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「来てくれたんだね!」そう驚いて、輝くような表情を見た祖母の最期

母の育ての方の祖母は、豪快な人だった。
大酒を飲んで、威勢が良くて、言いたいことを言って、切符がよくて、江戸っ子そのもの。ただ気に入らないと文句を散々大声で言って暴れ回るような…口も達者で。

祖母が愛していたのは、文句を言いながらもやっぱり祖父のこと。それから娘である母のこと。それから私の兄のことで、私のことは「この子は人がドキッとするようなことを言うから」と警戒しているようだった。きっと繊細で寂しがり屋な人だったのだろう。

そんな祖母は、警察官だった祖父が亡くなってからは本当にお金もなかったからか、体調も悪かったからか、随分落ち込んで、たまに尋ねると真っ暗にした部屋でだまって時代劇を見ていた。

まだ若かった私は何も用事がなくてもたまに1人で尋ねたけれど、ある日「もうこないで」と冷たく追い返された。

それでも心配で、行かなくていいのか母に聞くんだけど「こないで」って言うんだからほっときなと言われやきもきしていた。

そしてとうとう祖母が倒れた連絡が来た。
急いで母と駆けつけた病室で開口一番、
「来てくれたんだね!来ないかと思った」と輝くような笑顔で言われてびっくりした。

病気を疑うほどの若々しい輝きだった。
後から思うに、きっと暗い部屋でわたしを追い返したことを毎日毎日ひとりで後悔してたのだろう。

馬鹿な話だ。

母の言うことを鵜呑みにせず、またなんでもない顔でふらっと会いに行けば良かったじゃないか。

毎日後悔させてたかと思うと、切ない気持ちにはなるけど、それでも最期には誤解が解けてあの表情を見られて良かった。

数日後、息を引き取った瞬間は居合わせなかったけど、そこはそれで良いのだと思う。
私のことは、祖父、母、兄と比べると自分の甘えを見せられない相手として、きっと友達のような愛をくれていたのかもしれない。

死ぬ時にはじめて気づく人生で大切なこと33
を読んでて、何故か思い出した祖母の話。

たまに、ふとした時に夢に出てきて応援してくれるんだよな〜。