見出し画像

得ているもの無くしているもの 夢でのできごと

夢をみた
顔は見えない
若い男と女が夜の路上で抱き合っている
周りの目など気にすることなく静かに深く抱き合っている
激しさはない
今にも壊れそうな未来など見えない
考えもしない
そこにはまだ確実な愛もない
腕の中にいる確かな温もりだけを互いに感じている

私だった
髪型も背の高さも顔も違うけれど
その若い女は私だった
絶対選ばないタイプの男
ひどく惹かれている
途中で「あ、夢なんだ」と気がついた
でも先が気になり抱き合う2人を俯瞰し続けた

互いに違う夢を持ちながら
重ならない未来を知りながら
惹かれ合い抱きしめ合っている

いつから確実なものばかり追うようになったんだろ
役に立つもの目に見えるもの
形ばかりを追い求めている毎日
本当の安心感ってなんだろう
愛ってなんなんだろう
温もりってなんなんだろう

夢の中で壊れそうな温もりを感じながら
胸の奥で偽りでもない、でも愛でもない
小さな弱い光を感じながら腕の中にいるだけの私
幸せを感じながら佇んでいる

涙が溢れて止まらない

多くのものを手にしているのに
夢の中の若い私、タイプでない男に包まれた私を見て
白くて柔らかで温もりしかない、でも未来は見えない「今」にいる飾りのない2人
ただただ憧れて涙がでた

未来を掴み取る?
世間の常識に左右されながら
平均的な幸せを手に入れ
大切なものを大切にしながら
真っ当に生きている

何を求めて生きているのか
本当に欲しいものはなんなのか

ながめる私
「この2人は上手くいかない」
「別れるな」と分かる

答えを知っていてもすぐそばにある重ならない未来がわかっていても
彼らは2人、今を感じて佇んいる


目が覚めた私の気持ちはゆらゆらと揺れていた
路上で抱き合う勇気も情熱ももうない

たくさんのものを得てたくさんのものをなくしている

あれは私

懐かしさに心が溢れた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?