見出し画像

しっかり足が地面についていますか?

NHKの番組「ヒューマニエンス」で宇宙体験について取り上げられていました。興味深かったのは宇宙では重力がないために「やる気が起きない」ということでした。重力を感じているということがドーパミンの生成に関係があり、やる気につながっているという事のようでした。

生まれてから死ぬまで地上の生き物は地球の重力の影響をずっと受けています。床に寝た状態以外は坐っていても立っていても無意識に重力に抵抗して姿勢を維持する筋緊張が入っているのです。
電車で浅い眠りの時は、首が前に垂れるぐらいの姿勢で座っていられるのですが、深くなるにつれて隣の人の肩に寄りかかったりして嫌がられるぐらい揺れたりします。それでも椅子から転げ落ちないぐらいには重力に対抗するように無意識が姿勢の維持に働いてくれているわけです。このような重力への適応が人間のこころにも影響しているのは当然かもしれません。

無重力の宇宙では、上下も左右もないので、人間関係も地上ほど上下関係がないフラット(平)な感じと宇宙飛行士の野口さんがおっしゃっていました。宇宙ステーションのクルー集合写真でみなさん”輪”になって写っていたのは興味深かったです。

重力に対してどのように姿勢を維持するのかという無意識努力の影響はスポーツの場面ではどう関係があるんだろうと思うかもしれません。
大ありです。

大きな試合や大切な場面になると緊張するものです。
「落ち着け~」とか「リラックス!」と思って、意識的に頭でコントロールしようとしても、上手くいかないどころか、かえってさらに緊張してしまい、頭が真っ白になる場合もあります。頭だけでなく緊張してからだが固まって動きが悪くなるのはよくあるパターンです。

それ以外に、「足がふわふわした」と言うのもよく聞く表現です。これは比喩的表現ではなく、本当に“あがり”の状態のときには足がしっかりと地面についていないのです。
特に肩周りや上半身に筋緊張が溜まってくると、重心が上のほうに行くために、足がしっかりと地面を捉えられなくなります。

そんな時に意識的にしっかりと足を地面につけようとしても、なかなかうまくいかないのは上半身の力が抜けていないからです。

動作法では、まず肩上げ課題や躯幹のひねり課題を行って、上半身、特に肩周りの力を抜いて、最後には3点曲げと呼ぶ立位の膝前出し課題をします。立って、足首と膝、股関節の3点を同時に曲げていく。そしてしっかりと踏みしめてからだを起こして、楽に直(ちょく)に立つ姿勢をとるという課題です。

そうすると、
「足の裏がべったりと床についている」
「しっかりふめている」
「(最初のように)揺れていない」という身体感覚の変化と同時に
「落ち着いた気分」「すっきりした」などの気持ちの変化も体験されるのです。

あがり”というとこころの問題と思って、頭でなんとかしようとしてしまいがちですが、からだを整える(この場合上半身の力を抜く)ことで、こころも整えて、落ち着くことができるのです。

肩上げ課題