見出し画像

ついたて四段昇段の軌跡


1.はじめに

こんにちは。wanageeeeです。

このたび、将棋クエスト「ついたて将棋」で四段に昇段することができました!!!

これもひとえにご指導いただいた皆様のおかげです。

ありがとうございます。

今回は「ついたて四段昇段の軌跡」と銘打って、主に私が前回の記事を書いてから現在に至るまでに取り組んだことを書き記していこうと思います。

雑駁な記事ですが、読んでいただけると嬉しいです。

なお、これまでの記事は以下のリンクよりご覧いただけます。

2.困難は分割せよ

ついたて将棋には大別して、①読み②出力の2つの要素があると考えています。

端的にいうと、①読みは相手の駒が見えない状況下での情報を集め方、②出力は読みに基づいた手の選択のことです。

私は可視将棋に長く親しんでいたこともあり、終盤戦(玉位置が分かった後)の読みと出力には自信がありました。

一方で、四段以上の方の棋譜と比べると、その他の要素で劣ることは明らかでした。

そこで、先に述べた2つの要素を分割し、足りない要素を少しずつ補うことにしました。

3.読みの強化のために取り組んだこと

持ち駒把握、確定手計算といった基本(この記事の「二段から三段になるまで」に詳述)に加え、以下の内容に重点的に取り組みました。

①相手の確定駒からポジショニングを予想する

例えば以下のようなことをたくさん考えるようになりました。

・34歩と突いて何も取れない→相手は引き角or端角の可能性が高い

※私は序盤の陣形を「角の使い方3通り(引き角or居角or端角)×玉が何段目にいるか4通り=計12通り」で類型化して陣形読みをしているため、34歩で拾える情報の価値をかなり高めに見積もっています。また、同様の理由から袖飛車を絡めた攻めは強いと思っています。

予想は外れることも多いですが、考える癖をつけることで、読みの精度を高めることに繋がった気がします。

②初形ベースでどの駒を取れたのかを意識する

上位プレイヤーの配信を見て着想を得た手法です。

例えば居飛車速攻で銀を取った→初形31にいた右銀を取った など。

こうすることで、駒を打って反則になりにくい地点が明確になるほか、相手目線の盤面が少しわかるようになりました。


③時間無制限で読み抜く練習をする

自分の負けた将棋や、ついたて将棋Viewerのコラムにある棋譜をブラインド付きで並べながら、指し手1手1手から情報をできる限り得ることを意識して時間無制限で考え抜きました。

そして終局まで考えた後に、ブラインド無しの盤面との差を見比べて振り返ります。

一連の手順によって認知の歪みを補正しつつ、対局中に得るべき情報を峻別する力を涵養することを目指しました。

もっとも、ひじょうに疲れるため、気力の充実している時にしかできませんでした…

④対局中の情報処理手順を確立する

悩む要素を減らしておくことで、衝動買いのような暴発的な決断を防ぎやすくすることができる、という社会心理学の考え方(※)から着想を得て、駒がぶつかったときに、まず何を頭に入れるか、次に何を考えるか、という処理手順をかなり具体的に確立しました。

この結果、終盤におけるとりあえずの雑な王手などの悪手を防ぎやすくなった気がします。

(※)ルビコン・モデル。最近の本だとこれとかに載っている。

4.出力の強化のために取り組んだこと

①15局単位でテーマを変えて指す

指し手の幅を広げること、自分に合った指し方を見つけることを目的に、15局単位でテーマを変えて指しました。

序盤の作戦に関するものや、玉位置の整え方どの方向から攻めるかといった中終盤に関するものまで多種多様なテーマを掘り下げました。

慣れない指し回しからレートを大きく落とすこともありましたが、強くなるうえでは必要な過程だったと思っています。

②確実な指し手を意識する

上記①の過程で、初段前後のプレイヤーに確実に勝つための棋風を模索するうちに、確実な指し手を意識するようになりました。

ローリスク・ローリターンの手で少しずつ得を積み重ねて2~3手勝ちくらいの局面を作って80手前後で勝つ、といったイメージで指しました。

自分の対局と振り返りだけではマンネリ感が拭えなかったので、crazy_humanさんexogenesis_さん、yukarisamaさんの御三方の棋譜を範として強化を試みました。

③残反則数の意識

自分の棋力・棋風に見合った反則の使い方を目指し、「〇手のどういう状況までに残反則数▲回」のように言語化してまとめました。

指標があるだけで指し手の選択に良い影響があったように思います。

④盲点形の研究

自分の負けた将棋や、miyakejimaさんGEZIGEZIさんなどの将棋から、相手の盲点に入りやすい形をストックしました。

実戦で活かせる場面が限られたものも多いですが、なぜ盲点に入るのかという理由も含めて考えると、応用が利く場面もあると感じました。

(気が向いたらいずれこのテーマで記事を書こうと思っています)

5.その他

①タイムマネジメント

できる限り情報を集めようとすると消費時間を湯水のように使ってしまいます。

そこで、どのような場面で何分残すか、という指針を立ててまとめていました。

具体的には、「初王手時に●分以上残す」「劣勢時◇手目で△秒残す意識で」などです。

思い通りにいかないことも多いのですが、意識するのとしないのでは結果は変わってくると思っています。

②対局に関してマイルール設定

対局前のルーティンや、対局に関するマイルール(1敗したら即連戦しない 等)を作りました。

一見些末なようですが、私の場合、対局内容が精神状態に大きく左右されるため、意外とこれらのルールに助けられました。

③反省の仕方

何が良くなかったのかを反省し、最後は言語化して落としこむ、という作業を繰り返しました。

これまでに述べてきた点にも重なるのですが、感覚を言語化することで汎用性の高い指標を作れると思います。

また、反省の際には、直接的な指し手を敗因として片付けるのではなく、その指し手を選ぶに至った思考や背景などの根本的な原因を探ることを意識しました。

例えば、
「●●銀打で△△玉と指せばよかった。次から気を付けよう」
というのは次に活かしづらい反省の仕方だと思います。

一方で、
「露骨な直接打の●●銀打を選んでしまった原因は、元を辿ると相手に先攻されて焦ってしまったことにあった。反撃に出る前に◇◇秒ほど時間をおいて自玉の安全度を確かめる余裕があれば△△玉を選べたかもしれない。先攻された後に反撃に出る際は自玉の安全度を考慮する時間を◇◇秒程度持つようにしよう」

というように、元を辿るように振り返ると、次局以降、似た展開になったときに活きる可能性があると思います。

また、なるべく結果論的な反省をしないように注意していました。

④強い人に棋譜を見てもらいアドバイスを貰う

以上、反省の仕方について大切だと思う点を示しましたが、なかなか上手くいくものでもありません。そこで、信頼のおける強い方に見てもらうのが良い処方箋だと私は思います。

自分にとっては自慢の手順でも、強い人からアドバイスを貰うとそうでもないと思わされることが何度もありました。

棋譜を見てくださった方には感謝しかありません。

⑤レートの上げ方

どのレート帯に何%勝てば良いか等、シミュレーションしたりもしたのですが、結局1局1局を丁寧に指すことが大事という結論に至りました。

もっとも、大型連勝をあてにして指すと実現できないときのダメージが大きいので、10局指して5点上げるのを繰り返そうくらいの意識は持っていました。

また、過去のR2000近辺の最高レートランキングを見た時に、そもそも昇段の目を作るのが大変という印象を受けました。

逆に上がり目を複数回作れれば(つまり昇段戦を複数回経験できれば)R2000は越えられるだろうと思いました。

そこで、strategy(長期戦略)としてのR2000を実現するためにtactics(短期戦略)として、上がり目を複数回作ることを目標に指すことにしていました。

結果的には、R1996から一発でR2000を達成することができ、ひじょうに幸運でした。

6.おわりに

1月末に今年の目標であるR1950を達成したときは、2,3年後の四段昇段を目指してのんびり指そうと思っていました。

ただ、2月中旬になると、R1950前後で安定するようになり、上を見ても良いのではと思い始めました。

また、同時期に、対戦成績で拮抗している方が四段になったのを見て、不遜ながら、私も四段になれるんじゃなかろうか、と淡い期待を抱きました。

「次は、俺の番だ。」

そこから私の四段昇段プロジェクトが始まりました。

とはいえ、それからひと月弱で達成するとは思っておらず、望外の結果にただただ驚くばかりです。


かつて自分が会心譜と思って保存した棋譜を今並べると、赤入れしたくなる指し手がたくさん出てきます。

それだけ自分が成長できていることを喜ばしく思うと共に、将来の自分は今の棋譜をどう見るのだろう、と想像するとと身が引き締まる思いがします。

今の私の棋譜を将来の自分が見た時に、成長を実感できていることを願うばかりです。

もっとも、このひと月ほどはついたて将棋にかなり入れ込んで疲れたので、これからは適度な頻度で続けていこうと思います(笑)


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!





この記事が参加している募集

#仕事について話そう

110,303件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?