「ブランド誕生。想いをカタチにしていった3年間の軌跡」 #EMILYWEEKここだけの話 vol.1コンセプター 柿沼あき子
「JOURNAL STANDARD」や「IENA」などのファッションブランドを運営するベイクルーズから生まれた「EMILY WEEK(エミリーウィーク)」。生理週間を軸に、女性の4週間のバイオリズムに寄り添ったライフデザインを提案するブランドです。
ブランド設立から3周年を記念し、このnoteシリーズでは『EMILY WEEK # ここだけの話』と題して、EMILY WEEKの今までとこれからをチームメンバーに尋ねます。
第1回は、Web業界からの転職2年目に事業を発案した、コンセプターの柿沼あき子です。
3年を経て、ブランドの成長と変化
ーー この3年間の変化を教えてください。
柿沼 この3年、都内各所で開催した15回のポップアップストアから始まり大丸梅田店、ニュウマン横浜店などの常設店の設置、『HIGH(er) magazine』編集長のharu.さんと、Webコミュニティー「She is」とのサニタリーショーツ開発プロジェクト、マンガ作家の山本美希さんとのコラボレーションなど、多くの経験を重ねてきました。
▲「#helloperiod」動画
▲ 山本美希さんコラボマンガ「feel bright blue」
当初は、私が社会人になってから生理の重さに悩んだ経験から、生理週間に焦点をあてる発想からスタートしました。それから拡大して現在は「女性が心地よく過ごすための365日をサポートするブランド」として、アンダーウェアをメインに、女性の4週間のバイオリズムに寄り添う各時期に合わせたアイテムを提案しています。
立ち上げ時は4種類の布製ライナー、アロマスプレー、ハーブティーが主な展開でしたが、今年になって念願だった、週ごとにデザインや素材を変えた4種類のアンダーウェアも展開できるように。最初は、セレクト商品と並んで2割程度だったオリジナル商品も、今では全体の8割まで増えてきました。
▲ 2020年6月にオープンした、 ニュウマン横浜店
―― この数年、日本では急速に「フェムテック」というキーワードで、女性の心身をケアするスタートアップや新しいブランドが広がっています。
柿沼 そうですね。EMILY WEEKでは2016年に事業化が決定し、立ち上げ準備を始めました。フェムテック・フェムケア領域は、当時と比べても格段に色々なサービスが増えていて、現在はそれぞれの専門分野の中で、それぞれ質を高めていく段階に入ったと感じています。
そう考えたときにEMILY WEEKは「ファッションカンパニーであるベイクルーズに属していること」の意味をちゃんと発揮していく必要があると思っていて。ファッションブランドとしてのデザインの楽しみや品質のレベルを上げていきながら、女性の心地よさをサポートするアイテムの提案という原点に立ち返りたいと考えます。
ブランドを育んだ「自身の想い」と「共感」
ーー 発案してから事業化までの過程で大事にされたことはなんですか?
柿沼 「共感」ですね。EMILY WEEKの構想に至る最初のきっかけは、社会人になったばかりの頃に生理に悩んでいた個人的な経験からです。婦人科に通いながら、当時話題だった布ナプキンを試してみたら私にはすごく気持ちが良くって。1週間分ひと揃いを買い集めたりして、それだけで次の生理が少しだけ楽しみになりました。
生理は憂鬱な存在ですが、自分に合うアイテムを手にすることで、気持ちの部分で救われる人が自分の他にもいるんじゃないかと思って。そこから思考を広げて、ファッションブランドで自分に合うデザインや肌触りの良いアイテムを探すように、お洒落なフェムケアアイテムを手に取れるブランドがあったらいいなと思ったんです。
▲ EMILY WEEK 布製ライナー
実は、ベイクルーズへ転職する前に自分でブランドを立ち上げることも考えたのですが、個人の範囲では「共感してくださる方の母数」というところでどうしても限界を感じて。ベイクルーズのような大きな組織が提案することによって、より多くの人にブランドのアイディアを届けられると思いました。
―― 実際の反応はいかがでしたか?
柿沼 ブランドローンチにあたってWebメディア「ハフポスト」の Ladies be open という企画の中で、私と弊社の役員という2つの視点から、このブランドを展開することへの考えを掲載させていただく機会を得たのですが、これにはとてもポジティブな反響をいただきました。
2017年に公開されたハフポストの記事
初めて青山でポップアップストアを開催したときも、北海道や沖縄、静岡からもお客様が来てくださって。「ずっと生理に悩んできたけど、それを受け入れてくれるようなコンセプトのお店ができることが嬉しかった」という声をいただいたりと、「共感してくださる方はいる」という大きな自信になりました。
チームを組む仲間とのつながりも「共感」が大きな要素になりました。その感度の高さを尊敬していた社内のグラフィックデザイナーである中森には、彼女が産休明け1日目にチームに誘ったところ、「妊娠出産を経て心身の変化に驚愕した、そういうブランドはやり甲斐がある」とOKしてもらえて。彼女とは同い歳で、バイブスも合うので、色々遠慮なく言い合えそうだなというのもあったり(笑)。
「想い」をいかにカタチにして見せるか?
―― ここだけの話、事業化していくうえでの困難は?
柿沼 自分の強い想いを込めた事業ということもあってブランドビジョンは明確だったものの、私自身はアパレルブランドを立ち上げるのはもちろん初めて。最初は店舗や商品の方向性が定まらず手探り状態でしたが、グラフィックデザイナーとフォトグラファーが入ってくれたことで、具体的なイメージが一気に明確になりました。
立ち上げ時のフォトグラファーは、「ファッション性」、「日常の上質さ」、「手間のかかるアナログ感と新しさの同居」というキーワードから、当時26歳だった新進気鋭のアーティスト・イトウナツミさんにお願いすることに。
彼女の洗練されたビジュアルのおかげでInstagramなどの発信において、想い描いていた「ファッションアイテムのように“映える” 生理用品」、「インスタにあげたくなる生理用品」ということを実現できて。商談も話が通るようになって、自分の想いを一気に理解してもらえた感覚がありました。
▲ 2017年9月当時のEMILY WEEK instagram
―― ビジュアルは、社外へのブランド発信だけでなく、社内の意識共有にも役立ったそうですね。
柿沼 チームでずれが生じたときは、「ビジュアルの世界観ありきだから、こっちへ寄せていきたい」というように伝えるとまとまりやすかったですね。それと、当初は社内から「生理」を全面的に打ち出すことに不安視する声もあったんです。ベイクルーズという会社全体に強いイメージがついてしまうのではないかと。
それが実際のビジュアルを見せることで、ファッション性も決して損なわないブランドであることを見れば分かるカタチで証明できたように思います。そして、一番大きかったのが2019年、オリジナル商品の布製ライナーが「TOP AWARDS ASIA」というパッケージデザインの賞に選ばれたこと。
この布製ライナーはミニマムなパッケージ。従来の生理用品は紙袋に入れて隠されることが多かったので、むしろ見せて歩きたくなるようなデザインになるようこだわりました。それを外部の方に評価してもらったことで、社内においてもEMILY WEEKでやりたいことが深いレベルで認知されたような気がします。
▲ TOP AWARDS ASIA を受賞したパッケージ
―― 「想いを具体的なカタチにする」ことが重要なんですね。
柿沼 この3年間、その大事さと難しさを痛感しています。私もブランドを始めてから知ったのですが、たとえば下着の生産って“ロット問題”というのがあるんですね。国内の工場でも稼働効率の関係で生産ミニマムは1000枚以上のことが多いです。逆に、ロット数を削ったりEMILY WEEKのようにオーガニックコットンやシルクなど素材にこだわっていくと、どんどん仕入れ価格が上がってしまう。なので最初は品質を担保しつつ小ロットでの下着生産に対応してくれる工場を探すことと、仕入れ価格の調整に苦労していました。
私が以前いたWeb業界では「着せ替えアバター」のようなサービスがありますが、そこでは無限に商品を作り出すことができるし、在庫を抱えることはなかった。当たり前だけど、リアルの世界とWebの世界では考え方が全然違うなって。在庫を抱えることで、リアルの世界で物を作って売っていくことの責任と重みを日々感じています。
女性に寄り添う「かゆいところに手が届く」商品開発
―― オリジナル商品でのブレイクスルーは?
柿沼 ビジュアルにも注目をいただいた「RESETシリーズ」です。こちらは、「機能性や心地よさはもちろん、お洒落で気分が上がるサニタリーショーツを作りたい!」という想いを徹底的に追求したもの。肌触りのいいオーガニックコットンを使って、クロッチ部分は蒸れにくいように防水布はあえて使わず、抗菌防臭加工を施した吸水速乾のやわらかな生地を選びました。
お腹あたりまであるハイライズデザインで、鼠径部の締め付けが少ないように深めのカットにしています。カラーも吟味したニュアンスカラーを採用したところ、3カラーを全色買いされるお客様もいたりと好評で、約1500枚を販売しました。そうなると、上に着けるお揃いのブラやキャミソールも欲しいよね、という風に展開が広がり、今では新色が出ると即完売するような人気のシリーズに。
▲ 2020SS RESETシリーズ限定カラーのビジュアル
このシリーズは、再販の度にちょっとした改善を積み重ねています。成長中のブランドだからできることかもしれませんが、お客様のレビューを読み込んで、声として多いものはなるべく吸い上げていて。たとえば、2020年の春夏では、サイズ展開が3サイズになり、キャミソールには細かな仕様変更を加えています。
▲ EMILY WEEK オンラインストアブログ
これまではまずコンセプターとして、自分の頭の中にあった想いをいかにカタチしてどうアウトプットするかということをやってきました。次のフェーズでは、自分個人の範囲を超えて、ファッション性は保ちながらも様々な女性たちの想いに寄り添った「かゆいところに手が届く」商品開発をやっていきたい。女性の悩みやニーズって本当に多様にありますから。
2020年の秋冬の新作でいうと、天然由来の再生繊維「トリアセテート」によるサテン生地を使ったシルクのような肌触りのルームウェアを販売しています。これは「シルクだとシワになりやすく、繊細すぎてルームウェアとしては取り扱いにくい」というお客さまの声を受けてのこと。ブランドとしては、なるべく天然繊維の中から素材を探し、価格帯も含めて色んな方に手に取ってもらいやすくする、かつ質は絶対に落とさない、というところで調整をしています。
▲ 2020AW collection サテンオールインワン
―― チームメンバーも増えて体制が確立されてきたそうですね。
柿沼 事業部としては主に2人で運営してきたのですが、昨年から4名ほどメンバーが増えました。インナーウェアやナイトウェア企画、そして経営部分において、他社で専門的な経験を積んだ女性たちがチームに加わり、商品開発を行ううえでできることが広がっていて、今最高にワクワクしています。
彼女たちは、大手アパレルでのインナーウェア開発や睡眠に特化したスタートアップアパレルに携わっていたデザイナーなど、それぞれのキャリアの中から、EMILY WEEKで自分ができる役割を見出してくれた人たち。今は2021年のコンセプトと商品ラインナップを決める段階なのですが、みんなのプロフェッショナル性から学ぶことが本当に多いです。
―― これからますます楽しみですね。
柿沼 そうなんです。最近の自信作「Organic Cotton ナイトブラ for NEUTRAL」など、ファッション性の中に機能性をもたせたアイテムの開発もできるようになったことにブランドとしての成長を感じています。それから、念願だったEMILY WEEK オリジナルの吸収機能性サニタリーショーツも昨年から開発を進めており、今年ようやく発売開始できそうです。
▲ Organic Cotton ナイトブラ for NEUTRAL
EMILY WEEKには、今の子供たち世代への想いも託しています。生理も含めて、自分の体をより肯定的に捉えてそれぞれに合う選択肢を探ることは、心地よく生きることにもつながる気がして。自身の体に対するポジティブな意識が受け継がれていくことに寄与していきたいと思っています。
そして、長期的ヴィジョンを実現するためにはブランドを永く続けていく必要がある。そのためにも、ブランドとしての品質向上と悩みに細やかに寄り添う選択肢としてのアイテムの開発に取り組みたい。私もアパレル業界での職歴がWeb業界を上回ってきて、この業界のセオリーを徐々に掴めてきた感覚があるので、心強いチームメンバーと協力しながら、積極的に想いをカタチにしていきたいですね。
文・編集 皆本 類
柿沼 あき子 / EMILY WEEK コンセプター
神奈川県鎌倉市生まれ。
女子美術大学絵画学科卒業後、2009年(株)カヤック入社。WEBディレクターとしてサービス運営、広報・PRに携わる。2013年 アライドアーキテクツ(株)にて企業のSNSプロモーション支援や新規事業の立ち上げの経験を経て、2014年(株)ベイクルーズのEC統括部へWEB販促プランナーとして入社。
JOURNAL STANDRD や relume などのブランド販促を担当後、2016年に同社の社内新規事業として兼ねてより構想していた「EMILY WEEK(エミリーウィーク)」を提案し、1年間の準備期間を経て2017年9月に事業化。
現在はEMILY WEEKのコンセプターとして商品企画から販促、販売までブランドの運営に網羅的に携わっている。
EMILY WEEK CONCEPT
「日常を、心地よいリズムに。」
EMILY WEEKは生理週間を軸に、
女性の4週間のバイオリズム:Reset-Active-Neutral-Balance
に寄り添った新たなライフデザインを提案します。
日々を頑張るすべての女性へ、それぞれに合った心地よいリズムをサポートしたい。
EMILY WEEKを通じて自分と向き合うことへの喜びに出会えるよう願って。
EMILY WEEK 店舗情報
ONLINE STORE:
https://baycrews.jp/brand/detail/emilyweek
NEWoMan 横浜店:
〒220-0005 神奈川県横浜市西区南幸1-1-1
NEWoMan 横浜店 6F
TEL:045-534-5381
大丸梅田店:
〒530-8202 大阪府大阪市北区梅田3-1-1
大丸梅田店 5F(ミチカケ内)
TEL:06-6442-7410