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盆踊りとディスコとボニーMと私

先日、夏祭りを4年ぶりに近所の公園で開催するというお知らせが我が家に届いた。それを見ていたとき、ふと幼いころに猛烈な印象と違和感を抱いていた盆踊りの曲を思い出したのだ。

夏祭りは幼稚園から小学校6年くらいまで毎年足を運んでいた。盆踊りの時は東京五輪音頭やソーラン節など定番の曲が幾つか使われ踊っていたが、その中で異彩を放つ曲が一つだけあった。

これだ。

ボニーMの「バハマ・ママ」だ。
さっきまでソレトトントトトント顔と顔~♪など呑気に三波春夫の歌声に合わせて踊っていたはずなのに曲の雰囲気が変わった挙句、外国語が聴こえてくる。何だこれは。
近所に住んでるおじさんおばさん、いつも野菜をくれる農家のじいちゃんばあちゃんまでもが異国のビートに合わせて尻をフリフリしながら踊っている。やたらノリがいい。
こうして約15分に一度くらいのペースで70年代のディスコミュージックが挟まれる盆踊りは謎の違和感を幼い私に残していた。

あまりにも気になったので調べてみるとバハマ・ママを盆踊りで流しているという地域はかなり多く、中には「バハマ音頭」などと呼んでいることもあるそうだ。ボニーM繋がりでは「Rasputin(怪僧ラスプーチン)」で盆踊りをする地域もあるという。

ワケがわからない。
盆踊りでラスプーチンを流すなんて、ナニカを召喚しようというのか。

そして昨日、バハマ・ママをSpotifyで初めて歌詞などに注目しながら聴いてみたのだが、歌詞も予想より全く違っていた。一部を訳すとこんな感じ。

Bahama, Bahama mama
Got the biggest house in town, Bahama mama
Bahama, Bahama mama
But her trouble's getting down, Bahama mama

バハマ、バハマ・ママ
街で一番大きな家を持ってるバハマ・ママ
バハマ、バハマ・ママ
でも悩みの種は尽きない、バハマ・ママ

She has six daughters and not one of them is married yet
And she's looking high and low
And none of them plays ever hard to get
So if you're lonesome: go there, go!

彼女には6人の娘がいるけど皆結婚していない
だから相手を探し回ってる
どの娘もゲットするのは難しくない
だから君が独り者なら行ってきなよ

・・・つまりこの歌はお嫁に行き遅れた6人の娘を持つ母親がそのことで悩んでいる、娘たちは揃いも揃ってハリウッドスターのように美しいから会いに行ってあわよくば結婚しなさいよ、そうじゃなきゃアンタアホなの?という内容であり、祭りや踊りといったワードは一切出てこない。

しかしながら実際に目の前でバハマ・ママを流している盆踊りを見れば分かるのだが日本特有の湿気のこもった熱帯夜で屋外に出て開放感と共にオレンジ色の照明とカラフルな提灯の下で踊る、というのが驚くほどこの曲にマッチするのだ。さすがディスコミュージックと言うべきか。

バハマ・ママがここまで盆踊りで使われて、老若男女が踊るようになったのは日本人特有の「洋楽は雰囲気や曲調が良ければそれでヨシ!歌詞は知らない!」という習性が発揮されたせいだと私は考えている。加えてボニーMもドイツ出身だがメンバーはジャマイカやガーナなどにルーツを持ち、歌は全て英語詞という様々な要素をごった煮にしたようなグループである。そのグループの曲が楽しそうなら何でも日本風にアレンジして取り込んでしまう国民性に飲み込まれたのも何となく頷けるのだ。

今年は日本各地で盆踊りを久しぶりに開催すると思われるので、普段行かないという人もちょっと覗きに行ってみるのはいかがだろうか。もしかしたらバハマ・ママが流れているかもしれない。かくいう私も10年ぶりに地元の盆踊りに足を運んでみるつもりだ。

恵麻


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