く私を圧倒する。

意外だったのは、生死の境界を凝視するようなテーマやモチーフゆえの作品なのに、実は悲壮感は感じられない。同じ芸術家仲間にも恵まれ、尊敬できる先輩にも恵まれ、短い生涯の中でもパトロンにも恵まれたというから、人生そのものへの疑いがなかったあらわれのような気がするのはこじつけか。

「すべての芸術家は詩人でなければいけない」後々天才になると、いろんな言葉が拾われてしまって大変で、いくつかのエピソードはトホホに聞こえたけど、これは音楽家の私も刻んでおく。

レオポルド美術館は世界で最も多くエゴンシーレのコレクションがあるそうで、すなわち最も行きたい美術館になる。私の行きたいヨーロッパはノルウェーとオーストリア。一度には行けなさそうだな。でも諦めないぞ。

最近思う企画展のもやもや。この展示も原題が記されていなかったのはけしからん。ドイツ語わかんないけど、それも作品の構成要素だから原題の字面を見たい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?