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0-1を創るビジネス視点とデザインの役割

リーンスタートアップを中心とする新規事業開発で使われるマイルストーンやビジネス用語と、デザイナーの役割との関係性についてまとめます。

進みにくいビジネスパーソンとデザイナーの相互理解

新規事業開発者を中心とするビジネスパーソンにとって、デザイン思考という言葉を始めとして、デザインの重要性について認識されてきていると思います。

一方、デザイナーがどのような局面で活躍するのか分からず、上手く活用できないことが多いのではないでしょうか。デザイナーの立場からしても、新規事業開発/スタートアップで用いられるビジネス用語(概念)が分からず、話し合いについていけないということがあると思います。

このようにお互いを上手く理解し合えないことによる機会損失が大きいと、感じています。その相互理解が進まない理由は、

① ビジネス用語とデザイン用語の違い

② 幅広いデザイナーの役割

この2つによって、ビジネスパーソン、デザイナーのお互いの理解がなかなか深まらならず、新規事業開発でコラボレーションが捗らないことが多いのではないでしょうか。少なくともデザインスクール出身で新規事業開発をしている私は、多くそのような場面を目の当たりにしています。

ビジネス用語とデザインロールの関係

最初に、まとめの図です。

説明を加えていきます。

ビジネス パースペクティブ

リーンスタートアップの考え方を参照すると、重要なマイルストーンとしては次の3つです。リーンスタートアップについては、スタートアップサイエンスがとても分かりやすいです。

1:課題発見ー本当の課題は存在するのか
市場分析、戦略策定、ロードマップ策定、顧客ヒアリングなど

2:PROBLEM SOLUTION FITー課題は解決しそうか?
リーンキャンバス作成、Low-Fi MVP開発(ペーパープロトタイプなど)、課題を検証するヒアリングなど

3:PRODUCT MARKET FITーソリューションに市場は存在するか?
Hi-Fi MVP開発(最小限の機能するプロトタイプ)、実際の顧客との検証、ブランド・マーケティング戦略、市場性テスト、ビジネスモデル開発など

0−1を担当するビジネスパーソン/起業家は、3.のプロダクト・マーケット・フィットを達成するために日々活動していきます。


デザイン パースペクティブ

デザイナーはこれら3つの全プロセスを支援、実行するデザインをすることができます。実際にはデザイナー毎に得意とする領域が異なりますが、0-1に特化したデザイン思考を身につけたデザイナー(デザインコンサルなど)は、横断的に活躍することができると言われています。

a. ビジョンデザイン
事業ビジョン、経営ビジョン、バリューなどを、社内外のステークホルダーで共有できる形でビジュアライゼーションする。

b. ストラテジックデザイン
戦略やプロダクトロードマップを、社会性、人間性を考慮したステークホルーだから共感を得られる形でデザインする。加えて、社会の変化、人間の心理的変化に対する深い洞察を持ち、イノベーションの機会を発見する。

c. デザインリサーチ
ユーザーリサーチから、テーマの発見、インサイトの発掘、機会(How Might We~の形で言語化された取り組むべきイノベーションの課題)の特定までをカバーする。

d. サービスデザイン
フロントのユーザー体験、オペレーション側の仕組みの設計、ビジネスモデルの設計という3つのレイヤーを網羅的にステークホルダーを巻き込みながらデザインする。

e. UXデザイン
フロントのユーザー体験(提供価値)の設計が領域。事業価値を理解した上で、ユーザーリサーチから問いの設計、ジャーニーマップの作成、UIデザインまで含めて行う。

f. ビジネスデザイン
ヒトへの提供価値、収益性、実現可能性を考えながらビジネスモデルを設計する。数字とビジュアルの両方を駆使する。図では後半にロールを持ってきましたが、前半部分の市場動向や戦略策定にも携わります。

g. ブランドデザイン(BX)
生活者が商品やサービスの意味ある差に共感し、ファンになっている状態をつくために、ブランドコアからコンテキスト、ブランド体験、コミュニケーションまでを担う。

h. コミュニケーションデザイン
人に響くコミュニケーションのデザイン。プロダクト・サービスの提供価値やストーリーをビジュアルや動画などクリエイティブの力で伝えるデザイン

私の印象では、海外のデザインファームでは、各デザイナーがこれらのうち1つに専門領域を持つスペシャリストがいて、お互いの強みを活かしながらプロジェクトを進めているイメージです。

日本のデザインファームのケースでは、1人のデザイナーが複数のロールを担うケースが多いように思います。また、スタートアップや事業会社で働くデザイナーの場合、これらの役割を横断的に担うことが、国内・海外関係なく求められているように思います。

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ビジネスパーソンからすると、なかなか理解しにくいデザイン職能ですが、幅広いデザイナーの資質や可能性を理解すること、そして、デザイナーは、カチッとしたビジネス用語に慣れること。お互いがリスペクトして力を最大限に活せる、そんなチーム作りをしていきたいなと考えています。

Photo at Suomenlinna, Helsinki, Finland

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