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フィンランドの大学院の卒業生が感じる「世界一の幸せ」を支える教育

小さな北欧の国フィンランドは、国連のSDSN実施する世界幸福度調査 で、3年連続で世界一幸福な国に選ばれました。

北海道と同じくらいの人口(約550万人)で、1年の半分は雪に覆われ、冬には日光がほとんど照らない白夜に近い厳しい自然環境にありながら、なぜフィンランド人は世界一幸福なのでしょうか。

「フィンランド」・「幸福」・「理由」というキーワードで検索すると、

・労働時間が短い!
・インテリアがおしゃれ!
・学費がかからない!
・夏休みが長い!
・プライベートが充実してる!

など、日本との違いについて、書かれた記事が見つかります。

確かに、このような表面的に比較しやすい違いはあると思いますが

・「なぜ、労働時間が短く、生産的に仕事を終えているのか?」
・「どうして、学費がかからない社会システムが実現しているのか?」
・「どうして、自分らしいプライベートの時間を過ごす事ができるのか?」

もう1歩深堀りをして、これら質問の答えを考えてみると、全ての根底にあるのは「教育」だと私は感じています。これは、私がフィンランドの大学院生として2年間住みながら、フィンランドの友人、心理学の先生と話をしたり、フィンランドの文化に関する講義を受けながら、感じたことです。

2019年5月に出版された「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」という本を最近読みました。

この本を読みながら、フィンランドの教育が世界一幸せな国と支えているのだと改めて感じました。このように考える理由について、本の内容を参照しながら、私が感じることを書きたいと思います。

子どもは1人の人間

とても当たり前のことのように聞こえますが、子どもは先生や学校から一方的に教育されたり、指図を受ける存在ではないということが明確に決まっています。

教育を行う者は、すべての児童生徒が学校の活動と発展に参加でき、本人の地位に関する事柄に関して意見を表明できるよう、配慮し、推進する。児童生徒には、教育計画及び、それに関する計画、学校の規則作成、に参加する機会を作られなければならない(基本教育法第47条)。

フィンランドでは、学校の教育に対して生徒が主張する権利があり、先生はその意見を積極的に取り入れなければならないと定められています。

私が所属していた大学院の授業内容も、生徒は強く意見を主張し、学期中にプログラムの内容が変わることは良くありました。日本で先生の授業に生徒が意見をしたとして、プログラムの内容が変わるということはありえない事ではないでしょうか。

この教育の思想にあるのは、子ども1人ひとりが自分を発展させ、自分らしく成長していくことだと感じます。

フィンランドの教育の柱=WELL-BEING

フィンランドの教育は、権利とWELL-BEINGが柱となっています。

WELL-BEINGとは、健康、心地が良い、生活が快適、生き生きとしている、自尊心が持てる、人と心地よく繋がっている、不安がない、性的充足など、とても幅広く概念です。つまり、幸せを基準に教育が作られています。

そして、共通するのは「誰1人として同じWELL-BEINGはない」ということです。大切にするのは、「あなたにとってのWELL-BEINGは何ですか」ということ、つまり、自分らしい生き方を感じることです。

話が逸れますが、予防医学研究者の石川善樹 先生のWell-BeingとWell-Doingに関する本がもうすぐ出るようで読んでみたいと思います。

人生観の授業がある

フィンランドには「人生観の知識」という授業が小学校、中学校、高校であるそうです。

本のなかで、日本の「道徳教育」との違いについて述べられています。道徳教育は、正しい事と間違っている事、良い事と悪い事を区別する人間の能力のことで、倫理はより哲学的に道徳を捉え、人の行動に干渉したり、こうすべきだという行動に関する指示をしない事だと説明されています。

つまり、道徳教育は「こうあるべき」を教えるのに対し、フィンランドの人生観の授業は、「あなたはどう感じる?」を対話を通じて深めることを目的にしています。

WELL-BEINGであることに正解がないとすると、こうあるべきという社会の価値観を教えられるよりも、私がどう感じるか?という問いに対して考えを深める、そんな時間が増えていくといいなあと感じます。

考える力を育むことが1番

フィンランドの先生の役割は「教える」ことではなく「育む」ことに重きがあります。生徒に対して、自ら考える機会を与える、自分で学習する環境を提供する事が先生や学校の役割です。

例えば、高校生から時間割は自分で決めます。履修する科目、授業の時間を自らが決めて、主体的に学ぶ事が推奨されています。

大学院でも必須科目は120単位中の30程度。あとは自分で好きに組み合わせ履修する事ができました。「私が決めた!」「これを学びたい!」という、生徒の意思を尊重し、先生はその機会を与えます。

当初、私はこの教育スタイルに馴染むことができず苦労しましたが、社会に出てから、会社で言われたことだけをやり続けるマシーンのような人にならないためにも、あるいは、自らが大切にする価値観に基づいて、商品・サービスを開発できるようなイノベーティブな人材になるために、効果的な教育であり、教育思想だなあと感じてます。

フィンランドの教育をベースにした学校

いくつかフィンランドの幸福度を支える教育のポイントについて見てきました。日本とフィンランドは国大きさから、文化、国民性に至るまで異なるため、一概に、このフィンランド式がベストだとは思っていません。

ただ、全ての人ではなくても、自分たちの思いで教育スタイルを選べて、フィンランド式の幸せ基準な教育システムが取り入れられた学校があったら嬉しいと私は感じます。

Photo at Iizaka onsen, Fukushima, Japan

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