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素敵な日傘、外見と内面

もうずっと日傘を探しています。

世の中には可愛らしい日傘が多すぎて。あるいは機能性に特化した日傘。

白いコットンレースのワンピースを着た少女、豪奢な宝石をまとったマダム、習い事帰りの和服美人。そんな人だけに装備されるアイテムと言いたげなデザインが、自分にはフィットしない。

かといって遮光に遮熱が99%、化学繊維でとにかく紫外線をカットしますという見た目ではいささか味気ない。レースに花柄にリボンにドットのような甘さは糖度が高すぎるけれど、ときめきも欲しい。そうしてときめきを重視して洒落たセレクトショップで探せば、たしかに素敵な日傘が並ぶ。ただ果たして日除けになるのかという薄い生地、こだわりの分だけ重さのある持ち手、小さな汚れで台無しになってしまいそうな繊細なデザインに躊躇してしまう。素敵さと比例した価格にも。難癖ばかりの自分に呆れるが、とにかく購入に至らない。

日傘は冬場のコートのようなものだと思う。まず視覚的に占める面積の大きいアイテムだ。他が洒落ていてもシンプルでも、最後のその一点によって全体の印象を左右する。その一方でワードローブの中で数が少ない。私の周りでは日傘は一つだけ、の人も多い(なんなら持っていない人の方が多い)。日傘は春先から秋まで持つのに、晴雨兼用、長傘、折り畳みと頑張って3本くらいの体感だ。機能面でも買い替えが必要なので5本もお持ちの方は少ないのではないか。印象に残るのに少数精鋭なので、デザインにもこだわりたいし実用性も備えていてほしい。

雨が降らない日は必ず持ち歩くので軽いといい。開閉のしやすさも重要だし嵩張らないかも重要だ。日々を共にするので自分の好きな見た目であってほしい。そもそもの前提として日除けとしての機能が高くないと意味がない。そんなことを考えて探すとキリがない、決まらない。日傘ひとつに外見も内面もと欲張ってしまう。

微糖なデザインを求めて百貨店を彷徨ううちに、男女兼用・メンズコーナーを見つけた。マッキントッシュやラルフローレンが並んでいた。機能の高さにミニマルな見た目。黒や茶、紺に深緑のようなシックな色展開で華やかさには欠けるけれど求めていたものに近い気がする。男性が日傘を持つことにざわついた時は過去となり、気候変動やジェンダーフリーのご時世、ハードルはなくなりつつある。日傘も傘なので雨傘と同じように誰もが使える物ですよね。今って日傘をメンズで探せるんだ。私にとっても世界にとっても、選択肢の広がりに嬉しくなった。


悩みに悩んで、鮮やかなターコイズブルーのタッセル付きの日傘を選んだ。派手な色な分だけ気持ちをあげてくれる。機能性も十分にある。大切に使っていきたい。余談ですが、日傘を使うと時間や姿勢に気を遣うようになるのは私だけでしょうか。日傘で走って移動、猫背ではいられないので。そして危なくないよう周囲にも目を配るようになる。適当な日傘だとそういった意識が疎かになりがちなので気に入った物を持つことは良いことだと思う。

数年前に銀座で見かけた白髪の和服女性が、木陰の間のほんの1、2メートルの日向に日傘をそっとさしていたのを思い出す。その動作があまりに美しくすれ違いざまに思わず見とれ、彼女がその数日前にドラマに出ていた女優であることに気づいた。いつか彼女のような日傘の似合う女性になれるよう努力したい。


#日傘 #ファッション #日記 #エッセイ #イラスト

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