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余は如何にしてついたての虜となりし乎(2)~初段から三段まで~

時として、昔つけた日記を見直すことがあります。

出来事や心情が克明に記されている日もあれば、ぶっきらぼうな日もあります。何も書いていない日もあります。

かつての言葉には情緒纏綿たる雰囲気があり、気恥ずかしくなることも少なくありません。ただ、読み終えると、清涼感あふれる思いに包まれます。そして、記録に残しておいて良かったな、と思うのです。

ことついたて将棋においても、等身大の自分の姿を書き留めておくことが、いずれ私の糧になると信じてやみません。

さて、前回の続きです。


初段(R1700前後)→二段(R1800前後)になるまで

初段に上がったものの、青レートと黄レートを猛スピードで行き来していた時期です。

このあたりから大人しめの記載が増えています。ついたて将棋の厳しさを知り、謙虚になったのでしょうか。

当時の記録(抜粋)

・玉まわりをなんでもかんでも固めたがるため、引き分けが増えた
・とくに直接打の選択が悪い
・指し手が消極的すぎるかもしれない
・清算して良いかわからない
・終盤での逆転勝ち/負けが多い

当時の自分にアドバイスをするなら、こんな感じです。

①棋譜を並べて、パターンを学ぼう!

私にとっての最大の課題は、「手の流れをつかめない」ことでした。どのタイミングで攻め、どのタイミングで受ければ良いのかが判然としなかったのです。

そんな当時の自分の救いの手、いわば旱天慈雨となったのが、上位者の棋譜です。

具体的には、自分より50~200点レートの高い、自分と似た棋風の人の棋譜をたくさん並べて研究しました。

とはいえ肩肘張る必要はなく、一局2,3分程度でザッと並べるくらいで十分でした。

何局も並べていると、自ずと共通のパターンが見えてきたからです。

そのパターンを言語化して自分の実戦に落とし込めれば、レートは一気に伸びていくはずです。

具体例を挙げます。

(1)私のよく指していた準急戦(2,3手囲ってから攻める作戦)は、

・1段階目 第一次攻撃。1筋目の歩をぶつけ、駒を取る
・2段階目 第二次攻撃。2筋目の歩をぶつけ、駒を取る
・3段階目 玉位置調整。玉を1マスか2マス動かす
・4段階目 取った駒を直接打して索敵

という流れに収斂されること。

(2)4段階目の出力がうまい人ほどレートが高いこと。

以上の2点が、棋譜を並べる中で得た気づきでした。

ついたてプレイヤーには実戦オンリーで強くなれる、超人的な方もいらっしゃるようです。

ただ、私のような凡人には、こうしたインプットも必要でした。

②玉をあえて晒すことに慣れよう!

この頃は、「王手をかけられる=怖い」という固定観念があり、なるべく王手をされないように指していました。そして1回王手されると、ひたすらに穴熊を組み、引き分け試合を量産していました。

もちろん王手されると、相手に玉位置候補(ついたて将棋用語で玉影と言うらしい)を絞られるので怖くはあります。

ただ、玉をあえて戦場近くに置くことで、相手が駒を成ったかどうか等の情報を仕入れることができます。

自分の玉への王手から相手の駒位置を知る手筋を玉センサー(王手センサー)と言います。

あるいは王手後に玉をあえて攻められた方向に逃がすことで、相手の盲点をつくという手法もあります。

ついたて将棋も可視将棋と同様に、1つの指し手に一利一害、プラスもあればマイナスもあります。小難しく言うと、1手指すごとに必ず何らかのトレードオフが存在します。

その中で、自分にとってのプラス面を生かすことができるか、という視点から指し手を選択できると、上達への道が開けそうです。

③ついたて詰将棋を解こう!

初段になるくらいから、ついたて詰将棋の訓練が威力を発揮してきます。

ついたて詰将棋とは、問題図の局面は分かっているが、それ以降は相手の駒が見えなくなる詰将棋のことです。

・連続王手必須
・相手は自分の持ち駒以外すべて持っている
・玉方は最長手数で逃げる

などの規則は詰将棋ルールを、

・反則回数の制限

はついたて将棋ルールを、それぞれ準用しています。

王様のかくれんぼという優良サイトに、ついたて詰将棋がレベル別に掲載されています。ここにある問題を何度も反復すると、コツが掴めてくると思います。

本将棋では見られない、ついたて詰将棋ならではのテクニックもあり、面白いです。

ついたて詰将棋で、終盤力を底上げしましょう!

まとめると、

①棋譜並べでパターンを学ぶこと
②あえて玉を晒すのに慣れること
③ついたて詰将棋での訓練

を経て、二段に昇段することができました。

二段(~R1800)→三段(R1900~)になるまで

当時の記録(抜粋)

・対低レート戦での勝ちパターンを作れるようになってきた
・陣形予想ができるようになってきた
・時間を使って考えられてる
・相手の持ち駒がわかるようになってる
・相手の反則内容を考えるようになってる
・大駒の王手に持ち駒打ちを試さない癖を直す
・最悪の事態を想定して指す(例:入玉ケア)

二段以降は、いかに細かい技術力を上げられるかの勝負だと感じます。

そのためアドバイスも具体的な内容ばかりです。

①速攻への対応をパターン化しよう!

二段になると、自分よりレートの低い相手との対局が増えます。

ひとたび負けるとレートを大きく落とすため、レートを上げるうえでは、雑に指すことは許されません。

そして、青レート帯、緑レート帯のプレイヤーは、速攻の採用率が高めです。

そこで、自分なりの速攻への対応を決めておくことをおすすめします。

私は、crazy_human五段の対応を踏襲していました。

②上位者のコラムから学ぼう!

二段くらいの棋力の方にとって、ついたて将棋Viewerのコラムは学びの宝庫です。


私のお気に入りは、crazy_human五段の「日記」シリーズでした。
(Search欄に「日記」と入力すると出てきます)

衒いのない解説で読みやすい上に、読み物としてもおもしろいです。
内容は高度で、対象棋力は高めです。

コラムを読み、

学んだポイントをメモして指す。
・対局後にできたかどうかをチェックする。

以上2点を繰り返すことで、飛躍的に実力が伸びました。おすすめです。

なお、メモした内容には、未だに習得できてないことがたくさんあります…(がんばれ自分)

中でも勉強になったもの3つを、私のメモを添えて紹介します。

(1)日記3

【勉強になったポイント(私のメモ)】

確定手計算(31手目・37手目)
 基本。
 駒のぶつかりはじめ(31手目)だけでなく、
 総交換が終わった後(37手目)にも計算する。

駒を取る取らないの基準(31手目)
 彼我の駒数の利きから、取る取らないを判断している。

攻め合いの見せ方(32手目)
 他の回でも、受け一方にならず、攻め合いを見せることの重要性が示されている。

駒位置予想(33手目)
 俗に「駒位置が透けて見える」というもの。
 例えば△37歩成とされたら、55角・32飛車・45or25桂がいそう、とか。

主戦筋の予想(36手目)
 端的に言えば、どの筋に飛車がいるかを予想するということ。
 ブラフもあるので、いつも予想が当たるとは限らない。

放置駒の処置(38~40手目)
 このあたりは「昇段戦」(Usami_Renko四段作・リンク↓)にも詳しい。


玉位置調整のタイミング(42手目)
 反撃のタイミングを見計らって玉を動かすことを考えている。
 フリーザ並の攻撃力の無い限り、一度は玉位置を調整することになる。

反則読み(45手目)
 今回の反則読みは、狙われている駒を察知するケース。
 何かの駒が狙われているのではと訝しむ癖をつける。
 「歩を打たれたのではないか」という反則読みは、汎用性が高い。

 ※ところで、以下の反則は読みやすいと思っている。

 ・同玉反則(終盤)
 ・玉の飛び道具反則(最序盤)
 ・大駒の通過反則(最序盤)
 ・歩打ち連打反則(中盤)
 ・大駒の通過反則(中盤)


 本譜のような駒狙い反則は、

 ・浮き駒が少ないとき
 ・放置駒処置をした後

 は読みやすいと思う。


索敵効率の高め方(44~54手目の一連の手順)
 盤上に長方形を描き、マス目をつぶしていくイメージで索敵する。

(2)日記4

【勉強になったポイント(私のメモ)】

端攻めへの対応
 上位陣でも様々。

香車の使い方(37手目、44手目)
 短打(42香等)
 ロケット(68飛67香)
 以外の香の使い方があることを知った。

持ち駒把握(全局通して)
 持ち駒把握することで、王手にありえない応手をしなくなる。
 また「歩切れか否か」の把握は結構大事。

・頓死ケア(頓死を防ぐこと・59手目)
 
頓死ケア大事。概ねしておくべきだと思う。
 (ただ上位陣には、頓死ケアされてない方もいる。難しいところ。)

(3)日記19

・陣形予想(36手目)
 軽い攻め、重い攻めの選択基準になる。

大駒のラインを止める(41手目~44手目)
 別の方も繰り返し述べているポイント。
 大駒に侵入されると、かなり厄介。

放置駒の処置(「放置駒」については前回参照・57手目)
 そつがない。

大駒の王手への対応(69手目、90手目)
 反射的に玉を躱さない。

・相手の駒のいそうなポジションへの駒打ち(71~73手目)
 上位プレイヤーの将棋に多く見られる手筋。
 自陣の憂いをなくすために駒を打つ。
 先に挙げた「影打ち」の受けVer.
 私は勝手に「フック」と呼称している。
 結果的に盤面の占有率アップにつながるケースも多い。

 もちろん空振ることもある。
 ただ、空振っても相手の攻めの速度を把握できることがある。

 手の流れだけを見ていた頃は、意味が理解できなかったテクニック。

・反則読み(79手目)
 タイミングから反則を考える。

・王手ラッシュの中で玉位置調整(85手目)
 勝手に「影移し」と呼んでいる。ウルトラC。
 上位プレイヤーほど、この押し引きが抜群にうまい。マネしたい。

心の叫び(92手目)
 読み物としてもおもしろい所以。
 「とーる自戦記2」(GEZIGEZI五段作・リンク↓)の78手目と この場面は、読むたびに笑いが漏れる。


③配信を見て学ぼう!

対局の様子を配信しているプレイヤーの方もいらっしゃいます。
おすすめは、GEZIGEZI五段のツイキャス配信です。

優しい語り口で実況されているので、ぼーっと観て楽しむこともできます。
過去の録画もあるので、自分ならどう指すか、考えながら見ることもできます。


まとめると、

①速攻への対応をパターン化する
②コラムを通じて上位者の考え方を学ぶ
③配信を通じて上位者の考え方を学ぶ

の3点を繰り返したところ、三段になることができました。


前回に引き続き、文字数が4000文字を超えてしまったため、一旦区切りたいと思います。

読んでいただき、ありがとうございました!!!





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