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【映画エッセイ】わたしは、ダニエル・ブレイク|亡き父に会えた。この映画に心から感謝する。


『優秀な能力の使い道』とは
心臓発作を起こして働くことを医者から禁止されたため、国の援助を受けるため、役所へ申請に行くダニエル。

役所は、パソコンを使えないダニエルに「オンラインの申請が決まりですから」と繰り返す。そして、それを職員が手伝うことは、許されていない。
見かねたある女性職員が、こっそり手伝おうとして上から叱責される。 

この職員たちは、電気代が払えずに途方に暮れているわけではない。
だから「決まり」を振りかざしていられるのだ。 

人間的な最低限の暮らしすら許されないほどの貧しさを
好き好んで選択する人はいないだろう。
こうなるとわかっている道を、まっしぐらに爆走していく人もいない。

何十年もまじめに働き、納税してきたダニエルのような人を救えないなら、なんのための「国」なんだろう。

 例外はもちろんあるけれど、経済的な豊かさは、「教育の機会」に影響を受ける。
そして、その「教育の機会」は、親の経済力に影響を受ける。
東大生の親の年収は、半数超が950万円以上。教育にはお金がかかる。

自分の努力だけで勝ち取ったと勘違いしてはいけない。
自分は、努力ができる環境に生まれて幸運だった、ただそれだけだ。 

そう考えることができれば、「弱者に手を差し伸べる」という斜め上からの気持ちにはならないだろう。

ダニエルやケイティのように、生活に困っている人は日本にも大勢いる。
幸運にも、優れた教育を受ける機会を与えられた人たちには、
困っている人を困ったままにさせない、そういう仕組みを作ることに
能力を使ってほしいと願う。 

シングルマザーのケイティを娘のように気にかけ、支えになるダニエル・ブレイクは、どことなく亡き父に似ている。

「お前のそばにいる。がんばれよ。」と言ってくれている気がして、
何度も目頭が熱くなった。

キャスト
監督:ケン・ローチ
出演:デイヴ・ジョーンズ,ヘイリー・スクワイアーズほか

あらすじ
イギリスに生まれて59年、ダニエル・ブレイクは実直に生きてきた。大工の仕事に誇りを持ち、最愛の妻を亡くして一人になってからも、規則正しく暮らしていた。ところが突然、心臓の病におそわれたダニエルは、仕事がしたくても仕事をすることができない。国の援助を受けようとするが、理不尽で複雑に入り組んだ制度が立ちはだかり援助を受けることが出来ず、経済的・精神的に追いつめられていく。そんな中、偶然出会ったシングルマザーのケイティとその子供達を助けたことから、交流が生まれ、お互いに助け合う中で、ダニエルもケイティ家族も希望を取り戻していくのだった。
公式サイトより