好きと伝えること


「好き」

彼と一緒にいる間、彼を見ながら何度も心の中で呟いたこの言葉を口に出すまでに随分と時間がかかった。



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先週のはじめ、「土曜日空いてる?」と彼からメッセージが来た。先週の土曜日はクリスマスだった。空いていると答えた。


ただ暇だから誘われただけなのだろうと分かってはいたけれど、好きな人とクリスマスを過ごせることがただ嬉しかった。

彼と会ったら好きだと伝えよう、そう決めていた。




当日、ネイルを可愛くして、髪を可愛く巻いて、おろしたての服を着て、お気に入りの香水をつけて、待ち合わせ場所に向かった。

久しぶりに会った彼は、パーマをかけていた。可愛かった。


いつものようにごはんを食べてお酒を飲んで、2人とも程よく酔いが回ってきたところで、タクシーに乗って彼の家に向かった。

彼の家に行くのは2回目だった。相変わらず綺麗でオシャレな部屋で、2人並んでお酒を飲みながらゲームをした。

根っからのゲーム下手な私の苦戦する様子を見かねて、彼が代わりにステージを何個もクリアしてくれた。私はそれを感心しながらただ見つめながら、やっぱり好きだなと思った。


だいぶ酔いが回ってきたところで、彼が私にキスをした。

以前にもしたはずなのに、この時はなぜか恥ずかしさと困惑で彼の目を見ることができなかった。好きという感情が溢れ出して止まらなかった。

相変わらず甘い彼のキスに、愛おしい彼の全てに、私はどうしたらいいのか、この感情をどう隠せばいいのか分からなくなってしまった。ただ笑うことしかできなかった。


その後もたくさんキスをしながら、抱き合いながら、私の中の好きという気持ちが溢れ続けた。

それなのに、喉のすぐそこまできていたたった2文字を、どうしても言い出せなかった。


重くて大きなこの大切な感情が、口に出したら軽くて小さなものになってしまいそうで怖かった。拒絶されるのが怖かった。


いったいどれだけの時間が流れたのだろう。

私の口からその言葉が発せられたのは次の日の昼過ぎだった。



悩みに悩んだ挙句、「好き」ただそう呟いた。

彼といる間絶えず溢れて止まらなかった好きという感情を自分の中に留めておくのが限界だった。

彼は驚きながら困ったように笑っていた。そして、私に合わせるように彼も好きと言った。

私には分かっていた。その好きが私の好きとは全く違うことを。



だから私は、一度言ってしまったものはとことん言い続けようと思って、その後も何度も好きと伝えた。困らせることは分かっていたけれど、相手を気遣って自分が後悔するのは嫌だった。

帰り際、駅まで送ってくれた彼にもう一度「好き」と言った。彼はまた困ったように笑っていた。

家に帰ってから、また「好き」とメッセージで伝えた。そうしたら、「俺も好きかも。でもまだ正直わからない。」と返事が来た。


好きかもってなんだよ、なんて思いつつ、かもでも嬉しかった。もともと勝算はなかったのだから、そう思えば大収穫だ。


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好きだと伝えることは簡単なようで難しいことだと知った。

受け入れてもらえる可能性がどんなに低くても、言葉にすることがどんなに難しくても、それでも私は彼に何度でも伝えたい。

言わなければ後悔することを知っているから。今まで何度も経験してきたから。

だから、言葉にしよう。

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